UXデザイナーが守るべき最も重要な15のルール | アドビUX道場 #UXDojo
エクスペリエンスデザインの基礎知識
ユーザー体験は幅広い領域です。UXデザインを実践するデザイナーには多様なスキルが求められます。関連するすべての情報をひとつの記事にまとめることは不可能ですが、優れた体験をつくるための大切なルールを明確にすることは可能です。
すべてのデザイナーが熟知しておくべき、15の必須のルールを以下に列挙します。
1. UXとUIは同じではない
ユーザーインターフェイスは、ユーザー体験の一部
UXとUIが交換可能なものであるかのように扱うのは、デザイナーにありがちな誤りです。この2つの違いを理解することは重要です。手短に言えば、UIは人と製品のインタラクションが起こる場所で、UXは製品とのインタラクションの結果として起こる感情的なものです。
iPhoneのSNSアプリ。フィードの配置はUI。滑らかな更新動作によるユーザーの満足はUX 出典: Ramotion
2. ユーザーについて学ぶ
デザインプロセスの最初の一歩は、もちろんユーザー調査
デザインするときに考慮すべき、最も重要な要因のひとつがユーザーであることは当然です。ユーザーに愛されるものをデザインするつもりなら、ユーザーが本当に欲しいものや必要なことを理解しなければなりません。これは、ユーザー調査が、UXデザインプロセスの一部として不可欠だということを意味します。デザインを始める前に、まずユーザーのことを頭に入れましょう。そうすれば、機能よりもメリットに重点的に取り組むようになり、利用者に価値を提供できるでしょう。
「人は物を買うのではない。より良い自分のために買う」。デザイナーは、機能追加を止めるときを見分け、人々が体験として楽んでいる要素を保てるようになるべき 出典: useronboard
3. デザイナーはユーザーではない
実際のユーザーとのテストは、デザインプロセスに不可欠
デザイナーは、インターフェースを使う人が自分とは変わらないとよく想定します。結果として、デザイナーは自身の振る舞いや反応をユーザーに重ねます。しかし、自分をユーザーと同様に考えるのは誤っています。これは心理学では「偽の合意効果」と呼ばれています。他人が同じ意見を持っていたり、ある状況で同じように振舞うだろうと思い込む傾向です。
実際には、製品の利用者は、異なる経歴、異なる習慣、異なる物の見方、異なる目的を持つ人々でしょう。つまり、それは違う人たちです。
デザイナーの先入観の克服に役立つ手法がユーザビリティテストです。ユーザーに愛されるものをつくりたければ、テストに注力すべきです。実際のユーザーとテストして初めて、デザイナーは使う人に合った方向性を学べます。これは時間がかかる作業かもしれませんが、正しい方向に向かっていることを確実に確認する唯一の方法です。
UXデザインとは、仮説を立て、テストを通じて検証すること
4. ユーザーの飽きっぽさに適応する
多すぎる情報で、ユーザーを圧倒しない
集中力の持続時間とは、気を散らすことなく作業に集中していられる時間のことです。マイクロソフトが2015年に行った調査は、集中力の持続時間が12秒から8秒に低下したことを発見しました。つまり、人の集中力は、いまや金魚よりもたないのです。デザイナーはこの振る舞いに対処するため、必要な情報を可能な限り早く表示することを目指すべきです。
最新のアプリやサイトは、ユーザーが消化可能な意味のあるコンテンツを提供すべき 画像著作権: safertech
デザイナーは、ユーザーのタスクに不要な要素やコンテンツを取り除き、インターフェイスを簡素化すべきです。それを達成するためのひとつの手法は機能的なミニマリズムです。ただし、ユーザー体験が制限されるべきではありません。すべての情報が意味を持ち役に立つようにしましょう。
視覚的な情報が少ないほどテキストが目立つようになり、ユーザーへの影響が高まる 出典: Mixd
5. UXプロセスは不変ではない
デザインの対象に、デザインプロセスを適合させる
UXプロセスは、UXデザインの成否を握る側面です。信頼できるUXプロセスが無ければ、デザイナーは見当がつかないまま働くことになるでしょう。一方、明確で簡潔なプロセスは、ユーザーのためのすばらしい体験をつくることを可能にします。
一般的なUXデザインフロー。UXプロセスはプロジェクトに大きく依存する
すべてのプロジェクトに適用できる万能のUXプロセスがあると考えるデザイナーはたくさんいます。あいにくと、すべてのUXデザインに適応するものはありません。プロジェクトごと個別の段階を定義することは可能ですが、プロセスの詳細は、プロジェクトの要件に基づいて選択されるべきものです。プロジェクトはそれぞれ唯一無二で、固有のニーズを持つからです。実現可能な最良のユーザー体験をつくるため、デザイナーはプロジェクトに合わせてプロセスを適応させられることが求められます。例えば、新規案件なら、ユーザー調査や要件の明確化に、より多くの時間を費やすべきかもしれません。既存デザインの変更なら、ユーザビリティテストやA/Bテストの実施によるデザイン検証に、より時間を費やすべきかもしれません。
6. 実際に開発する前にプロトタイプをつくる
デジタル製品のデザイン作業には、プロトタイプが必須
プロトタイプをつくらずに、実際の開発に多くの労力を費やすのは、多くのデザインチームに共通する(危険な)過ちです。良いものだと信じて頑張ってつくった場合、公開後になってから、期待していたようにはいかなかったことを実感するのは、実に気が滅入ることです。
プロトタイプは、テストに使える完成品のひな形です。プロトタイプを使えば、エンジニアが実際の開発に時間を費やす前の段階で、デザイナーの仮説を確認することができます。デザイナーは、プロトタイプの作成に様々なデザイン手法を使えます。便利な手法のひとつはラピッドプロトタイピングです。想定している形をすばやくつくり、それをユーザーと検証するという、広く利用されている手法です。
Adobe XDで作成したモバイルアプリのプロトタイプ
7. デザインには実際のコンテンツを使う
仮テキストやプレースホルダーを使用しない
ほとんどの場合、画面の主役は、それがテキストであれ画像であれビデオであれ、コンテンツです。デザインはコンテンツの拡張という言い方もできるでしょう。しかし、多くのデザイナーは、デザイン中にコンテンツを気にかけません。実際のコピーの代わりに仮テキストを使い、実際の画像の代わりにプレースホルダーを使用します。そうしたデザインは、デザイン中のアートボード上では良く見えるかもしれませんが、実際のデータを当てはめたときにはまったく違って見えるかもしれません。
仮テキストは意味を持たないため、テキストを単なるの視覚的要素に変える 出典: Smashing Magazine
デザイナーとしては、できるだけ実際のユーザー体験に近づけることが目標です。体験を抽象化すべきではありません。
8. 簡潔さと一貫性を保つ
優れたユーザー体験の特徴は、簡潔さと一貫性
デジタル製品において、簡潔さは、理解しやすく使いやすいことを意味します。アプリを使うのに説明書を読んだり、サイト内を移動するのにマップを見ることをユーザに強いるべきではありません。情報を明確に示し、今いる場所から行くべき場所へとさりげなく導くのは、UIデザイナーとしての仕事の一部です。
Hipmunkのホームページでは、ユーザーの注意を引くように最も重要な要素が強調表示されている。ユーザーに次に何をするかを明確にしている
また、デザイン全体を通じてインターフェースは一貫性を持つべきです。デザインをクリエイティブで記憶に残るものにしようと、多くのデザイナーが一貫性のないスタイルを故意に追加します。例えば、同じサイト内でページによって異なる配色が用いられることがあります。そうしたデザインは、しばしばユーザーの混乱や不満を引き起こします。それゆえ、デザインの最も重要な箇所はあちこち強調しつつ、デザイン要素は見覚えのあるものに揃えることが重要です。デザインに驚き最小の原則の適用を忘れないように。
9. 思い出させるより認知させる
認識可能な要素を示す方が、思い出させるより良いユーザビリティになる
人の記憶には限界がありますから、デザイナーは、ユーザーが記憶に頼らなくても、それぞれの機能の使い方を自動的に認識できるようにすべきです。認知負荷の最小化を目指して、情報と機能を分かりやすくて簡単にアクセスできるようにデザインしましょう。
YouTubeは最近視聴したアイテムのリストをユーザーに示すことで、記憶ではなく認識を使う。こうしたリストにより、ユーザーは数日前に見始めたかもしれないビデオのことを思い出すかもしれない
10. 有用でアクセシブルなデザインにする
多様なユーザーの利用を想定してデザインする
デザインのこととなると、デザイナーは機能やアクセシビリティよりも、見た目や訴求力を気にかけがちです。ほとんどのデザイナーは、ものを美しく見せようと試みます。その結果、かなりの頻度で、ユーザビリティよりも美しさがデザイナーにとって重要な状況へとつながります。もちろん美しさは重要ですし、当然デザインを魅力的にする努力はすべきです。ただし、それは、有用なものができた後からです。デジタル製品の最重要な義務は、何かの役に立つことです。
人々は愉快なアニメーションや刺激的な見た目のためにデジタル製品を使うのではない。具体的な価値を提供するから使用する 出典: neospot
アクセシブルなデザインは、どんな能力のユーザーにも、デジタル製品を理解し使用できるようにします。適切にデザインされた製品は、視覚、聴覚、認知、身体などの障害を持つユーザーが利用可能です。確かにアクセシビリティはデザインに一連の制約を組み込みますが、アクセシビリティの改善はすべてのユーザーのユーザビリティ強化につながります。インターフェースをアクセシブルにする方法について、多くの役立つ情報が、WCAG 2.0やMaterial Design guidelinesから得られます。
Webを閲覧する視覚障害者 出典: UXMag
11. 一人で問題を解決しようとしない
デザインはチーム作業、孤立して作業しない
かつてリンドン・ジョンソンが言ったように、「私たちが一緒に力を合わせて解決しない問題は何もない。そして私たちが自分だけで解決できるものはほとんどない」です。優れたユーザー体験は、デザイナー、開発者、顧客、ユーザーの協力の成果です。「一匹狼の天才」は存在しません。デザインするときは、自身の仕事に対するアイデア、洞察、見解を得るために、できるだけ多くの人と作業すべきです。
12. すべてを一度に解決しようとしない
デザインは、同じプロセスを繰り返し行うこと
UXデザインは直線的なプロセスではないことを理解するのは大切です。UXプロセスの各段階には、しばしばかなりの重複があり、大抵は行ったり来たりを何回も繰り返します。課題やユーザーやプロジェクト(特に制約事項)について学ぶにつれて、実施した調査の再検討や、新しいデザインの試みが必要になるかもしれません。一度でデザインを完璧にできると考えるのは止めましょう。代わりに、デザインを実際のユーザーが試せる程度に洗練し、価値のあるフィードバックを集め、それに基づいて作業を繰り返しましょう。
UXデザインは直線的なプロセスではない。優れたデザインをつくるため、何回も変更とテストを行う必要がある。仮説を検証して改善する作業を繰り返すことが重要
13. 間違いを防ぐ方が、間違いを解決するより好ましい
間違える可能性を、できる限り最小化するようにデザインする
人にはエラーが付き物です。人がインターフェースを操作するとき、しばしばエラーが発生します。それはユーザーの間違いのときもあれば、アプリ側の問題で起きることもあります。原因が何であれ、エラーの発生とその処理の仕方は、ユーザー体験に大きく影響します。ユーザーはエラーを嫌がります。そして、エラーを引き起こしたという感覚をもっと嫌がります。したがって、エラーの起きやすい状況を排除する、あるいは、チェックして操作完了前にユーザーに知らせるように努めるべきです。
Twitterは誤ったメールアドレスの入力からユーザーを守る。登録済みのアドレスを入力すると、ログインとパスワード回復の2種類の操作が提案される
14. 有益なフィードバックを提供する
アプリやサイトの最新状態を、常にユーザーに伝える
ヤコブ・ニールセンのユーザビリティ10原則に含まれる「システム状態の視認性」は、今でも最も重要なインターフェースデザインの原則のひとつです。ユーザーは常にシステムの状況を知りたがります。そして、アプリはユーザーに推測させるべきではありません。適切な視覚的フィードバックを通じて何が起きているのかを知らせるべきです。ユーザーが何か操作を起動した時のアニメーション付きインジケーターのように、即座に視覚的フィードバックを提供するのは、インターフェースが作業中であることを伝える優れた手段です。
読み込み中を示すスピナーのような単純なアニメーションが、システムがリクエストを処理中であることをユーザーに伝えるメッセージとして利用できる 出典: Tumblr
15. 大掛かりなデザイン変更を避ける
一貫性を維持しながらわずかな変更を加える
調査によると、ユーザーは既存のデザインの大規模な変更を嫌います。たとえ、恩恵を受けるとしてもです。もし大幅にデザインを変更するなら、ユーザーが満足しない可能性は高いでしょう。この現象には、丁度可知差異という学名もあります。ほんのわずかな変更は、顕著な違いをもたらさないことが述べられています。
eBayは、ユーザーが劇的な変化を好まないことを身をもって学んだ企業のひとつです。ある晩、彼らは多くのページで使われていた明るい黄色の背景色を白に変更しました。即座に、変更に対する顧客からの苦情が届き始めました。そして、相当数の苦情は、eBayにデザインを元に戻させることになりました。その後、チームは異なる戦略をとりました。数ヶ月の間、毎回ほんの少し背景の黄色を変更し、それをすべての黄色が無くなり白い背景だけになるまで続けたのです。予想通り、今回はほとんど誰も途中の変更に気づきませんでした。
デザイン変更前のeBay(黄色が特徴的なデザイン) 出典: eBay
このように、デザイン変更の最良の方針は、ここを少し、あそこを少し、とゆっくり進めることです。このようにすれば、完全に改修が終わるまで、ほとんどのユーザーはデザイン変更が行われていることすら気づかないでしょう。
終わりに、間違えることを恐れない
誰にもミスはある。それが何かを学ぶたった一つの方法
本当に学ぶことができるのは、ミスをしたときだけです。ミスを恐れて、すべてを上手く整えようとするなら、学ぶ機会を逃すでしょう。この記事で紹介したルールを実践しましょう。しかし、なにより、常に新しいデザイン手法やアプローチを試し、自身と顧客に最適なものを探し続けましょう。
この記事はThe 15 Rules Every UX Designer Should Know(著者:Nick Babich)の抄訳です