デザインアイデアを確実に伝える手段としてのラピッドプロトタイピング | アドビUX道場 #UXDojo

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エクスペリエンスデザインの基礎知識

デザイナーなら、解決すべき課題にプロジェクトで直面したとき、しばらく考えをめぐらせて、そして解決案を思いつくでしょう。次は当然、その案の実現に向けた作業です。でも、もし解決案が間違っていたら?誤った案に力を注ぐのは、時間と労力の無駄です。であれば、できるだけ早く、悪い案だと突き止めることはとても重要です。では、良いアイデアを悪いアイデアから区別する方法は?

ありがたいことに、プロトタイプがその役に立ちます。プロトタイプは、ソリューションを完全に構築する前に、テストに使う実験的なひな形です。この記事では、ラピッドプロトタイピングの考え方と、実践する際のヒントを紹介します。

ラピッドプロトタイピングとは何か?

例えるなら、ラピッドプロトタイピングは、コンセプトの実証実験です。サイトやアプリの想定される形をすばやくつくり、ユーザーやプロジェクトの関係者と検証する行為です。ラピッドプロトタイピングの「ラピッド」は「迅速な」の意味で、実際に開発するより素早く安価に実践できるプロトタイプ手法であることを示唆しています。

ラピッドプロトタイピングのやり方は、デザインの方向性を決め、素早く検証を繰り返えせば、ユーザーに提供する価値を最大化できるという考えに基づいています。

通常、プロトタイプは、主要なユーザーフローだけのデザインから始まり、反復するごとに増える要件を付け加えながら、幅広い機能へと成長します。プロトタイプの最終版は、開発へと手渡されます。ラピッドプロトタイピングの過程は、3つの段階の循環として表現されます。

  1. **プロトタイプ作成
    **テスト可能な解決案を作成します。
  2. **レビュー
    **ユーザーや関係者にプロトタイプを渡し、何が上手くいき、何が上手くいっていないのかを調査します。
  3. **改善
    **調査結果から、解析や修正が必要な領域を特定します。修正項目のリストは、次の繰り返しに行う作業範囲の決定に使われます。

ラピッドプロトタイピングは反復的なアプローチ。プロトタイプ作成、レビュー、改善の3段階。デザイナーは個々の段階を進み、最後の段階の後は最初に戻る。最初に設定した期待値を満たすまで(何回でも)繰り返す。

なぜ、ラピッドプロトタイピングは役に立つのか

ラピッドプロトタイピングには、他の手法に対する多くの利点があります。

プロトタイプの手法

適切なプロトタイプ手法を使い、テストにより得られたフィードバックからすばやく改定を行うことが、プロトタイプを成功させるコツです。プロトタイプの種類は、一枚の紙に描いたラフスケッチから、本物のような見た目と機能を持つプログラムまで多岐にわたります。デザインプロセスの進行の度合い、そしてプロトタイプの目的に合わせて、適切なプロトタイプ手法を選択しましょう。

1. ペーパープロトタイプ

いまや、ほとんど手間なくプロトタイプをつくれるデジタルプロトタイプツールが数多く存在します。しかし、紙へのスケッチは、今でもすべてのデザイナーにとって最も大切な手法です。スケッチにより、それほど時間と労力をかけることなく、デザイナーはいくつもの異なるデザイン案を模索できます。スケッチは、デザイナーの目を、見た目よりもデザインの本質(何をするためのデザインか)に向けさせます。そして、スケッチの特に優れている点は、誰でも取り掛かれることです。スケッチは誰でも描けて、そして特別な道具が不要です。すべての人が参加可能なスケッチは、ブレインストーミングで使用するのに理想的な手法です。

問題解決のための案をスケッチする。スケッチは、頭に浮かんだアイデアを一つ一つ追求するのに最適。主要なユーザーフローを描いたり、多様なレイアウトを探るため、スケッチが利用できる 出典: Steven Scarborough.

スケッチは、デザインプロセスの早い段階だけで使うものと考える人は大勢います。しかし、それは正しくありません。開発中、あるいは公開後でも、デザインを見直したりアイデアを視覚化したいときは、スケッチが役に立ちます。ハイファイ・プロトタイプが手元にあるときでさえも、ペンと紙を使うことがあるかもしれません。新しいアイデアは、スケッチした方が、ずっと素早く伝えられるからです。

ヒント

ペーパープロトタイプは、主要なユーザーインタラクションを検討するのに役立つ 出典: Martha-eierdanz

出典: Amazon

2. デジタルプロトタイプ

ペーパープロトタイプを使用して、複雑なインタラクションを言葉で説明するのは困難です。アニメーションのような複雑な動きの詳細を説明する必要があるときや、ユーザー調査でデザインを検証したいとき、一般的にインタラクティブなデジタルプロトタイプが使用されます。

デジタルプロトタイプは、人々が実際に体験できるインタラクティブなデザインです。ほんの10年前、ハイファイ・プロトタイプをつくるには、プログラム言語を使ってコードを記述しなければなりませんでした。今では、プロトタイプツールを使えば、開発者ではないユーザーでも、簡単に完成品のように機能する高忠実度のプロトタイプをつくれます。

Adobe XDを使ったプロトタイプ。デジタルプロトタイプは、コンテンツの展開やアニメーションなどの動的なインタラクションの表現に優れている

ヒント

Adobe XDでは、テキスト属性の確認、文字スタイルやコンテンツのコピー、大きさや距離の表示が可能

3. ネイティブプロトタイプ

ネイティブのプロトタイプとは、実機上でのテストのため、コードを記述して開発するプロトタイプです。ネイティブプロトタイプは、実環境における動作を確認することが目的で、実際のユーザーと解決案を検証するときによく使われています。

ネイティブプロトタイプは、完全に機能する最終版のように見えるものが多くあります。それでも、プロトタイプは完成した製品とは別物です。ラピッドプロトタイピングのポイントは、すべてを開発することなく、何らかの動作を実現することです。

ネイティブプロトタイプをつくるなら、しっかりとした開発スキルが必要です。開発スキルが足りなければ、ネイティブプロトタイプの開発に多くの時間を費やすことになるかもしれません。数日や数週間ではなく、数時間で動くプロトタイプを準備できるようになりましょう。

ネイティブプロトタイプはコーディングしてつくる。つまり、実際のAndroid/iOSアプリやサイトを開発することを意味する 出典: Apple

ヒント

終わりに

ラピッドプロトタイピングは、デザイナーとそのチームを成功への近道へと導くでしょう。デザインプロセスの早い段階からプロトタイプに投資すれば、後工程で発生する多くの時間やコストを削減できます。次回のプロジェクトでデザインするとき、次の単純なルールを覚えておきましょう。「多くのプロトタイプをつくってテストするほど、ソリューションの質が高くなる」

この記事はRapid Prototyping: The Most Efficient Way To Communicate Your Ideas(著者:Nick Babich)の抄訳です