ベテランほど知らずに損してるPhotoshopの新常識(9)なげなわツールから被写体選択まで、こんなにあったPhotoshopでの選択の自由
ベテランほど知らずに損してるPhotoshopの新常識
初心者からベテランまで、制作する内容に関わらずPhotoshopを使う上で避けて通れないのが「選択」。[なげなわツール]、[自動選択ツール]などの古くからあるツール、[ペンツール]でパスを描いた後に選択範囲にする定番のほか、実にたくさんの選択方法があります。
今回は、Photoshopの「選択」に焦点をあて、数々の選択方法とその使いどころやワークフローについてまとめてみます。
ツール類
まずは、ツールパネルから。Photoshopの選択系のツールには次の9のツールがあります。
- 長方形選択ツール
- 楕円形選択ツール
- 一行選択ツール
- 一列選択ツール
- なげなわツール
- 多角形選択ツール
- マグネット選択ツール
- クイック選択ツール
- 自動選択ツール
[自動選択ツール]
[自動選択ツール]をよく見ると「キラっ」としていますが、英語版では「Magic Wand Tool」(魔法の杖ツール)という名称です。
[マジック消しゴムツール]にも同様に「キラっ」がありますが、こちらには「マジック」が残っていますね。
さて、[自動選択ツール]を利用する上でおさえておきたいのが、[隣接]オプションです。
たとえば、四隅の透過部分を選択するとき、オンになっているとクリックした箇所に連続した透過領域のみが選択されますが、オフにしてからクリックすると離れていても透過している領域が選択されます。
[隣接]オプションは、デフォルトではオンになっていますので、使う場面に応じて切り換えて使います。
クイック選択ツール
Photoshop CS2からありながら、見逃されている方が多いのが[クイック選択ツール]です。
自動選択ツールの場合は[サンプル範囲]や[許容値]など、細かい設定を調整する必要があります。一方、[クイック選択ツール]はそのような調整なく、ドキュメント上をドラッグするだけで選択範囲を作成します。
このとき、キーの併用によって、次のように操作できます。
- shiftキー:離れたところを選択する
- optionキー(Altキー):選択解除する
さらにポイントになるのが、ブラシの大きさです。特に、不要な箇所を削除する際にブラシの大きさを調整がキモです。
ブラシサイズの変更は、[と]キーを使ってもよいのですが、この連載の第一回目でご紹介した「ブラシプレビュー」がオススメです。
control+option+ドラッグ(WindowsではAlt+右クリックでドラッグ)することで、水平方向ドラッグはブラシサイズ(直径)、垂直方向ドラッグはボケ足(硬さ)を視覚的に確認しながら変更することができます。
なお、[クイック選択ツール]は、[選択とマスク]ワークスペース内でも、最初に使うべきツールとして位置付けられています。
ペンツール
[ペンツール]を使ってパスを描画し、[パス]パネルの「作業用パス」をcommand+クリック(Ctrl+クリック)して選択範囲にする方法は定番です。
Photoshop CC 2018では、パスが太くなり、アンカーポイントが大きくなるなどパスの操作がしやすくなっています。
この際、選択範囲をマスクするときには、ベクトルマスクの利用を検討しましょう。パスを操作するだけで、マスクの結果が変わりますので、選択範囲を作成する手間を省略できます。
ベクトルマスクについては、この連載の第7回ベクトルマスクを使って実現する、直しに強い切り抜きにて紹介しています。
コマンド類
[選択範囲]メニューには、次の4つのコマンドが用意されています。
- 色域指定
- 焦点領域
- 被写体を選択
- 選択とマスク
色域指定
[色域指定]コマンドは古くからある機能ですので、ご存じの方が多いでしょう。ダイアログボックス内で選択したい箇所をクリックして選択範囲を作成します。
特に、[顔を検出]や「スキントーン」オプションを使って、人物や顔を選択するときに使い勝手がよい機能です。
焦点領域
「焦点領域」は、Photoshop CC 2014から追加されたコマンドです。いわゆる「前ピン」のピントの合っている部分だけを選択できる機能。
なかなか魔法のようにはいきませんので、[焦点範囲]のスライダーを調整したり、ダイアログボックス左側にある[焦点領域加算ツール]、[焦点領域減算ツール]を使って調整を行います。
被写体を選択
つい先月(2018年1月)、Photoshop CC 2018.1から追加されたばかりの機能です。
ただ、コマンドを実行するだけのシンプルな操作。今のところ、エッジの微調整は必要ですが、クイック選択ツールでドラッグするよりもスピーディに選択範囲を作成してくれます。
コマンドとして実行するほか、[クイック選択ツール](または[自動選択ツール])の使用中に、オプションバーの[被写体を選択]をクリックして実行することもできます。
選択とマスク
こちらは連載の第3回で紹介している機能です。バージョンが上がるごとに少しずつリファインされ、スピードや精度が上がっています。
ご参考までに[選択とマスク]コマンドは、[抽出]フィルター、[境界線を調整]の進化形です。
- [抽出]フィルター(CS3まで)
- 境界線を調整(CS5以降)
- 選択とマスク(CC 2015.5以降)
Photoshop CC時代のマスクを前提として選択のワークフロー
マスクすることを前提に選択のワークフローについて考えると、次の3つの方向性があります。いずれも、[選択とマスク]にて仕上げを行います。
- 選択範囲を作成後[オプションバー]の[選択とマスク]をクリック
- (選択範囲がない状態で)[選択]メニューの[選択とマスク]をクリック
- レイヤーマスクのサムネールを選択し、[属性]パネルの[選択とマスク]をクリック
[選択とマスク]は単独の機能というより、“選択系の仕上げのツール”という使う位置付けになっており、[焦点領域]ダイアログボックス内や、また、レイヤーマスクを設定しているときには[属性]パネルにもボタンが表示されます。
この際、注意点として、[選択とマスク]を実行する前に選択範囲を作成していると、出力先が「選択範囲」になります。そのほかは「レイヤーマスク」です。
[選択とマスク]ワークスペースでの[被写体を選択]
[被写体を選択]は、[選択とマスク]ワークスペースでも利用することができます。
クイック選択ツールでドラッグしてもよいのですが、[被写体を選択]を使ってざっくりと選択範囲を作成し、その後、微調整していくのがスピーディです。
まとめ
次の2つは定番として、これからも利用されていくでしょう。
- ペンツールでトレースしたら、ベクトルマスクにする
- チャンネルを複製してレベル補正し、レイヤーマスクに変換
今回、触れていませんが、「チャンネルを複製してレベル補正し、レイヤーマスクに変換」するフローも定番です。
それ以外の手法として、Photoshop CC以降は、次の流れがオススメです。
- 「選択とマスク」→「被写体を選択」→[境界線調整ブラシツール]で「微調整」→「レイヤーマスク」として出力→必要に応じて微調整