ビジュアルに見る新しいアイデンティティの表現 – 流動する自己 #AdobeStock

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Adobe Stock ビジュアルトレンド

もうそろそろ、小さな「枠」から飛び出すときかもしれません。男であるか女であるかが問われたり、ひとつの民族や民族性にあてはめられたり、年齢で制限を受けたり、といった既成概念の不適切さ、場合によっては残虐さに対して、人々はこれまで以上に意識を向けています。

自ら定義する、変化しやすいアイデンティティ、そして、あらゆる種類の体型や生き方に配慮を払う多様性がさまざまな場面で見られ始めており、マーケティング担当者やビジュアルアーティストも、こうした流れを取り入れつつあります。


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Mr. や Ms.などだけでない、性別を表す新しい敬称(Ze、They、Mx など)

性別 (本当に長い間、固定化されていた古い区分) は、今や最も流動的な概念のひとつです。政治やポップカルチャーにおけるトランスジェンダー層は明らかに増加しています(昨秋、トランスジェンダーであることを公表している政治家が9名公選されました)。彼らはほぼ間違いなく、私たちの性別を定義づける「男性」「女性」という区分の不適切さの議論を活発にする非常にパワフルな存在と言えるでしょう。

こうした動きにあらゆる分野が反応しており、Facebookはカスタム性別オプションを追加しました。また、言語学者と文法学者が集い、多種多様な人々により適した表現を見つけるため、「he」「she」や「Mr.」「Mrs.」「Ms.」の隙間を埋める代名詞や敬称は何か(ze? they? ne? Mx.?)を巡り、熱い議論が交わされました。


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Giorgio Magini/Stocksy / Adobe Stock

ファッションの世界では、Vetements、Gucci、Zaraを始めとするブランドが、ノー・ジェンダーのラインを展開中ですが、それはショック・バリュー(衝撃や驚きを与える表現が持つ価値)のためではなく、流動性を増す今の社会に合っているというだけです。Vogueの中でSuzy Menkesは、こうしたファッションがジェンダー革命の先端を走り得る可能性について、次のように語っています。「おそらく、各家庭において性的中立性が現実のものとなれば、男女格差は、少なくともファッションにおいては、本当に縫い合わされるでしょう」。

そして、私たちは、いずれはそうした区分をすべて捨て去ることになりそうです。トランスジェンダー問題のスクールワークショップを主催する心理療法士、Julie Mencherは、New York Timesで次のように述べています。「私たち、特に若い人たちは、性別を生まれながらのものではなく、選択するものとして捉えるようになっています。体の構造に関係なく、男女で区別をせず、スペクトラム(連続体)として見ているのです。もはやジェンダーは存在しないと主張する人も増えつつあります」。

既成の枠を超える

ジェンダーの流動性についてのこうした議論は、同時に、真実性―自分の実経験と本当の体に合った場所、言語、スタイルを見つけること―について考えることでもあります。したがって、「男性」あるいは「女性」として違和感を覚えなくても、自分のアイデンティティの区分を見直そうという人が出てくるのも当然です。

女性の中には、ジェンダーについて改めて考え、美の基準に疑問を抱くようになった人たちもいます。たとえば、素顔のセルフィ―を共有する運動、#nomakeup (Beyoncé、Gwyneth Paltrow、Salma Hayekも画像を公開)。Alicia Keysに至っては、もう公の場でも完全にノーメイクです。彼女たちは、化粧をやめることで、実生活での本当の姿と、ファッション雑誌やソーシャルメディアの世界で修正をして入念に作り上げられた姿との違いに注目を集めようとしています。


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Jacob Lund / AdobeStock

ヘアスタイルやファッションのトレンドも変化しています。たとえば、スポーツ刈り。「女性たちは、長らく続いたロングの可愛らしいボヘミアンな雰囲気より、際どいものを好むようになっています」。New York Timesの中でこう語ったのは、イーストヴィレッジのプライベートサロンのオーナー、Andrea Donoghueです。「彼女たちは、可愛く見えないことを恐れてはいないのです」。

マーケティング担当者は、自社のキャンペーンに、これまで以上に女性の多様な美しさを表現した画像を使用しています。自社のカタログで、さまざまな体型、肌の色、年齢の女性を起用しているAthleta社のマーケティング最高責任者、Andrea Mallardは、Rackedで次のように話しています。「­とにかく等身大の女性を称えること、それも大げさな政治運動のような印象を与えないやり方の方が影響力があります。今は40歳以下でなくても、美しく、魅力的で、パワフルだと思われている時代ですから」。


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BONNINSTUDIO/Stocksy / Adobe Stock

この流れは男性の間でも広がっています。ボディ・ポジティブ・ムーブメントが受け入れられつつあり、体型に関するプレッシャーや不安について声を上げる男性が増えています。一方、booHooManを始めとするファッションブランドは、より大きなサイズのメンズ商品を打ち出しています。

化粧品を使わないことを考え始めた女性がいる一方で、それとは逆方向に向かう男性もいます。男性化粧品市場は、かつてはタブーとされた商品への需要に応える形で、拡大しています。既にMR PORTERなどのブランドがこの成長市場に進出しており、L’Orealの英国支社長は、今後5年以内に百貨店には男性化粧品専用のカウンターが並ぶだろう、と見ています。

ストックにおける流動的なアイデンティティの発展

これまでビジュアルの世界では、古いステレオタイプのせいで、肌の色や体型、ジェンダー、障害など、特定の枠に当てはまらない人々を除外する場合が多々ありました。だからこそ、ストック業界は今、そこに注力すべきです。

障害を持つ人々にスポットを当てた作品を数多く発表しているSophie Klafterは、ストック業界の今後の方向性について、次のように語ります。「あまり目を向けられていない部分も含め、多様なバックグラウンドを持つ人々をもっと取り入れた作品を作るには、まだ多くの課題があると思います。たとえば、プラスサイズモデルやさまざまな肌の色は表現されるようになりましたが、身体的な違いや障害のある人たちは、米国の人口の約20%を占めるにもかかわらず、ストックの画像に含まれることはほとんどありません」。

Sophieは、撮影からお気に入りの1枚を選び、次のように紹介してくれました。それは単に違いを捉えただけでなく、皆が一体となった瞬間です。「彼は、飛び込み版の先端に座り、足をぶらつかせ、手を腿の上に置き、掌を上にしています。目は閉じられ、頭は空を仰ぐように上を向き、日差しが彼に降り注いでいます。水着の色と水面の色のコントラスト、そして誰もが時折感じる大切な何かを思わせる表情。その瞬間の心の静けさ、喜び、生の美しさが切り取られています」。

©Sophie Klafter

ストックフォトにおける最大の課題のひとつは、人間としての経験の多様性を1枚の静止したショットの中で捉えることです。Sophieは次のようにアドバイスしています。「このことを実現するには、真実を見せる必要があります。それは美化したものでも清らかなものでもありません。また、フレーム内での非マイノリティとマイノリティの割合が完璧であればいいというわけではないのです。高い評価を受けるのは、偽りのない、共感を呼ぶ写真です。そうした作品こそが、幅広い人々の日々の経験と自然に共鳴するのです」。

©Sophie Klafter

「流動的な自己」をさらにお探しですか?

多様かつ流動的なアイデンティティを題材にしたストック素材をお探しなら、Adobe Stockの特集ギャラリーをぜひご覧ください。今後も性別で区分されるのではなく一人の人間であることとは?を問いかける作品を生み出しているアーティストにお話を伺う予定ですので、引き続き本ブログをお楽しみください。

この記事は2018年3月6日に Adobe Stock Team により作成&公開されたThe Fluid Self: Visualizing New Identitiesの抄訳です。

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*ヘッダーイメージ:Hilde Atalanta / Adobe Stock