国際女性月間に寄せて〜 女性タイプフェイスデザイナーと #Typekit #IWD2018

多くの人は文章を読むときに、そこに使われているフォントとそのフォントを作ったデザイナーを気にすることはないでしょう。しかし私たちフォントに関わるTypekitチームは異なる見方をしてます。そしてタイプフェイスデザイナーとして活躍する女性がいまだ少数であることを憂慮しています。

実は伝統的に男性優位のフォント業界ですが、この記事では女性を少しでも応援しようと、女性がデザインしたタイプフェイスをピックアップしてご紹介します。一年を通していつでも美しいフォントたちですが、国際女性月間にちなんで、ぜひ女性タイプフェイスデザイナーが作ったフォントを意識して使ってみてください。

素晴らしい見出しフォントをお探しなら

Milka:Lettersoupによるデザイン(オリジナルはMilka Peikova)

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Milka」はもともと1979年にブルガリアのアーティストMilka Peikovaがデザインしたステンシル書体ですが、彼女はLettersoupチームの手をかりてデジタルバージョンを作りました。オリジナルの通常スタイルのステンシル体のほかに、テクスチャーを変えた5つのバリエーションが含まれます。

Bely:Roxane Gataudによるデザイン

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Roxane Gataudによる「Bely」のBehanceプロジェクトページはこちら

「Bely」のディスプレイ体にはRegularとBoldでは表現しきれないほどの力強さがあります。大胆にいきたいときに使いたい、素晴らしく楽しいフォントで、全ウェイトを通じてバランスが取れたセリフを備えています。これを本文用書体とディスプレイ用書体のどちらに分類するか迷うところですが、どちらにしてもBelyはある種の極端さがどこまでも優美なフォントです。

Eskapade:Alisa Nowarkによるデザイン

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Alisa Nowarkの「Eskapade」Fraktur(上)とRegular(下)。

Eskapade」 レギュラーは完璧にノーマルな本文用セリフ書体に見えますが、Eskapade Frakturはまったく別物です。ブラックレター書体が持つゴシック様式のフィーリングを取り入れたいときに最適です。

毛筆体フォント

かづらき:西塚涼子によるデザイン

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西塚涼子の「かづらき」は12世紀(鎌倉時代)の歌人藤原定家の書跡をもとに作られました。2002年モリサワ タイプデザインコンペティションに「汀花(ていか)」として受賞し、その後改良を重て「かづらき」としてリリースされました。2010年のNY TDC(Type Directors Club)審査員賞を受賞しています。2014年のインタビュー記事で西塚は自身のデザインワークについて語っています。ディスプレイや見出しに使える他の和風デザインのフォントをお探しなら、彼女の最新作「貂明朝」も検討してください。

ブラーフミー系文字

昨年Fional Rossをこの業界における注目すべきデザイナーとしてこのブログ記事(英文)で紹介しました。彼女には以下に紹介する「Adobe Kannada」などアドビが開発するブラーフミー系フォントの多くにコンサルタントとして頻繁に関わっていただいています。

Adobe Kannada:Erin McLaughlinによるデザイン

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アドビがAdobe KannadaのデザイナーとしてErinを採用する決め手となったのが、レディング大学でタイポグラフィを学んでいた当時から彼女が示していた「進歩的で熟達した」アプローチでした。このフォントのデザインプロセスについては2015年のこの記事(英語)をご覧ください。彼女が2010年にデザインしたデーヴァナガリー文字用フォント「Katari」もご覧ください。

セリフ書体およびサンセリフ書体

Chaparral:Carol Twomblyによるデザイン

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Nathan Fordによる「Gridset」デモサイトのスクリーンショット。

「Shaparra」lはスラブセリフ書体ですが、スラブ(平板)っぽさは注意して見ないと感じられず、このスタイルのフォントに特有なデザインの自己主張はかなり控えめです。長い文章に使う本文用書体として秀逸ですが、見出し用書体にも使える、デザイナー的には夢のセリフフォントだといえるでしょう。このフォントのデザインについては2011年のブログ記事(英語)で詳細に取り上げています。

Mr Eaves:Zuzana Lickoによるデザイン

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ある博物館の展示に熱中するあまり自身がデザインしたフォント「Mr Eaves」がそこに使われていることに気づかなかったとZuzana Lickoは2016年のインタビュー記事(英文)で語っています。彼女の手がけた仕事はそれほど幅広く、それでいて多くの作品は力強いものです(「Variex」などはさながら地震にあったMr Eavesです)。このフォントは明瞭さを保ちながらスタイリッシュです。

Maiola:Veronika Burianによるデザイン

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Veronika Burianによる「Maiola」のBehanceプロジェクトページはこちら

「Maiola」の詳細部分に注目すると、それが巧みな複雑さで構成されていることがわかります。ストロークやセリフの非対称性は「デジタルではなく人手で刻まれた」ルックを意図した手書きっぽさに貢献しています。こうしたディテールは組んだページ(Maiolaは印刷物に使っても素晴らしいものです)に動きやテクスチャーを添える働きをしますが、メッセージの邪魔をすることはありません。

スクリプト書体(筆記体)をお探しなら

Adorn:Laura Worthingtonによるデザイン

「Adorn」はSmooth Serif、Pomander、Condensed Sansといった豊富なバリエーションを揃える。

Laura Worthingtonはスクリプト書体専門のデザイナーではありませんが「Adom」はこの分野で卓越した才能を持つ彼女の代表作です。フォントに含まれるスタイルバリエーションの豊富さに加え、飾り文字や飾り罫などはクラフト風味の味付けをデザインに加えるのにもってこいです。

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Gautreaux:Victoria Rushtonによるデザイン

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スクリプト書体は文字のデザインバリエーションが多いため技術的に複雑になりがちですが、Victoria Rushtonは「Gautreaux」を可能な限りシンプルに扱えるように注力したため、どんな状況でも快く使えるものとなっています。このフォントのデザインは熟達した書家である、彼女の祖母の書跡をもとに作られました。その制作ストーリーを紹介するブログ記事(英文)もぜひご一読ください。

これで全部?

いいえ!ここで紹介したフォントの以外にも、Typekitで活躍する400名を超えるデザイナーのうち、女性のタイプフェイスデザイナーから生み出されたフォントがたくさんTypekitから提供されていますので、ぜひご利用ください。

そのほかにも女性デザイナーがどんなプロジェクトにどう取り組んで貢献しているのかを知り、彼女たちを応援しましょう。
Victoria Rushtonは、この記事よりももっと網羅的な女性がデザインしたフォントのリストを作成しました。また、Alphabettesは女性視点で捉えたフォント業界の情報を提供する素晴らしいリソースです。もしあなたがこの業界で仕事をしたいデザイナーなら、あるいはそういう知人がいるなら、この夏に実施されるType@Paris(英文)への応募をおすすめします。今年も学生にはアドビが学費を支援します。

この記事は、2018/3/8にポストされた Women designers on Typekit: A few highlights for International Women’s Day を翻訳したものです。