UX評価のい・ろ・は 1 なぜUX評価? | アドビUX道場 #UXDojo
Webサイト・アプリの改善を検討するには、デザインを言語化して伝えられることが必須です。そして、そのためには現状の正しい理解が不可欠です。そこで、この連載「UX評価のい・ろ・は」では、運用中のWebサイト・アプリの健康状態をチェックするUX評価のノウハウを紹介します。第一回は、UX評価を行う目的と心構えを解説します。
主観的なデザイン評価は卒業しよう
UXデザインの利点を語るとき「ビジネスに貢献できます」という言葉を耳にするものの、具体的にどう貢献できるのでしょうか。少し見た目を変えるだけでも効果を得ることができる場合がありますが、抜本的な課題が解決されていない場合があります。
- 何がうまくいっていて、何を改善すべきなのか?
- 評価するために必要な指標が収集されているか?
- 施策が指標にどのような影響を及ぼしたか?
- データからユーザーのニーズを汲み取れているか?
今風のデザインにビジュアル変えたり、情報構造を見直すことで訪問数を上げることができるかもしれません。しかし、現状の理解のないまま手段を先行してしまうと、これからどうWebサイトを改善していけば良いのかという学びがありませんし、何を基準にデザインを評価すれば良いのかもあやふやになります。
あなたのデザインが理解されないのは、現状の課題の理解のないまま見た目だけで評価されてしまうから。仮説通りに利用者は遷移しているか。ビジネスの目的は何か。ブランドメッセージが何でそれが伝わっているか … こうした課題を共有されていないままだと、デザインの評価が主観的なものになる可能性があります。
デザインの目的を明確にする「UX評価」
UX評価とは現状を理解し、そこから何を解決すべきなのか優先順位を決めるためにあります。Webサイトやアプリを作ったものの、それが本当に利用者に受け入れられているのか。見た目は機能に留めず、ユーザーが抱える「なぜ」を深掘りするための工程です。闇雲にデザインをするのではなく、制作者とクライアントが同じ課題に向き合いながらデザインを考えていくために欠かせません。「リニューアルをしたい」という漠然とした目的から「利用者の目的を達成するには十分なコンテンツがない」という明確な課題を解決するためのデザインプロセスにしやすくなります。
UX評価はゼロから何かを作ったり、A/Bテストなどをしながら早く運用する現場には向いていませんが、じっくり現状を把握して次へ進めたいプロジェクトや、デザインの評価をきちんとしたい現場には最適です。
データから利用者の潜在的なニーズを導き出し、今できることを提案します
UX評価はデータと本質の理解から、今できるアクションを提案するものです。
- データ: 現状を把握するためにデータを集めます。Web解析、ユーザーインタビュー、定性・定量関係なく集めます。制作・運用体制も調べておくと理想的です。
- 本質の理解: 利用者の『なぜ』を探ります。行動・言動の裏を探ります。
- 具体的なアクション: 理想論ではない、今の体制でも改善できることを提案します。
UX評価に関わる主要な分野
WebサイトにおけるUX評価を実践するための代表的な分野は以下の5つになります。
- Web解析: Adobe Analyticsをはじめとした解析ツールを活用しながら、利用者行動の視覚化や、効果的なコンテンツはどれか調査します。
- ユーザーインタビュー: ユーザーの声を聞いたり、Webサイトを操作しているところを記録して、使われ方の実態を知ります。
- ステークホルダーインタビュー: ユーザーだけでなく、クライアント(特に決裁者)にもインタビューを行います。ビジネスの目的は何か、Webサイトに期待していることは何か聞き出します。
- コンテンツの監査: 現存のコンテンツがどのような状態で、誰が管理しているのか洗い出します。
- UIの監査: 一貫性のあるUIか。ガイドラインに沿っていて、最低限のユーザビリティが担保されているか検査します。
すべての分野をじっくり評価することはまれです。予算、スケジュール、目的によって分野を絞ったり、調査の詳細度を調整することもあります。また、これらをすべてデザイナーが行うのは困難です。他の専門家が既に情報を収集していることがあるので、デザインを始める前に上記の情報を入手しておくとデザインが作りやすくなるだけでなく、説明もしやすくなります。
評価を始める前の心得
UX評価を通してデザインの言語化がしやすくなりますが、デザイナーひとりですべて実践するのは困難です。また、マーケターや解析士などの専門家が評価に携わったほうが効果的な場合があります。しかし、どうしてもデザイナー自ら実践しなければならないことがあります。そのときに気をつけておきたいことが4つあります。
- 評価の目的を共有する: 「ユーザー体験を評価しましょう」と言っても意味が広すぎてクライアントに間違った期待を与えてしまう場合があります。操作の達成率を上げるためのか、利用者の行動を洗い出すためのか、評価の目的を事前に共有にしましょう。
- 先入観をもたない: デザイナーとして「こうしたい」という考えをもってしまいがちですが、まずは真っさらな状態で調査しましょう。
- 自分でユーザーテストしない:「これは使いにくい」という意見をもつのは良いですが、デザイナーがターゲットユーザーではありません。
- スケジュール内でできることを探す: 理想を追い求めると実践が難しくなりますし、正攻法で出来ないから止めるのも良くありません。例えばユーザーテストにしても、時間がない場合は本格的なテストではなく、ターゲットに近い知人に聞いてみるという程度でも良いでしょう。
調査レポートの例。データを基にユーザー行動を仮説。表示させるコンテンツの優先順位を決めていきます
次回からUX評価を実践するための手法を解説していきます。