「電子サインは法律的に大丈夫でしょうか?」 電子サインについて、法律に関するよくある質問にお答えします #AdobeSign
クラウドベースの電子サインソリューション「Adobe Sign」特集
本記事では、電子サインにおける法律に関するよくあるご質問について、アドビ 法務・政府渉外本部 本部長の浅井 孝夫がお答えしています。
Q.「電子サイン」と「電子署名」、2つにはどのような違いがあるのでしょうか?
浅井:どちらも法的拘束力はありますが、大きく「第三者機関の認証局が発行する証明書の有無」という意味で異なります。
物理的な例でいいますと、認印と実印の違いのようなものです。認印は、市区町村に印鑑登録がされていない印鑑で、当然、市区町村が発行する「印鑑登録証明書」は存在しません。一方、実印は、市区町村に印鑑登録が行われた印鑑をいい、市区町村が「印鑑登録証明書」を発行して、誰の印鑑であるかを証明してくれます。そのため、不動産取引や公正証書の作成といった重要な手続きにおいて利用されます。
これを電子サイン、電子署名で置き換えますと、「電子サイン」が認印、「電子署名」が実印に相当する役割を果たしています。電子サインを用いて契約書に署名を行う場合には、印鑑登録証明書に相当する「電子証明書」はありません。その代わりに、利用者の電子メールアドレスやパスワード、IPアドレス、ソーシャルIDなどの情報と、署名依頼~署名されるまでの履歴ログに基づいて、利用者の「本人性」が確認できるようになっています。
これに対して、電子署名においては、第三者機関の認証局から発行された「電子証明書」が組み込まれることにより、利用者の「本人性」が確認できるようになっています。そのため、e-Tax(国税の電子申告)や不動産取引など、より高い法的証明力が求められる文書に利用されます。
[参考資料] Adobe Signの類型 電子サインと電子署名
Q. 電子サインで契約した場合、法的に有効なのでしょうか?時間が経ってサインが無効になるといったことにはならないのでしょうか。
浅井:電子サインは法的に拘束力を持ち、時間が経つとサインが無効になる、といったことはありません。
その理由として、Adobe Signを含む、多くの電子サインソリューションには、「本人性」と「非改ざん性」を担保する仕組みがあるからです。電子サインを依頼するプロセスは、以下の流れとなります。
- クラウド上に契約書や注文書などの文書データが保存されます。
- その文書データへのアクセス先を相手先のE-mailアドレス宛に送り、サインを依頼します。
- 相手方がそのメールを開いて、クラウド上にある文書データにアクセスして署名作業を行います。
このプロセスで重要なのは、これらの一連の作業は全てオンライン上で証跡(ログ)が残されているということです。これが電子サイン(証跡保管型)と言われる所以で、相手方のE-mailアドレスと証跡(ログ)が結び付けられることで、電子サインが法的に有効であると立証していくことができます。なお、Adobe Signでは、なりすまし防止のため、ワンタイムパスワードを入力するなどの二段階認証の仕組みも備えています。
Q. 仮に契約書の署名枠に、契約者が実筆で書いた「署名の写真データ」を切り貼りして、メールに添付して送付する行為は、電子サインとどう違うのでしょうか?
浅井:証跡が残るか残らないかという意味で違います。
前述の通り、電子サインを依頼するときのプロセスには、「本人のE-mailアドレスに送られたリンクからクラウド上の文書にアクセスして署名する」という一連の作業の証跡が全てオンライン上に残っています。しかし、契約書に「署名の写真データ」を貼りつけてメール添付で送ったとしても、「署名」の本人と「署名の写真データ」を貼り付けた本人を結びつける証跡が残らないため、実際に本人が書いたかどうかまでを結びつけることは難しいといえるでしょう。
Q. 電子サインで全ての取引はできるようになるでしょうか?
浅井:いいえ、電子サインで全ての取引はできません。
電子サインソリューションによりますが、Adobe Signの場合、営業関連契約、秘密保持契約、コンテンツおよび技術ライセンス契約、業務委託契約・調達契約、雇用関係契約(但し、労働条件を記載した書面の交付は別途必要です)などは、全て電子サインで取引することができます。一方で、一般定期借地契約の特約や定期建物賃貸借契約など、書面による締結が法令上要求されているものがあります。なお、法令上の書面保存・交付等の詳細については、こちらをご参照ください。
印紙代は、本当に支払いが必要無いのでしょうか?
浅井:はい、必要ありません。
印紙税とは、日常の経済取引に際して作成する契約書や領収書など、「印紙税額一覧表(※)」に掲げられている文書(現在20種類)が締結・交付される際に課される税金ですが、電子サインで契約締結する場合、印紙は不要になるため、印紙代のコストは必要なくなります。Adobe Signを導入した総合人材サービスのパーソルホールディングス株式会社は、年間約6千万の印紙代を削減したと伺っています。
電子サインの3つのメリットについてまとめた記事はこちらをご覧ください。