心理学から学んだ「UXの法則」を視覚化して紹介するサイト | アドビUX道場 #UXDojo
エクスペリエンスデザインの基礎知識
デトロイトのVectorformという企業でデザインリードとして働くJon Yablonskiは、最近、心理学にルーツを持つデザイン原則を集めたlawsofux.comを公開しました。デザイナーにデザイン以外の領域からも学ぶことを勧めたいと考えた彼は、UIを構築する際に参照できるリソースとしてUXの法則を集めたサイトをつくったのです。
「法則 」という言葉を使ってはいるものの、Jonは、自分が描いた法則を凝り固まったルールだとは思って欲しくないようです。
「サイト名の『UXの法則』はちょっと誤解を招くかもしれません。実際にはUXの世界には法はありませんから」と、彼は、電話越しに言いました。
「ユーザー調査やテストやプロジェクトのデータを置き換えようという話ではありません。ですが、このような人の認知に関する法則は、体験を直感的で親しみやすくするのに役立つ標準的な基準として利用できると思います」
それぞれの法則にはJonがデザインしたダウンロード可能なポスターが添付されています。
JonからデザイナーがUXの法則を利用するためのヒントについて、それから、こうしたサイドプロジェクトのデザイナーにとっての重要性を聞きました。以下が彼の答えです。
これらの法則をまとめてlawsofux.comサイトをつくろうと思ったきっかけは何でしょうか?
私が自動車に関連するプロジェクトの仕事をしていたときのことです。私は彼らの製品デザインオフィスに足繁く通い、HMI部門と様々な作業を行い、結果的に私自身がデザイン上の決定に関する多くの検証と調査を実施する立場になりました。乗り物のインターフェースを何か変えるということは、様々な範囲に影響を及ぼす行為です。
その作業に関連する認知心理学の法則を調査する中で、とてもたくさんのことがUXデザインにも関係していることに気がつきました。更に、こうした法則を調査すればするほど、デザイナーにとって分かりやすいリソースがあまり存在しないことがわかってきました。そこで、すべての法則を集めてそのコンセプトを視覚的に表現し、少しでも覚えやすいリソースをつくりたいという気持ちが沸いてきたのです。
それとは別に、私はサイドプロジェクトに個人的なこだわりがあります。私はサイドプロジェクトにはとても価値があると思っています。何か新しいことを探る良い機会になりますし、自身を刺激するアイデアを追及する機会にもなります。私が「UXの法則」を始めたのは、単に調べた原則をまとめて書き留めるだけでなく、異なる技能を強化して、デザインすること自体を楽しみたかったからです。
ヒックの法則: 決断に必要な時間は、選択肢の数と複雑さと共に増大する
そのプロジェクトでは、法則のどれかを仕事のために使用しましたか?
もちろんです。実際、そこが始まりの地点だったと思います。車のインターフェースには複雑さが数多く見つかります。私はそうしたインターフェースを簡素化すべき理由を探していました。そこに、Apple CarPlayのようにすべてを単純化する大きな前進がありました。これは、とてもワクワクさせられるものでした。
私はちょうど近いものを提唱していたところで、その理由を正当化する必要に迫られていました。私はヒックの法則と呼ばれる原則を見つけ、それは実際に役に立ちました。その法則を簡単に言うなら、複雑さと選択肢の数が増えるほど、ユーザーがどれを探しているのか判断するための時間がかかるというものです。
あなたはもともと心理学に興味を持っていたのでしょうか?それともそれが初めて興味を持った機会ですか?
ずっと私は心理学に興味を持っていました。大学ではいくつかのクラスも受講しました。ですが、UXデザイナーとしての仕事との関連性を見出してからは、従来よりもずっと興味を持つようになりました。
UXデザイナーとして見れば、関連性は明らかです。私は、常に、ユーザー体験を最適化できる仕事のやり方を調査し追求してきましたが、認知心理学を考慮することは極めて道理に適うものだったので、どんどんその道を追求するようになりました。あと、別の話になりますが、古いPenguinの心理学の書籍の表紙デザインはとても洗練されたもので、それを見るといつも刺激を与えられていました。そうした頭の中にあったいくつかのものが、ちょうど良いタイミングで組み合わさって、「UXの法則」のアイデアへと集結したのです。
系列位置効果: ユーザーは最初と最後の要素を覚えやすい傾向がある
これらの法則に、キャリアのもっと早い段階で出会っていれば良かったと思いますか?
まったくです。少し面白いと感じているのは、しばらくクライアントワークをこなしたデザイナーであれば、これらの法則を直感的に知っているようだということです。きちんとした理解が無いだけなのです。原則をなんとなく分かっていたり、あるいは耳にしたことはあるかもしれませんが、クライアントへのプレゼンではっきりと説明する、あるいは議論することができない状態です。
私は美術大学に通いました。グラフィックデザインなどを学ぶ伝統的なデザインコースでした。心理学のような他の学問との交流は十分には行われていなかったように思いますし、そこにある関係についても十分に議論されていなかったと思います。
最初にサイトを見たときは10個の法則が掲示されていました。今は15個に増えています。これはまだ継続中のプロジェクトなのでしょうか?
確か、1月の中旬に10個の法則を公開しました。それからおおよそ隔週ペースで順次追加しました。新しいコンテンツを増やしたり、既にある説明を増補して、掲載したいものすべてを網羅できるまで続けたいと思っています。
フィッツの法則: 対象領域に移動するのに必要な時間は、対象部までの距離と対象物の大きさの関数となる
調査した中で特に気に入った法則はありますか?もしくは、特に注目して欲しいものは?
私は「法則」という言葉をゆるい意味で使っています。と前置きをした上で、それを原理と呼ぼうがヒューリスティクスと呼ぼうが、最も知られたものがあります。フィッツの法則です。デザイナーなら、多くの人が話しているのを聞いたことがあるでしょう。大きさと距離でターゲットまでの時間が決まるといったような話です。
次はあまり知られていないものですが、ヒックの法則はおそらく私が一番好きな法則のひとつです。決断までの時間は、選択肢の数と複雑さに応じて増加するというものです。経験のあるデザイナーでも、装飾を追加したりして複雑さを追加しすぎることがあると思います。これはユーザーを混乱させる時間を増やす行為です。私たちデザイナーには、時おりデザインのためにデザインする傾向があり、コンテンツの簡素化に配慮が無くなるために、見逃されがちな法則なのだと思います。
他にはテスラの法則もありますね。この法則は、どんなシステムにも、それ以上は解消できない複雑さが存在し、開発者あるいはユーザーがそれに向き合わなければならないことを伝えています。ある意味、ヒックの法則の裏返しです。あまりに簡素化しすぎると、ユーザーにとって分かりづらく使いにくくなることがあります。これは、デザイナーにとってはあまり耳にしたことの無い話かもしれません。
ミラーの法則: 平均的な人が同時に記憶内で扱える項目の数はせいぜい7つ(人によってプラスマイナス2つ)である
UXデザイナーがこうした標準的な考え方を知るべきだと考える理由は何でしょうか?
先程述べたように、多くのデザイナーは感覚的にこうした法則を理解しているかもしれませんが、はっきりと意識することで、もっとユーザーに使いやすい仕事ができるようになると考えています。それだけでなく、特定のデザインの判断の理由について明確に説明したり、ユーザーの心の動きを理解する科学的な根拠にもなるでしょう。
これらの法則を理解することがあなたをより良いデザイナーにしたと思いますか?
認知心理学の一部の原則について、はっきりと話せるようになったことは、役に立っていると思います。こうした原則を既に仕事の中で直感的に学んではいましたが、人に対して「それはミラーの法則だ。それは次のようなことを告げている…」とはっきりと指摘できるようになりました。これはデザイナーとしての価値を上げ、 デザインの判断力を強化してくれます。
この記事はWhy All UX Designers Need to Check Out the Laws of UX(著者:Sheena Lyonnais)の抄訳です