撮影ツアーの立て方の極意と美瑛町の旅 #AdobeStock

連載

PASHADELIC による風景写真の極意

このブログでは、風景写真専門のオンラインフォトコミュニティPASHADELIC (パシャデリック)から、撮影にまつわるコツや撮影スポットをご紹介いただきます。

新緑も深まるこの季節、撮影旅行に出かける方も多いのではないでしょうか。旅行前にしっかりとした準備&計画を立てるとコストも時間も節約でき、撮影も順調に進むでしょう。今回は効率的な撮影ツアーの立案方法と、北海道は美瑛町の撮影旅行を一例としてご案内します。「あの場所を撮りたかったのに時間が無くなってしまった……!」なんてことを防ぐため、是非参考にしてください。

撮影ポイントを選ぶ

まずは行き先ですが、撮りたい地域名で画像検索をして琴線に触れる一枚が見つかったら、そのサイトやブログを詳しく見てロケーション情報にあたる、という流れがお勧めです。その周辺で撮影してみたいスポットも全部ピックアップしましょう。もちろん移動や撮影時間の関係で実際には回りきれないことが多いのですが、そこは後から調整した方が楽です。

また、撮影スポットの情報は地域の役所観光協会のホームページで確認しましょう。オフィシャルページは客観的に書かれているで、フラットな視点で撮影ポイントを評価しやすくなります。

移動手段の選択

次に移動手段の選択です。行く先の地域の交通状況が掴めない場合、まず行きたいロケーションの最寄り駅の時刻表を確認しておきましょう。公共交通機関を使うか車を使うかの判断基準の一つになります。また、車が使えない場合のスケジューリングでは必須情報です。

撮影したいスポットが大都市圏ならば、移動手段は基本的に公共交通機関になるでしょう。その際、厳密なスケジューリングはほぼ不要です。それ以外はそれぞれの地域の中心都市でも車を使った移動の方が効率が良いです。ただ、街の古さには注目しましょう。旧市街地は道が狭いことが多く、一般に車での移動には適していません。公共交通機関の便数が非常に少ない場合には、移動の効率上レンタカーを利用したいところです。ただ、道路事情が分からない場合には判断が難しいこともあるので、そういったケースではストリートビューでの事前確認が大変有用です。


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Vividz Foto / Adobe Stock

順路の策定 ~車移動の場合~

行った先での移動の順路や時間などを読む際は、次の順番で考えると分かりやすいです。

  1. 撮りたい写真が撮れる場所を地図上にプロット
  2. 経路探索を使って移動の時間読み
    メジャーなスポットはネットの地図サービスに場所がほぼ登録されていますので、名前を使って経路探索して移動時間を読みます。
  3. 撮影スポットごとの情報を調べる
    各種観光案内サイト、行き先の観光協会のホームページ、個人の旅行記のブログ、SNS情報などを参考にします。
  4. スポットの規模に応じて撮影時間を割り振る
    少し余裕を持って各スポットで撮影する時間を割り振っていきます。
  5. 移動時間と撮影に充てたい時間、1日に使える時間から回るスポットを取捨選択
    この段階で時間と移動距離的に、その日のうちに回りきれないスポットが見えてきます。撮影したい写真で優先順位を付けて、移動効率と撮影時間を加味してスポットを取捨選択します。

初めての場所では移動や撮影の勝手が分からないことが多いため、回りたいスポット数マイナス1~2箇所ぐらいでポイントを選ぶと安全です。道路を曲がる場所などの大事なチェックポイントは、ストリートビューでの事前確認することをお勧めします。

また、どの撮影旅行にも共通しますが現地の広さのイメージを事前に作っておきましょう。最初から無茶なツアーの可能性を消すことが出来ます。例えば、北海道民の間で交わされる冗談の一つに初めて北海道旅行をする友人から、「今度、函館観光に行くからついでにあなたの住んでる札幌まで遊びに行くわ」と電話が来た、なんてものがあります。これはスケール感の相違の一例ですが、函館⇔札幌間は「ついで」で移動できる距離ではないのでご注意くださいね。車の移動では300km以上の距離があります。

順路の策定 ~公共交通機関での移動の場合~

行き先がメジャーな観光地かどうかで、移動方法の一部が変わります。メジャーな観光地の場合では、最寄り駅まで列車や路線バスで移動、そこからはタクシーを半日借り切るのが効果的です。初めての地域ならこの方法がレンタカー以上に高効率でしょう。公共交通機関のみで移動する場合は、便数にもよりますが、基本は最初にスケジュールの線上に列車やバスの発着時間を置き、その間に撮影するタイミングをはめ込んでいきます。

  1. 時刻表で撮影ポイントに入る列車やバスの時間をチェック
  2. その場所を発つ便の時間をチェック(発つ時間のほうが重要です。特に交通機関の便数が少ない場合には、撮影スポットを離れる時間は絶対厳守です。)
  3. 1と2を回りたいスポット全てに対して行います
  4. 交通機関の時刻の間に撮影時間をはさむ形でスケジュールを組む

公共交通機関のみを利用するパターンでは、便数が少ない地域ほど回れないスポットが多くなります。撮影可能な時間も交通機関のダイヤによって大きく制限を受けます。その便数に限りがある地域は交通機関の時刻が最優先です。撮影ポイントを離れる時間を守らないと、最悪、宿泊地に公共交通機関で戻れなくなる事態も起こります。行き先が地方になるほどスケジュールのアドリブ対応は利かなくなるため、事前の綿密なスケジュール立案の重要度が増します。

機材選択

機材は撮りたい写真の傾向をよく考えて選びます。あまり欲張らずに撮影する写真の方向性を絞り、荷物が多くなるのを防ぐ方が良いでしょう。

三脚があると撮影バリエーションが広がりますが、重量面でもかなりの荷物になることを考えて選択してください。脚立も便利ですが、非常に荷物になるのでレンタカー移動以外の撮影ツアーにはおすすめ出来ません。旅行自体には他の装備も持っておき、徒歩移動の多い日だけ荷物を絞る手もあります。バッテリー、メモリカードも余裕をみて準備しましょう。必要ならば充電器、モバイルバッテリーもお忘れなく。


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suriya / Adobe Stock

北海道・美瑛町での一日撮影旅行

では具体的な撮影旅行の一例をご覧ください。ご紹介するのは、羽田(旭川便)を朝イチで出発し、着陸した旭川空港を起点にしながら「美瑛の丘」や「青い池」を巡るパターンです。時間を調整すれば、旭川市内や富良野市内に前泊したケースにも対応できます。北海道では、都市圏(札幌や小樽)の撮影以外ではレンタカーを使った移動が効率的なので、今回もレンタカー使用を前提にしています。

周回パターン

旭川空港周辺に各レンタカーの営業所が揃っているので、そちらで車を手配してスタート。旭川空港からは、旭川市内に向かうよりも美瑛に行く方が距離も時間も近いため車でのアクセスは楽です。基本的に道路状況も良く、楽しいドライブになるでしょう。以下は効率的に撮影スポットを巡ることができるモデルパターンの一つです。

機材

カメラボディ x1 , 24-70mm程度の標準ズームレンズ , 70-200mm程度の望遠ズームレンズ ※撮影目的によって超広角(ズーム)レンズ、マクロレンズがあると良いでしょう。

青い池

大きくはありませんが不思議な青い色の池の風景がとてもフォトジェニックです。広い駐車場があり、車が止められない事態はあまり発生しないと思いますが、観光シーズン(6月~7月)の週末は、移動効率を考えると午前中に回ってしまいたいスポットです。

日差しがある日には、池の色の色純度が高まり、色は薄めになります。日差しがない日は、池の色合いが深まって彩度は落ちます。微風でも水面にさざ波が立ち、青が表現しにくくなりますが、森に囲まれているので無風の瞬間が生じます。そのチャンスを狙いましょう。池の色合いは、事前の雨や当日の天候などによって日ごとに違うので、事前にイメージした色合いでの撮影は難しいです。当日そこで出会った色を活かす撮影を行なう方が良いでしょう。


https://pashadelic.com/photo?id=1014333

Yasuhiro Rikihisa / PASHADELIC

白髭の滝

白金温泉郷のど真ん中に位置する地下水が流れ落ちる滝です。美瑛川源流域の青と滝の白のコントラストが見事です。撮影位置は基本的に美瑛川の谷をまたぐ橋の上だけです。沢登りをして行く川岸のポイントもありますが、美瑛川の青との対比を考えれば、俯瞰撮影が可能な橋の方が向いています。

滝の面の向き、渓谷の深さ・急峻さの兼ね合いで、真夏の昼間であっても光は入ってきません。晴れの日にはシャドー部とハイライト部のコントラストがきつくなり、絵作りではHDR的な表現などトーン表現に一工夫が必要です。曇りや雨の日には、逆に美瑛川の冴えたブルーリバーが出にくくなります。きれいにトーンと色合いのバランスを取るためには、RAW形式で写真データを保存して、帰宅後じっくりとパラメータを調整しながら現像し直すのがベターです。


https://pashadelic.com/photo?id=1034495

azure / PASHADELIC

ケンとメリーの木


https://blogs.adobe.com/creativestation/files/2018/05/AdobeStock_86922392.jpeg

san724/Adobe Stock

旭川から美瑛・富良野方面に向かう国道から比較的近い場所にあるポプラの木です。樹高も高く見事な木ですが、周囲に他にうまく使えるランドマークがないため構図の取り方にひと工夫が必要かもしれません。近隣の展望台からは、やや俯瞰気味で狙えます。西向きとなるので夕焼けとの取り合わせを撮影できる場所でもあります。

新栄の丘

美瑛らしい丘の真ん中にある展望公園で、どちらの方向にカメラを向けても美瑛らしい風景が狙えます。十分な広さの駐車場があり、車でのアクセスも良いです。東側に大雪連峰があるため、光線条件を考えると午後のほうが山々を背景に使いやすいでしょう。晴れでいい表情の雲がある日には、空の広さを全面に出した撮影には絶好のポイントでしょう。アングルの上下方向の変化を出すために脚立があると嬉しい場所です。

移動の効率の点では、新栄の丘から四季彩の丘に回る順番の方が距離が少ないのですが、四季彩の丘で花本来の色を活かした撮影を行う場合には、太陽の光の色温度が高い14時までに終わらせる方がベターです。実際の移動の時間を見て新栄の丘を後回しにした方が良いケースもあるでしょう。そういった場合にはどこかで少し時間を使って新栄の丘で夕景を狙う手もあります。


https://pashadelic.com/photo?id=1013240

Yoshioka Hiroaki / PASHADELIC

四季彩の丘

5月末から10月頭まで種々様々な花が咲き、撮影の題材に困らないスポットです。園内に丘のうねりがあり、花畑を活かした構図をまとめやすいスポットです。中途半端な構図とならないよう、花を単に色合いのモザイクの一つとして使うか、花の形を作画に活かすか、はっきりと切り分けたフレーミングを行いましょう。画面の締まりを出すには、花畑の間を通る広めの通路を目立たなくするポジション取り・構図が必要なので、花畑の縁に近づいた位置から撮影を行ないましょう(もちろん花畑に踏み込むのは厳禁です!)。奥行きを表現するには広角レンズ~超広角レンズでやや高めのポジションからの撮影が適しており、作例写真もこのパターンを使って撮影しています。

また多少天気が悪くても大胆に花のアップを使うことで、天候にあまり左右されない撮影が可能です。むしろ薄い雲越しの柔らかい光の方がコントラストが立ちすぎませんからね。撮影上の難点としては観光客の多さがあり、人自体を風景にする、被写体の陰に隠す、ぼかす、NDフィルター+長時間露出といった工夫が必要です。


https://pashadelic.com/photo?id=1034496

azure / PASHADELIC

いかがでしたか? 旅行前にしっかりとした計画を立て、納得のいく写真を撮影してみてくださいね。

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TOP画像:Takafumi Ooi