ベテランほど知らずに損してるPhotoshopの新常識(10) Photoshopマジックの奥義「コンじる」の進化

連載

ベテランほど知らずに損してるPhotoshopの新常識

「コンテンツに応じて拡大・縮小」「コンテンツに応じて塗りつぶし」などの機能をはじめ、スポット修復ブラシツールのオプションにも出てくる「コンテンツに応じる」などを総称して「コンじる」と呼びます。

従来、時間と手間がかかった作業を非常に短時間で、そして精度が高く仕上げられるようになっているPhotoshopマジックを体系的に解説します。

コンテンツに応じて拡大・縮小

まずは、こちらのサンプルから。

https://blog.adobe.com/media_25f0c202d8b515678c79a7dc0ee600d212a4102a.gif

上の画像を下のようにしたいとき、おそらく次のように行うでしょう。

  1. 右の人物を切り抜く
  2. 左の演台の部分を変形
  3. 切り抜いた右の人物を移動し、馴染むように合成
  4. カンバスサイズを調整

それなりに手間がかかる作業です。

【友情出演:佐藤 孝行(ロゴ・アンド・ウェブ)】

「コンテンツに応じて拡大・縮小」の実行手順

「コンテンツに応じて拡大・縮小」機能を使うと、次のように操作できます。

  1. 対象レイヤーが「背景」レイヤーの場合には、レイヤーのロックを解除する
  2. [編集]メニューの[コンテンツに応じて拡大・縮小]をクリック
  3. レイヤーに表示されるハンドルをドラッグする

非常にスピーディに、そして違和感なく仕上がります。

特定の領域を保護

「コンテンツに応じて拡大・縮小」はを認識します。しかし、横を向いていたり、ダイナミックに踊っている場合などには認識できません。一方、いくつかの建物が並んでいる写真で「この建物のパースだけは変えたくない」ときなどには、「コンテンツに応じて拡大・縮小」で特定の領域を保護することができます。

  1. 保護したい箇所を選択範囲にする
  2. 新規チャンネルとして登録する
  3. [編集]メニューの[コンテンツに応じて拡大・縮小]をクリック後、オプションバーの[保護]のポップアップから、記録したアルファチャンネルを選択
  4. レイヤーの変形を行う

【補足】アルファチャンネルの作成(チャンネルとして登録)

選択範囲をチャンネルとして登録したものを、Photoshopでは「アルファチャンネル」と呼びます。アルファチャンネルを作成するには、選択範囲を作成後、次のいずれかを実行します。

スキントーンを保護

オプションバーの[保護]の右側に[スキントーンを保護]という人型のアイコンがあります。このアイコンをクリックすると、肌色に近いトーンが保護されます。

人物を保護するとき、補助的に用いましょう。

引き伸ばしにも利用できる

[コンテンツに応じて拡大・縮小]は、当然ながら拡大時にも利用できます。optionキー(Altキー)を押しながら左右のハンドルをドラッグすると、両方向に伸びます。

コンテンツに応じた塗りつぶし

カンバスの拡張

この連載の第1回「あ、それ、今のPhotoshopならこうします!」にて、[切り抜きツール]を利用したカンバスを拡張を紹介しました。

従来の[カンバスサイズ]コマンドを使う方法と比べると、“このくらい”という感覚で広げることができます。

[塗りつぶし]コマンドの「コンじる」を使ってスキマを埋める

拡張したカンバスの領域を“埋める”には「コンテンツに応じた塗りつぶし」を利用します。

  1. 選択範囲を作成する
  2. [編集]メニューの[塗りつぶし]をクリック
  3. [塗りつぶし]ダイアログボックスで[内容]に「塗りつぶし」が選択されていることを確認して[OK]ボタンをクリック

うまくいかないとき

「コンテンツに応じた塗りつぶし」を利用する際、意図しない箇所が複製されてしまう場合には、レイヤーマスクを使ってレイヤーの一部を非表示にしてから実行します。

[スポット修復ブラシツール]でレタッチする

「コンテンツに応じた塗りつぶし」は、いわば[スタンプツール]の自動化版。意図せず、不要な領域が複製されてしまうことがあります。

一方、[スタンプツール]は、テクスチャーやグラデーション上で実行すると、馴染みにくい傾向があります。

そこで使いたいのが[スポット修復ブラシツール]。Photoshop CS2からあるツールですが、使っている方は少ないようです。

使い方はカンタン。

  1. ブラシサイズを調整
  2. 消したい箇所をクリック(またはドラッグ)

集中力を必要とするスタンプツールでの作業に比べ、ラフに操作してもあっけないほどキレイに仕上がります。

ブラシツールの調整には、この連載の第1回「あ、それ、今のPhotoshopならこうします!」にて紹介した「ブラシプレビュー」を利用しましょう。

[スポット修復ブラシツール]とコンじる

[スポット修復ブラシツール]を選択時、オプションバーの[種類]に「コンテンツに応じる」オプションが選択されています。色合いを合わせたり、また、周囲と馴染むように調整してくれるというオプションなのです。

カンバスの拡張と同時にコンじる

[切り抜きツール]を選択時、オプションバーにある[コンテンツに応じる]オプションをオンにすると、カンバスを拡張するとき、拡張した領域に対して「コンテンツに応じた塗りつぶし」を実行できます。

図解すると、このようになります。

[スポット修復ブラシツール]をスマートオブジェクトに対して利用する

「コンテンツに応じて拡大・縮小」、「コンテンツに応じた塗りつぶし」はスマートオブジェクトに対して実行することはできません。

それは当然としても、[スポット修復ブラシツール]の便利さを知ってしまうと、なんとかスマートオブジェクトに対して実行したいと思うことでしょう。

スマートオブジェクトに対しても、次の手順で[スポット修復ブラシツール]を利用できます。

  1. スマートオブジェクトを設定したレイヤーの上に、新規レイヤーを作成する
  2. [スポット修復ブラシツール]を選択し、オプションバーの[全レイヤーを対象]オプションをオンにする
  3. 消したい領域をドラッグする

[全レイヤーを対象]オプションをオンにして実行すると、その結果は新規レイヤーに描画されるのです。

なお、このテクニックは『Photoshop 10年使える逆引き手帖』の著者、藤本 圭さんに教わったものです。

[コンテンツに応じた移動ツール]

カンバスの大きさは変更せず、人物だけを移動させたい場合には、[コンテンツに応じた移動ツール]が役立ちます。切り抜いてから合成という手間を踏まず、スピーディに対象となる人物などを移動できます。

  1. 移動したい領域を選択範囲にする
  2. [コンテンツに応じた移動ツール]を選択し、移動したい箇所をドラッグする
  3. returnキー(Enterキー)を押す

まとめ

「コンじる」機能は、次のツールやコマンドで利用できます。

Photoshop CCをお使いであれば意識する必要はありませんが、それぞれの機能が実装されたタイムラインを提示しておきます。

PhotoshopマジックからAdobe Senseiへ

Adobe Community Evangelistの境 祐司さんが、PhotoshopでのAI機能全体をまとめられているので紹介します。

「コンテンツに応じる(コンじる)」は「Content-Aware」の対訳です。

Adobe Photoshop AI機能の歴史 Ver.2

2008〜2016年10月(Adobe Magic 時代)→2016年11月以降(Adobe Sensei)
AI機能の特性を理解して、Photoshopを習得#AdobeSensei #Photoshop

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※現在のPhotoshop(& XD)講座は本日、販売終了となります
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— Creative Edge 公式 (@commonstyle) 2018年3月29日

過去に「Photoshopマジック」と呼ばれていたものは、現在「Adobe Sensei」となっていますが、これらは、アドビのAIフレームワークの総称です。

今回、ご紹介した「コンじる」も、Adobe Senseiによって日々賢く、スピーディに処理されるようになっています。