デザインリーダーとして成長するための4つのチャレンジ | アドビUX道場 #UXDojo

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エクスペリエンスデザインの基礎知識

優れたデザイナーは、いつかチームやプロジェクトのリーダーを任せられるようになるでしょう。それは胸が高鳴る機会です。では、その準備はできているでしょうか?リーダーになれば、これまで十分に伸ばせなかったスキルが求められるかもしれません。また、乗り越えるべき課題も、その役割に特有のものになるでしょう。

チャレンジ1: チームを適切な状態に保つ

優れたデザインリーダーは、優れたパーティーの主催者と似ています。チームが働く環境を整え、そこに集まる目的を示したら、パーティー!(すなわちプロジェクト)を始めるのです。環境を整える方法を学ぶのは、実験と柔軟性が求められます。異なるチームそれぞれのニーズや働き方やその他の好みに応えるためには、現場での考察と、うまくいっていないことを調整しようとする前向きな意思が必要です。

Googleは、チームを成功させる主要な条件が心理的な安全性であることを発見しました。ハーバードビジネススクールの教授Amy Edmondsonは、これを次のように定義しています。「チームが発言者を恥ずかしがらせたり拒絶したり罰したりしないと、自信を持って思える感覚。お互いの信頼と尊敬により形作られる雰囲気の中で、メンバーが自分らしく振舞うことに不安を感じないチームの状況を表している」。リーダーとして求められる役割は、この安全性を実現する振る舞いの模範となることです。

また、チームでは、期待と責任が明確にされていることが求められます。リーダーは、チームの目標を設定し、チームメンバーひとりひとりが自分に期待されていることを理解するよう努めなければなりません。目標達成への道程の判断はそれぞれの人に任せましょう。やるべき作業を指示するのではなく、達成すべき目標を与えるのです。チームメンバーに対する自由と管理のちょうど良いバランスを見つけるのは葛藤を伴う行為です。メンバーは、自分の役割が明確で、過度な干渉ではない支援を受けていると感じられるべきです。

チャレンジ2: 指示するべき時と一歩引くべき時を知る

個人としてプロジェクトに貢献する立場から、リーダーとしてチームを引っ張る役割へ移行すると、制作に没頭してきた実践的なデザイナーには不自然に感じられるかもしれません。つい気合が入ったり、作業に加わりたいという感覚はしばしば表面化するでしょう。なにしろ、デザインスキルに秀でていて、それを使うことを楽しんでいたのですから。

作業に深く関わることは魅力的かもしれませんが、一歩引いて、チームに大半の仕事を任せることが、メンバーの実践からの学びの助けになります。同時に、締め切りや品質の問題などで必要な時が来れば、いつでもギアを切り替え作業に加わりチームをサポートする姿勢は、持ち続けるべき大事な資質です。それ以外の時間は、プロジェクトが失敗することなくメンバーの成長の機会になるように、リスクを計算しそれを引き受けるために使います。

リーダーの役割の一部はプロジェクトの「品質管理」です。そして、何が「十分に良い」のか最終的な発言をします。つまり、どこに深く関わるべきかを選択し、それを適切なタイミングで行わなければなりません。意味のあるフィードバックを与えられるように十分な時間を取ってレビューを行い、またチームには制作物を改善する余裕を与えましょう。

チャレンジ3: 有効な指導スタイルを見つける

作業を説明し、進め方を教えることは、リーダーに特有のスキルです。そして、自分に合った効果的な指導スタイルを見つけるには訓練が必要です。Ben Hollidayがまとめたように、上級者のデザイナーであるということの一部は、「他の人に教えたり指導するために、自分の作業を中断できることです。簡単に聞こえるでしょうが、これまでに一緒に働いた人のほとんどは、これを上手くできていませんでした」

指導スタイルの習得には、チームメンバーへの最適なフィードバックの伝え方を探ることも含まれます。リーダーになりたての人は、相手の気持ちを傷つけることを恐れ、建設的なフィードバックを述べることを避けがちです。フィードバックする際は、率直さと思いやりのちょうどいいバランスを見つけたいところです。Kim Scottは、リーダーがそのバランスを見つけるための「革新的誠実さ」のフレームワークを開発しました。鍵とされているのは、個人的に気遣い、率直に伝えることこそが必要、という点です。

指導や評価の技術を磨くのは、しばしば一生涯の努力になります。成長する余地がたくさんある領域で、その場の状況や相手に応じてスタイルを適合させていくことになるためです。どんなフィードバックだったとしても、リーダーの意見の根拠を理解したり、達成目標に対する作業評価をする役に立つでしょう。的確な質問をする、規範的な振る舞いをする、役に立つリソースを共有する。これらはどれもチームを助ける優れた手段です。

チャレンジ4: 一連の人の管理作業について学ぶ

リーダー役になることは嬉しい昇進ですが、一方で、ゼロからの出発のように感じられる場面もあります。自身の限界と、多くの学ぶべきことの存在を認め、リーダーとしての心構えを育てましょう。

企業経営について多くの著書を書いたTom Petersは、「リーダーはフォロワーをつくるのではなく、より多くのリーダーを育てるものだ」と述べています。チームメンバーのキャリアやプロとしての成長を導き支援するという、リーダーとしての責任に順応するには時間がかかる行為です。書籍、カンファレンス、ポッドキャスト、記事など、これまで自身の成長に役立った手元のリソースをチームと共有するのは良い考えでしょう。

新米リーダーが驚くことのひとつは、人の管理にかかる時間の多さです。例えば、採用、書類の確認、メンバーとの個別面談、仕事の評価などを行います。実践的なデザイナーからこうした活動を行うリーダーになることは、時間の使い方の調整が必要になることを意味しています。The Manager Tools Basicsのポッドキャストは、人の管理の方法を学ぶための優れたりソースのひとつです。

リーダーは最後に食べる

リーダとして成長することは、チームやプロジェクトが必要とするものを、自分が必要なものよりも優先するようになることです。もしくは、少なくとも、自分の望みとのちょうど良いバランスを見つけることです。これは容易に学べることではありませんし、時には辛いこともあるでしょう。しかし、Simon Sinekが言うように、「リーダーシップは他人に奉仕するという選択」です。そして、それこそがリーダーとし得られる究極の報酬なのです。

この記事はTackling the Challenges of Growing into a Design Leadership Role(著者:Linn Vizard)の抄訳です