広報誌制作はここで学ぶ、はじめてのInDesign(1)内製化するためにInDesignを使おう

連載

広報誌制作はここで学ぶ、はじめてのInDesign

広報誌をどのように作っていますか?

各自治体が発行している印刷物の一つに「広報誌」があります。制作自体は外部に発注しているところもあれば、内製化しているところもあると思いますが、最近では内製化しているところが増えてきているのは間違いのないところです。その理由としては、

など、さまざまな理由が考えられますが、なんと言っても「コストダウン」できることが一番大きなポイントでしょう。広報誌にかけることのできる予算が少なくなってきている昨今、内製化してコストダウンしたいのは、どの自治体でも同じだと思いますが、必ずしもメリットばかりではありません。デメリットとしては、

などが挙げられます。このように、確かにデメリットもありますが、うまく内製化できれば、そのメリットは大きなものになります。実際に成功している自治体は数多くありますので、どのようにDTP化を行うかを間違えないよう、成功事例にならって実践していくのがお勧めです。

なお、成功事例として埼玉県三芳町の「広報みよし」をご紹介します。「広報みよし」では、印刷以外を完全に内製化したことで、大幅にコストダウンを実現しました。コストダウンしたことで、2色刷りからフルカラー化への移行も実現し、さらに写真撮影から取材、企画、デザイン・レイアウトまでをこなし、広報誌の各種コンクールに何度も入賞を果たしています。

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「広報みよし」の特集ページ。写真を効果的に使い、読者が「読んでみよう」と思うような魅力的な誌面作りを実現している

内製化を成功させるために

DTPツールの選択

DTPを内製化するためには、DTPソフトの操作を習得する必要があります。ソフトウェアの操作に関しては、何度も触って覚えていただくしかないのですが、疑問点が出てきた時に、その疑問点を解消できるような情報やサポートがあると、安心して導入できます。Webサイトで公開されたサポート情報やヘルプ、学習コンテンツをはじめ、さまざまな関連書籍等も参考になります。また、場合によっては専門のトレーナーにレッスンを受けても良いでしょう。やり方はいろいろありますが、疑問点・問題点が出てきた時に、できるだけサポートの多いソフトウェアを使用するのがお勧めです。

InDesignをおすすめする理由

現状、広報誌制作に用いられているソフトウェアはいくつかありますが、DTPソフトを使ったデザインにはAdobe InDesignをお勧めします。InDesignはプロ用のソフトウェアですが、広報誌制作の現場でも多く使われており、既に実績もあります。これまでは、他社のレイアウトソフトを使用してきた自治体も多くありましたが、競合のソフトウェアの1つが、2016年12月で販売を終了したこともあり、現在はInDesignが最も有力な選択肢となっています。また、同じAdobe社のIllustratorを使って制作している自治体も見受けられますが、ページ物を制作するのであれば、やはりInDesignが適しており、作業時間の短縮にも効果があります(Illustratorは、作図やイラスト等、デザインパーツを制作するのに向いています)。

最新版を利用する理由

なお、既にAdobeの製品を使用している方でも、古いバージョンとなるCSを使用している場合は、最新のバージョンであるCC(Crative Cloud)の使用をお勧めします。CCユーザーは、チャットや電話相談といったサポートを無制限に受けることができるため、操作につまずいた時でも安心です。

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Adobe InDesignのラーニングページ。学習用のチュートリアルや、トラブルシューティング、ヘルプも充実しており、さまざまな疑問点を解消することができる。 https://helpx.adobe.com/jp/support/indesign.html

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筆者が運営しているサイト『InDesignの勉強部屋』。InDesignの使い方やTips、書籍やプラグイン等のInDesignに関連する情報を調べることができる。キーワード検索も可能。 https://study-room.info/id/

誰でも制作ができるようにするには

例えば人員の入れ替え発生時……

DTPソフトウェアの操作を習得したとしても、特定の人しか使えないようだとうまく作業が回っていきません。ご存知のように、広報誌を担当される方は、数年ごとに変わっていくことが多いためです。担当者が変わるたびに、ソフトウェアの操作を一から学び直していては制作作業もうまく進んでいきません。そのため、ソフトウェアの操作があまり明るくない人でもある程度は作業ができるような「ルール」と「フォーマット」を作っておく必要があります。裏を返せば、きちんとした「ルール」と、誰でも作業しやすいように作り込んだ「フォーマット」があれば、スムーズな運用が可能になるわけです。

ワークフローのルールを決める

「ルール」は、写真撮影や取材を誰が担当し、原稿を誰が書くかといった作業分担の振り分けにはじまり、デザインやレイアウトを誰が行うのか、また原稿はどのような書式で、どのようなフォーマットでいつまでに記述するか、校正は誰が担当するのか等、ある程度きちんと決めておく必要があります。もちろん、これまでも同様のルールはあったと思いますが、新しく内製化する場合や、作業方法を見直す場合には、新しいワークフローに併せて再検討する必要が出てきます。時間を節約し、より良い誌面を作成するためにも今一度、見直してムダを省くと良いでしょう。

ベースとなるフォーマットを準備

「フォーマット」は、ソフトウェアの操作にあまり慣れていない人でも作業がしやすいように作り込んでおくのが理想です。例えば、「特集ページ」「お知らせページ」「情報ページ」等、あらかじめ目的に応じたページの雛形を作っておくようにします。できれば、テキストを流し込んでワンクリックすれば、ある程度、形になるようにしておくと良いでしょう。また、自動的にノンブル(ページ番号)や柱が作成されるといった機能も設定しておきます。さらに、あらかじめ使用可能なカラーやフォントを指定しておくのもお勧めです。他にも、あらかじめ設定しておくと良い項目はいろいろとありますが、実際の作業に関する詳細は次号以降にご紹介していきます。

フォーマットを提供します!

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sample A

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sample B

これらは、InDesignで作成した特集ページを想定したサンプル(雛形)です。ノンブルや柱をはじめ、ワンクリックするだけで書式が設定できるスタイル機能等、さまざまな設定を適用してありますが、あくまでも土台としてのサンプルファイルですので、季節に応じたカラーを適用したり、魅力的な写真をふんだんに使用したり、ワンポイントでイラストを挿入する等して、素敵なページに仕上げてください。

以下のURLからダウンロードできます(ダウンロードファイルの画像は削除し、グレーで表示してありますのでご了承ください)。

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サンプルファイルAをダウンロード

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サンプルファイルBをダウンロード

いずれにせよ、操作に慣れていない人でも安心して作業ができるようなフォーマットにしておくことが重要です。そうすることで、慣れていない人でも作業を続けていくことができ、だんだんとソフトウェアを使いこなせるようになっていくというわけです。もちろん、操作ができる人ができない人に教えるというのも重要です。つまり、「人が変わっていっても、問題なく制作を回していくことができる」ような環境を構築していくようにしていくということですね。とは言え、最初にフォーマットを作成するためには、ある程度の知識も必要です。次号では、InDesignでどのようなことができるのかをご紹介します。