デザイナーの視点1:DRAFT 福澤卓馬 氏(JAGDA新人賞2018)「商品をどういう存在にするか」を突き詰めるプロセス

by Maiko Nakui

Posted on 07-20-2018

時代を揺さぶる影響力を持ったクリエイターから「これからのデザイナー」にとって必要となる視点を探りつつ、その仕事を紐解いていきます。

公益社団法人日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)が選出するJAGDA新人賞2018が発表されました。
JAGDAは国内のデザイナーが多く在籍する、アジア最大規模のデザイン団体。次世代のデザイン界を牽引する新人(39歳以下)3名に授与されます。毎年注目度も高いこの賞は、グラフィックデザイナーにとって最高にして最大の登竜門として広く認知されています。

今回受賞されたのは、福澤卓馬さん(ドラフト)、花原正基さん(資生堂)、金井あきさん(コクヨ)、の3名。まずはデザイン会社の株式会社ドラフトにお邪魔し、アートディレクターの福澤さんにお話を伺いました。

JAGDA新人賞2018

福澤卓馬 FUKUZAWA Takuma | 1981年東京生まれ。2006年多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。同年ドラフト入社。ADC制作者賞(2017)JAGDA新人賞(2018)

ドラフトの仕事は業界内でも一目置かれます。代表の宮田識さんを筆頭に、広告や販促の企画/制作、自社ブランドD-BROSの運営。グラフィックデザインを中心に多岐にわたる活動があります。業界では「あのドラフト」と言われるほどの有名オフィス。
DRAFT ARCHIVE | http://draft.jp/archive/
福澤さん:「とはいえ最初は先輩方の手伝いばかりでした。Photoshopで写真を切り抜きまくってましたよ。最初は大変だったけど、だんだん仕事の楽しみ方が分かるようになってきた」

「商品をどういう存在にするか」を突き詰めるプロセス

福澤さんの代表的なプロジェクトとして「生茶」のブランディングがあります。この製品自体、大きくリニューアルされたことにお気付きの方も多いのでは。福澤さんご自身も、特に印象強い仕事としてこのプロジェクトを挙げています。

生茶 キリンビバレッジ株式会社 | http://draft.jp/works/

国内のペットボトル緑茶戦争の中で、生茶は販売を継続するかどうかの判断を迫られていたと言います。販売終了の選択もあった瀬戸際の中で一念発起でリブランドすることになったものの、福澤さんの印象は…?
福澤さん:「正直難しいと思いました。既に浸透している生茶のイメージがあり、ブランドが強いだけになおさら立て直しは難しいと感じた」

大きく変えよう。ということになり、生茶そのものである茶葉の抽出製法、最終的な味の確定に至るまで、開発段階から深く関わりメーカーと共に作り上げ、完全なるリニューアルを果たしたそう。
福澤さん:「まず中身から変えました。味をどうしていくかから考えた。飲んでみたら、新しい姿が見えたんです。そこからデザインが動き始めました。」

手がけるブランドの商品開発から入り込んでいくというスタンスはかなり特徴的と言えます。その後パッケージに着手します。キリンにしかできない、キリンならではのパッケージを。最終形ができ上がるまで、何と1年半〜2年ほど試行錯誤が繰り返されます。**
福澤さん:「とにかく新しいことを!という発想から、最初は商品名をエンボスにしてみたり、相当な試行錯誤がありました。」**

生茶 初期段階のデザイン

最終形が完成するまで約10回の検討プロセスを経て、2018年3月、新しい生茶は誕生しました。
豊かで洗練されたデザイン、シンプルの中から感じる重厚感は、1グレード上の緑茶飲料であるかのように感じさせます。福澤さん自身、このプロジェクトに関わる中で日本茶のことについて深く学び、「面白い!」と感じるようになったそう。生茶から派生して実施された次の企画でもそんな思いが見えてきます。

お客さんとの接点を作る場

“知るとお茶は、楽しくなる。” をコンセプトに、期間限定の体験企画として実施された施設「お茶のいろは by Namacha」。日本茶の奥深い世界を味わうことができる施設です。(体験企画は2018年5月6日を以って終了しています)

お茶のことを知る体験企画。壁面は福澤さんによるスケッチ | http://draft.jp/directors/

施設の内装

カウンター奥にはオリジナルの茶箱が並ぶ

お土産として購入可能のお茶缶シリーズ

福澤さん:「商品をどういう存在にするかを突き詰めるプロセスから入り込んでいます。クライアントと一緒の感覚でプロジェクトに関わらせてもらっているのはありがたいこと。」

クライアントと対等に。と言えるのは、信頼や過去の実績によるものに他なりません。グラフィックデザインの枠に囚われず、商品そのものの有様からデザイナーとして関わりを持っていくスタイルは「これからを生きるデザイナー」に必要な視点となるものです。元来それを基本スタイルとして貫き通すドラフト。過去のプロジェクトからもその姿勢を感じることができます。
DRAFT ARCHIVE | http://draft.jp/archive/

JR渋谷駅、山手線外回りホームにて期間限定カフェ「NAMACHA GŌRI CAFÉ」がオープンしています。高橋一生さんのCMでおなじみの「生茶氷」を体験できるポップアップカフェ。連日の猛暑に生茶のかき氷が沁み渡ります・・・渋谷にお立ち寄りの際はぜひ、生茶氷でクールダウンを!(〜2018.8.16まで)

オリジナルブランド「D-BROS」での活動

D-BROSはドラフトの完全オリジナルブランドです。現在は銀座の新名所、GINZA SIX 4階に店舗を構えています。その立ち上げ、プロダクトのデザインも福澤さんの仕事です。
**福澤さん:「クライアントワークでない分、自由にアイディアを出しながら制作しています。」
**ドラフト所属のデザイナーが個性あるデザインを展開しています。

D-BROS at GINZA SIX | http://db-shop.jp/ginza/

数ある個性的な商品の中でも特徴的なのが、動物カレンダーシリーズ。日々を楽しく、がテーマであるこちらのカレンダーにはシールが添付されています。1日1シールで、その人オリジナルの面白い動物が完成するというストーリー性のある作品。「生活の中の余裕を楽しむ」そんな思いで制作されたそうです。

こっちを見るのは誰…?目を入れることで命が吹き込まれる

1日1シールでオリジナルのデザインが完成

数ある製品の中でも特にインパクトが強かった「家紋本」。日本人にとっては馴染みの紋様も、見直してみると信じられないくらい精巧に仕上げられたグラフィックデザインでした。日本古来のロゴデザインの概念と、質の高さに改めて気付かされます。福澤さんは家紋の由来とストーリーを全て取材し、1冊に纏め上げたそうです。

D-BROS GINZA SIX | KAMON 家紋本

KAMON 風呂敷 | 家紋名は文字の名手、木之内厚司氏によるもの

KAMON 扇子 | ひとつひとつ、職人による手作業の逸品

デザインはたのしい

デザインは、人と人、人と社会の間にしあわせなコミュニケーションを生み出す大きな力を持っています。
またそれを、上質なものに高めていくためにあるのだと考えます。

私たちD-BROSは、それを信じています。

ブランドのコンセプトとして掲げられている言葉です。機能性が満たされているだけより、それがデザインされていればもっと楽しい。真摯にデザインを生み出すドラフトの素の表情が見えるようなメッセージです。季節ごとに変化するラインナップも楽しいD-BROSのグッズ。銀座に立ち寄った際は直接触れてみてください。
http://d-bros.jp

仕事をコンパクト化させない

福澤さんのお話の中で、特に**「油断していると仕事はコンパクト化してしまう」**という言葉が印象的でした。パターン化したり、効率を求めたりとなるべく合理的に仕事を進めることが良しとされることが多い中で、ドラフトの仕事は真逆を行く作り込み。とことん試行錯誤し “これ以上ない” という段階まで突き詰める姿勢。とても気付きの多いインタビューとなりました。

最近使ってみたというAdobe XDでのプロトタイプを見せてくれた

現在、代官山 蔦屋書店にて、福澤さんの作品が展示されています。

福澤卓馬「JAPAN ELEMENTS」

会期:2018年07月01日(日) – 2018年07月31日(火)
会場:蔦屋書店2号館1階建築・デザインフロア
http://real.tsite.jp/daikanyama/event/2018/07/book-box-no50-japan-elements.html

さらに、7/9(月)より、大阪にてJAGDA新人賞展が行われています。ほか、各地を巡廻予定とのこと。
お近くで開催の際はぜひお立ち寄りください。

JAGDA新人賞展2018 | 金井あき・花原正基・福澤卓馬(大阪展)

受賞者3名による特設サイト:https://jagda新人賞2018.com

JAGDA新人賞受賞者3名のうちの1人目として、DRAFTの福澤さんを取り上げました。次回は、資生堂のインハウスデザイナー、花原さんにフォーカスを当てます。

Topics: クリエイティブ

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