広報誌制作はここで学ぶ、はじめてのInDesign(3)InDesignを使いこなすヒント

連載

広報誌制作はここで学ぶ、はじめてのInDesign

今回は広報誌制作にInDesignを使用し、使いこなすための「ヒント」について、ご紹介させていただきます。

割付用紙の作成

グリッドのプリント

InDesignでは、グリッドの書き出しやプリントができます。そのため、あらかじめ作成したフォーマットごとにグリッドをプリントして割付用紙として使用すると便利です。割付用紙を作成しておくことで、原稿を作成する際に文字数の計算がしやすくなり、さらにはどのようにレイアウトしたら良いか、実際に作業をする前に考察しやすくなります。プロのデザイナーも、PCに向かって作業する前には、サムネイル(アイデア出しの段階で描くスケッチ)やラフスケッチ(サムネイルで描いたアイデアをさらに形として落とし込んだもの)と言われる「紙に手書きで描いたもの」をもとに、ソフトウェアを使って形にしていきます。

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InDesignのでは[ファイル]メニューから[グリッドのプリント・書き出し]を選択することで、グリッドがプリントできる。

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どのようなレイアウトにするかを、図のように簡単でも良いので、実際に割付用紙に書いてみるとイメージがつかみやすい。

素敵なデザインにするために

良いものをマネする

InDesignは、プロ用のソフトウェアなので、どのようなデザインの広報誌やチラシでも問題なく作成できます(もちろん、InDesignだけではなく、IllustratorやPhotoshopも使用します)。テキストが写真を回り込むように組んだり、人物写真を切り抜いて使用したり、立体感のある影をつけたり、背景のオブジェクトが透けるような効果を適用したりと、ありとあらゆることが実現できます。とは言え、技術的な操作はできても、なかなか最初から素敵なデザインに仕上げるのは難しいかもしれません。なので、最初は「素敵だな〜」と思う印刷物を参考にマネをしてみましょう。世の中には、プロのデザイナーが作った素敵な印刷物があふれています。街を歩けば、いたるところにポスターやチラシを発見することができるはずです。良いと思ったデザインを参考にして、レイアウトや使う色を考えてみてください。きっと、これまでより素敵なデザインに仕上がるはずです。

「なぜこのポスターは素敵なのか」「なぜこのお店のチラシを見ると、商品を買いたくなるのか」など、どういった部分が優れているのかを考え、参考にしつつ、自分なりのエッセンスを加えてみましょう。また、デザイン関連の書籍に目を通すのも良いでしょう。広報誌も、なかなか最初から素敵なものにするのは難しいので、少しづつ良いものにしていくよう改善していくのがコツです。他の自治体の広報誌も参考にして、徐々に素敵なものにしていってください。

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公益社団法人日本広告協会のサイトでは、全国広報コンクールで優秀な成績を取った広報誌が表彰されている。入賞した広報誌の中身を見るためのリンクも用意されているので、参考にすると良い(リンクは全国広報コンクール2018年の審査結果)。 http://www.koho.or.jp/contest/zenkoku/2018_result.html

ドキュメントのチェックと収集

プリフライトで問題点をチェック

InDesignを導入して実際にデータを作成しても、慣れていないと、そのデータからちゃんと印刷できるかどうか不安があると思います。それは、アプリケーションの操作ができるだけではなく、印刷の知識もある程度、必要になってくるからかもしれません。しかし、InDesignには「プリフライト」という機能が用意されており、ドキュメント上の問題点をチェックしてくれます。この機能を利用することで、「データに問題があって印刷できない」といったトラブルを軽減することができます。

なお、作成する印刷物によってチェックすべき項目は異なるため、実際の作業では広報誌用の「プロファイル」を作ってドキュメントのチェックをする必要があります。とは言っても、「プロファイル」をどうやって作ればよいか悩むかもしれません。そんな時は、印刷会社に相談してみましょう。広報誌を印刷するために必要な「プロファイル」の作り方を指示してくれるか、あるいは作成(提供)してくれるはずです。

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InDesignの[プリフライト]パネル。ドキュメント内のエラー箇所が表示され、各エラー項目をダブルクリックすると、エラーのある箇所にジャンプする仕様になっている。

パッケージで必要なファイルをひとまとめに

制作したデータは「プリフライト」機能でチェックして問題がなければ、印刷会社に渡すために必要なファイル(InDesignのドキュメントファイルにプラスして、リンクファイルや欧文フォント等)をひとまとめにする必要があります。とはいえ、手作業でファイルをまとめていると、ファイルが漏れてしまうケースもあります。しかし、InDesignには「パッケージ」という機能が用意されており、ひとつのフォルダに入稿に必要なファイルを集めてくれるので安心です。「パッケージ」機能を利用することで、問題のない入稿が実現できます。

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[ファイル]メニューから[パッケージ]を実行し、表示されるダイアログに従って手順を進めると、印刷会社に入稿するために必要なファイルが収集される。

印刷会社とよく相談を

印刷じたいは印刷会社にお願いする必要があると思いますので、用紙やページ数、色数を始めとした広報誌の仕様は、あらかじめ印刷会社と打ち合わせしていることと思います。しかし、自分たちでデータを作成するとなると、それ以外にもデータを作る際の注意点や入稿方法、作業の進め方なども、印刷会社ときちんと打ち合わせをしておきましょう。また、「問題がおきた時にどうすればよいか」「こんな時はどのようにデータを作成すべきか」など、日頃から印刷会社と密に連絡を取り合って、スムーズな運用を心掛けてください。何かあったら、いつでも相談できるような信頼関係を築いておくと、いざという時に助けてもらえるはずです。

ドキュメントの校正と公開

Publish Onlineでドキュメントを公開し、校正する

作成したデータは、各部署、あるいは記事に関係のある市民の方々に内容をチェックしてもらう必要があります。現在でも、プリントしたものを直接、校正しているとは思いますが、InDesignではオンライン(Web上)で確認してもらうことも可能です。もちろん、紙にプリントしたものでチェックした方が誤植も見つけやすく、誌面のイメージもつかみやすいですが、簡易的な校正ならオンラインの方が圧倒的にスピーディに行えます。InDesignのPublish Onlineの機能を使うと、ブラウザで誌面イメージそのままの状態を確認できます。プリントしたもので確認したい方には、PDFをダウンロードしてもらうことも可能です。

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[ファイル]メニューから[Publish Online]を実行して、表示されるダイアログから[公開]を実行すると、自動的にドキュメントがアップロードされる。

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アップロードされたドキュメントは、ブラウザで表示できる。アップロード先のURLを連絡すれば、オンラインでの校正も可能だ。

PDFを書き出す

広報誌は紙に印刷して配布しますが、それ以外にも、自治体のWebサイト等から広報誌のデータをダウンロードできるようにしているところが多いかと思います。ダウンロード用のフォーマットはいくつかありますが、誰でも表示できるフォーマットとしてはPDFが一般的です。PDFはAdobeが作成した規格で、もちろんInDesignからも書き出すことが可能です。印刷用途のPDFや画面表示用のPDFなど、用途に応じたPDFを書き出すことができますが、文書の変更を許可しない設定にして、ドキュメントの内容が勝手に改変されることを防ぐこともできます。セキュリティにも配慮したPDFを書き出せるのは、大きなポイントです。

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InDesignの[Adobe PDFを書き出し]ダイアログ。[セキュリティ]を設定したPDFも作成できる。

ドキュメントのマニュアル化

誰でも作業ができるように

この連載の第1回目でも記述させていただきましたが、「特集ページ」「お知らせページ」「情報ページ」といったように、目的に応じたフォーマット(雛形)を作成しておきましょう。ページごとのデザイン要素の作成はもちろん、ノンブル(ページ番号)や柱(各ページの版面の外に入れる見出しの一種)といったページに必須なアイテムの作成、さらには使用するカラーの登録や、(見出し・リード・本文・キャプションといったような)実際に使用する書式をスタイルとして作成しておくなどすると理想的です。
さらには、各設定の内容を一覧できるようにドキュメント化し、「このような場合にはこの設定を適用する」といった作業手順を記述したマニュアルを作っておくと、なお良いでしょう。こうすることで、InDesignの操作に慣れていない人が作業しても、ある程度のスピードで作業をこなしていくことができます。そして、日々作業する中でInDesignに慣れてもらい、また分からない部分を他の方から教わることで、作業する人が変わっても困るといった問題を解消できるはずです。

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筆者が実際に仕事で作成した設定内容をドキュメント化したものの一部。使用可能なフォント一覧や作成済みの各種スタイルとその設定内容を細かく記述してあり、さらに別で作業手順もマニュアル化してあるので、これらを読めばある程度の作業はできるようになっている。

フォーマットの作成依頼

なお、フォーマットは自分たちで作成できるのが理想ですが、自信がないのであれば、最初のフォーマットのみ、外部に作成を依頼するという手もあります。そして、InDesignの操作に自信がついてきたら、自分で新しくフォーマットを作成したり、既存のフォーマットをバージョンアップさせたりするのも良いでしょう。
ただし、コンクールで入賞できるような広報誌を作るためには、読みやすく、美しくデザインするためのスキルが必要です。先に書いたように、良いものを参考にしつつ、少しづつ良い広報誌になるようパワーアップさせていくと良いでしょう。ぜひ、InDesignを使ってチャレンジしてみてください!

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