ユーザー調査を確実にデザイン改善につなげるためのアドバイス

by akihiro kamijo

Posted on 07-30-2018

連載

エクスペリエンスデザインの基礎知識

素晴らしい体験の構築は、ユーザーの理解から始まります。多くの場合、この「理解」はユーザー調査が拠り所です。ユーザー調査はデザインプロセスにおいて間違いなく重要で、ユーザーが本当に欲しているものをチームがデザインするために欠かせません。

また、適切なユーザー調査の実施に加えて、得られた調査結果を有効に活用することもとても重要です。チームが調査結果を理解し、受け入れ、対応することなくして、ユーザー調査に価値はありません。しかし、多くのチームは、ユーザー調査の結果をデザインに反映する過程で多くの問題に直面します。

この記事では、チームそしてステークホルダーと、調査結果を共有するアドバイスを紹介します。ユーザー調査とデザイン作業の架け橋となる、ちょっとしたガイドラインとしてお役立てください。

調査結果をデザイン施策に繋げるためには、次の4つのステップを経る必要があります。

  1. 期待される成果を定義する
  2. 調査結果を整理する(報告書作成)
  3. 結果を効果的に伝える
  4. 次のステップを計画する

1. 期待される成果を定義する

期待される成果の明確な定義は、ユーザー調査の基盤となります。得られた成果は、プロセス全体を導くゆるぎない指針となるでしょう。

a) ゴールを知る

明確に示されたゴールなしに実施した調査には、ビジネス上の価値は期待できません。ですから、調査を開始する前にチームのメンバーやステークホルダーと話し合い、主要なゴールを明確にしましょう。計画の段階で、ステークホルダーの知りたいことを見つけ出すため、次のような質問をしてみましょう。

こうした質問への回答を参考に、調査を戦略的に組み立てます。そうすれば、明確で的が絞られた、意義ある調査になるでしょう。

計画段階からステークホルダーを巻き込むと、ゴールの明確化に役立つだけでなく、彼らにとってその調査がより身近になります。これは、調査結果が受け入れられる可能性を高めます。

b) 良い調査概要を書く

ステークホルダーがユーザー調査で達成したいことを学んだら、調査概要を書き起こして承認を得ます。優れた概要文は結果への期待値と、以下のような項目を設定します。

c) チーム全員に調査プロセスに巻き込む

理想的には、デザインについての判断に関わる者すべてがユーザー調査に参加すべきです。チーム全員が調査プロセスに深く関与すれば、調査結果はチームにとってより価値あるものとなります。

以下は、チームをプロセスに巻き込むための実践的ないくつかのアドバイスです。

2. 調査結果を整理する(報告書作成)

実施した調査から豊富なデータを収集したら、次は主要なゴールに結びつく価値ある洞察を特定します。

a) 調査結果を資料化する

資料作成の手間を省くのは魅力的かもしれませんが、それは避けた方が良いでしょう。結果を説明する資料を何もつくらないのは誤った方針です。以下はその理由です。

優れた調査報告書の作成は、調査担当者とステークホルダーの双方に有益です。報告書はプロジェクトの資料としても役立ちます。十分な詳細と状況が記された優れた報告書であれば、プロジェクトに詳しくない者も、読んで理解できるでしょう。

b) 生の調査データをそのまま提出しない

生の調査データとは、ユーザーインタビューのレポートやユーザビリティテストの結果など、集めたすべてのデータのことです。収集した情報のひとつひとつが洞察を得たり、問題の解決につながるヒントとして非常に重要ですが、最終報告書(ステークホルダーに開示するもの)は、生の調査データをそのまま束ねたものであってはなりません。情報量は過大になりがちで、人々が調査時のメモすべてを隅々まで読み、理解することは期待できないでしょう。調査の目的は、主要な発見を特定し提示することで、事実を淡々と報告することではありません。ですから、自身が学んだことを取り出して、厳選したデータをステークホルダーに伝えるべきなのです。

生のデータを価値ある洞察に変換しましょう

報告書を作成するとき、収集したデータの一部を破棄することを躊躇しないでください。もちろん、時間をかけて収集した価値があると思えるものを捨てるのは辛いことですが、明確さを増すためには必要になります。明確さは何よりも優先されるべきことです。

c) 調査結果を視覚化する

調査の発見を文章だけで伝えることは困難です。報告書には、スクリーンショット、イラストレーション、図表などを足すことで、文章を補完して調査結果をより明瞭にしましょう。視覚的要素は伝えたいポイントをはっきりさせるだけでなく、読者にとってより興味深いものにします。意味のある視覚要素を組み入れた報告書は、文字だけのものより読みやすいのです。

注記つきの図表で文章を補う(出典:Gmail)

d) 全体を俯瞰する視点から見直す

調査報告書を作成するときに、途中で行き詰るのはよくあることです。そのような場合は、作業を一旦中止し、一歩下がります。そうすれば、調査の主要なのゴールに集中しつつ、全体像を俯瞰することができるでしょう。全体像が見えれば、より多くの情報を活かした判断を行えます。

3. 調査結果を効果的に伝える

a) 人々に共感されるように工夫する

人々が調査結果を理解し受け入れることはとても重要です。プレゼンテーションのリハーサルを行い、調査結果が説得力を伴って伝わることを確認しましょう。まず調査の背景や状況を共有し、次に得られた知見を提示して、その反応を確認します。このようして、発見が共感されるか(理解されたか?価値を認めてもらえたか?)を確かめましょう。

b) 対面して伝える

報告書に様々な情報を詰め込むことはできますが、そこには大きな制約が2つあります。

報告書を書いて送付するだけでなく、対面でプレゼンテーションを実施するべきなのは、これが理由です。その方が、プロジェクトに関わる人々が調査結果を受け入れる可能性は高くなります。

c) プレゼンテーション形式で納品する

報告書をそのまま読み上げるのではなく、「伝わるように提示する」努力を払うのがプレゼンテーションです。スライド資料とスピーチ原稿を準備しましょう。プレゼンテーションそのものが納品物のひとつとしての役割りを果たしますし、スライド資料は後で共有することができます。

d) 調査結果の伝え方を相手に合わせる

調査結果の伝え方は、相手のニーズと興味にあわせて調整するべきです。伝える対象ごとに興味の対象は大きく異なるかもしれません。経営陣は主要な発見についての簡潔な概要だけを聞きたがる傾向がありますし、実装担当者はすべての技術的側面を知りたがるでしょう。そのため、情報粒度の異なる複数のプレゼンテーションを作成するのが賢明です。

e) 調査手法を説明する

結果報告を見る人は、調査に使われた手法と、その手法を選択した理由を知りたがるでしょう。プレゼンテーション資料には、調査手法についての説明も含めましょう。事前に説明済みの場合でも、プレゼンテーションで再度説明するのは価値のあることです。全員が覚えているとは限りませんし、チームに最近合流した人もいるかもしれません。その際、仔細な説明は不要で、調査の目的と用いた手法の概要を伝えれば十分です。

f) 聞き手を引きつけ、集中させる

細かい説明ばかりのプレゼンテーションでは、聞き手は容易に興味を失います。相手を退屈させずに、十分な情報を伝えることが肝心です。集中し関心を保てるようなプレゼンテーションをすれば、その後の結果にも繋がります。

聞き手を惹きつける方法のひとつは、ストーリー形式で調査結果を伝えることです。調査結果をストーリーとして語ることは、問題をより明確に理解する助けにもなります。問題の表現、解決案の提示、どちらにもストーリーは使えます。さらに、ストーリーは、ユーザーに対する共感を育む役割りも果たします。

ストーリーを語るのは、情報伝達の手段として最も強力な方法 出典:Chelsea Hostetter, Austin Center for Design.

g) ユーザーの証言や動画を使う

聞き手を説得するには、ユーザーの課題の概要を話すよりも、実際のユーザーが課題に直面している様子を直接見せるほうが、はるかに説得力があります。

h) 肯定的な評価も加える

調査結果を伝えるときは、ユーザー体験の負の側面にフォーカスしがちです。ポジティブな評価は当たり前のことと考えて、調査報告書やプレゼンテーションには含めないことがよくあります。しかし、問題点ばかりを聞かされるのは辛いことかもしれません。問題点やユーザーの不満の長いリストを延々と聞くのが、やる気につながることはないでしょう。ネガティブな面とポジティブな面のバランスに配慮して、ポジティブな評価にも言及するようにしましょう。

i) 数値で調査結果を裏付ける

ユーザーが問題を体験したことを耳にしたステークホルダーは、ごく自然に、何人のユーザーがそのような問題に直面したかを尋ねるでしょう。その際、もし手元にデータが無ければ、その問題が重要であることを証明できません。ゆえに、主要な発見は、根拠となる数値を用意するよう心がけましょう。タスクの成功率、タスク完了の平気時間、エラー率、満足度などが、強調したいポイントを裏付ける数値として使えます。

4. 次のステップを計画する

調査報告書を作成し、適切なプレゼンテーションを行うのは重要なステップです。しかし、調査の仕事はそこでは終わりません。「次のステップは何?」が、調査結果を理解した後の自然な質問です。この問いに明快な答えを用意できなければ、デザインの改善にはつなげられません。発見した問題に対処するための、明快な計画を提案しましょう。

a) 対処すべき問題に優先順位をつける

大抵の場合、すべての問題に同時に取り組むことは不可能です。デザインを改善する際は、最も重大な問題に注力すべきです。そのため、最初の作業は、まず調査結果に優先順位をつけることです。以下の評価基準をもとに優先順位をつけましょう。

また、問題の改善に必要な労力も考慮しましょう。タスクごとに必要な作業時間を算出します。

b) 対処しやすいデザイン改善案を提示する

デザイン改善の提案をする場合は、一般的すぎたり具体的すぎたりしないよう、バランスに配慮しましょう。例えば「チェックアウトページにより多くの購入商品の情報を掲載する」という提案は、ページを再デザインするデザイナーに十分な情報とは言えません。一方、「商品概要を表形式で表示。カラムは商品ID、商品名、数量および価格とし、フォントサイズは16px」は具体的すぎます。

c) 改善項目ごと担当者を任命する

デザイン改善項目それぞれに専任の担当者を配置すると、問題が解決されやすくなります。関係者と積極的に調整し、対処すべき課題と担当者を決め、スケジュールを決定します。

d) 定常的に改善案を検証する仕組みを持つ

デザインの他の側面と同様に、調査結果も検証されるべきです。デザイン改善案の検証を適切に行う方法は、実ユーザーによるデザイン改善の評価です。ユーザー評価の結果を提供する場として、定常的なフィードバックの場を準備しましょう。適切なフィードバックの場を確立できれば、デザイン案の検証が容易になるだけでなく、ユーザー調査の有用性を示しやすくなります。

おわりに

優れたデザインは適切なユーザー調査から始まります、素晴らしいユーザー体験の創出には、デザインと調査の組み合わせが必要です。調査の担当者のデザインプロセスへの積極的な関与なくして、これを実現することはできません。

この記事はHow to Turn User Research into Smart Design Decisions(著者:Nick Babich)の抄訳です

Topics: クリエイティブ, UI/UX & Web, UI / Web デザイン

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