フォトレタッチの極意25:消し跡が目立たない消去法
Photoshop フォトレタッチの極意
風景写真を撮る時には、通行人や電線、ゴミなどの障害物はできれば排除したいものです。が、どうしてもこれらの写り込みを防げない場合には、撮影後にPhotoshopで消去していくことになります。そこで今回は、邪魔なものを消すテクニックを紹介します。解説は、レタッチャー/ライターの桐生彩希さん。「Shuffle by COMMERCIAL PHOTO」に掲載した内容から抜粋してお届けします。
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Before
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After(※クリックで拡大)
レタッチの設計
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1、写り込んだ障害物を消去する
(1)「背景」レイヤーを複製する
「レイヤー」パネルの「背景」のレイヤーを、パネル下部にある「新規レイヤーを作成」ボタンにドラッグ&ドロップして複製を作成。以降の消去する作業は、複製したレイヤーに対して行う。
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(2)「スポット修復ブラシツール」を設定する
消去系の機能は、作業が簡単な「スポット修復ブラシツール」から試すと効率がよい。①ツールパネルで「スポット修復ブラシツール」を選択したら、②「ブラシプリセットピッカー」ボタンをクリック。③消したい部分が塗りつぶしやすい大きさのブラシに設定したら(④)、⑤「硬さ」を「50%」に設定。消し跡がぼやけて目立つときは、「硬さ」の設定を大きくしてやり直してみよう。⑥「種類」を「コンテンツに応じる」に設定したら準備は完了。
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(3)消したい部分をドラッグする
「スポット修復ブラシツール」を設定したら、消したい部分よりも少し大きめにドラッグして塗りつぶす。マウスのボタンを離すと、周囲の状態に応じて障害物を検出して消去が実行される。
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(4)「パッチツール」を設定する
波に浮かぶ人影を消去する。不定形の部分を消したいので、範囲を選択して消去が実行できる「パッチツール」を使用。①ツールパネルで「パッチツール」を選択したら、②「ソース」をクリックして選択しておく。
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(5)消したい部分を選択する
「パッチツール」で消したい部分を選択。作例の場合、特徴的な連続部分(波の影)が上手くつながるかがポイントとなるので、選択時に中途半端に切れないようにしておくときれいに仕上げやすい。選択したら、背景の模様のつながりに違和感のない部分に選択範囲を移動する。消去直後は「パッチツール」の選択範囲が作られている状態なので、「選択範囲」メニューの「選択を解除」で解除しておく。
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(6)「コピースタンプツール」を設定する
模様のつながりや違和感のある部分の修整は「コピースタンプツール」で行う。①ツールパネルで「コピースタンプツール」を選択したら、②「ブラシプリセットピッカー」ボタンをクリックして、③ボケ足のある「ソフト円ブラシ」を選択。ブラシの大きさを④「直径」スライダーで調整して、⑤「調整あり」にチェックを入れておく。⑥「サンプル」は「現在のレイヤー」を選択する。
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(7)不自然な部分を修整する
「コピースタンプツール」で波の影を複製することで、不自然な消し跡(途切れている波の影)を修整。キーボードのAltキー(MacはOptionキー)を押しながら、波の影がつながりそうな部分をクリック。模様がつながるようにブラシの位置を合わせたら、少しずつドラッグして違和感のない状態にする。
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2、「トーンカーブ」で明暗を補正する
(1)「トーンカーブ」を選択する
邪魔なものを消したら、明暗をイメージに合わせて調整。作例はコントラストを補正したいので、調整レイヤーの「トーンカーブ」を使用する。「レイヤー」パネルでいちばん上のレイヤー(「背景のコピー」レイヤー)を選択し、パネルの下部にある「調整レイヤーを新規作成」ボタンをクリックして「トーンカーブ」を選択。
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(2)コントラストを調整する
夕日に輝く波の眩しさを印象的に見せたいので、ハイライトの輝きを強調するように補正する。具体的には、「トーンカーブ」に作成した右上と左下のポイント2つのうち、右上のポイントを上に移動すればOK。この操作で明るい領域が重点的に明るくなり、ハイライトが強調されるようにコントラストが強くなる。
(3)露出を調整する
ハイライトを明るくした結果、全体の露出がイメージよりも明るい状態になっている。そこで、引き続き「トーンカーブ」で露出を補正する。線グラフの中央をクリックして3つ目のポイントを作ったら、イメージする露出になるようにポイントを下に移動。これで、ハイライトの明るさを保ったまま、全体の露出を暗くすることができる。
3、「トーンカーブ」で色を補正する
(1)「トーンカーブ」を選択する
夕日の色彩も「トーンカーブ」で補正する。「レイヤー」パネルでいちばん上のレイヤー(「トーンカーブ1」レイヤー)を選択した状態で、パネルの下部にある「調整レイヤーを新規作成」ボタンをクリックして「トーンカーブ」を選択。これで、2つ目の「トーンカーブ」調整レイヤーが作られる。
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(2)「ブルー系」を調整する
目指すは、はちみつ色の色彩。そのためには、イエローの成分を調整すると効果的。そこで、「トーンカーブ」のチャンネルを「ブルー」に変更し、線グラフの中央にポイントを作って下に移動。これで全体の色調をイエローに偏らせることができる。
(3)グリーンの偏りを軽減する
(2)の状態だと少しグリーンの偏りが気になるので、(2)で使用した「トーンカーブ」で補正を続ける。チャンネルを「グリーン」に変更したら、線グラフの中央にポイントを作り下に移動。これでグリーンの成分が減少し、相対的に補色のマゼンタが強くなる。全体の色調を確認し、問題なければ完成。
さらに詳しい解説は、Shuffle by COMMERCIAL PHOTO で連載中の「風景&ネイチャー レタッチの教科書」(解説・写真:桐生彩希)に掲載されています。サンプルファイルもダウンロードできますので、ぜひ挑戦してみてください!