はじめてのAdobe XDプラグイン開発!定番のHello Worldを表示させてみよう #AdobeXD #AdobeMAX

2018年10月15日にリリースされたAdobe XD 13から誰でもXDの機能を拡張するプラグインを開発できるようになりました。開発者はXDの拡張APIを使い、JavaScriptでプラグインを開発し配布ができます。今回は定番のHello Worldを表示する簡単なプラグインを作りながら、開発方法の概要について解説します。

Adobe XDのプラグインはJavaScriptで作れる

XDプラグインの開発言語

開発はJavaScriptで行います。サポートされるJavaScriptは、ES5、ES6(ES2015)を含むモダンブラウザで動作するバージョンです。また、UIはHTMLとCSSのサブセットを使って作成でき、ReactやVueも使えます。

拡張APIを使うことで以下のようなプログラム操作が可能です。

どんなプラグインが作れる?

Adobe XDのHello Worldプラグインを作ってみよう

初めてのXDプラグインということで、アートボードに「Hello, World!」を表示するだけのプラグインを作ってみましょう。以下に手順を紹介します。

1. プラグイン開発の準備をする

XDのメニューで「プラグイン」>「開発版」>「開発フォルダーを表示」として開発フォルダー「develop」を開きます。自分で開発するプラグインは必ずこのフォルダー内に配置します。

2. プラグイン用のフォルダーを作成する

まずはdevelopフォルダーに自分のプラグイン用フォルダーを作成します。今回はフォルダー名を「myhelloworld」としておきます。

Adobe XDプラグインの開発フォルダー

3. 開発に必要なファイルを作成する

XDのプラグイン開発で最低限必要なファイルは以下の2つだけです。

manifestファイル(manifest.json)を作成する

プラグインの基本的な情報を記述するmanifestファイルを作成します。

{
  "id": "MY_HELLO_WORLD",
  "name": "Hello World sample plugin",
  "description": "定番のHello, World!を表示するプラグインです。",
  "version": "1.0.0",
  "host": {
    "app": "XD",
    "minVersion": "13.0.0"
  },
  "uiEntryPoints": [
      {
        "type": "menu",
        "label": "Say hello",
        "commandId": "helloCommand"
      }
   ]
}

その他の項目やmanifestファイルの詳細については、こちらをご覧ください。プラグインのアイコン指定やメニュー項目名の国際化などさまざまな設定ができます。

プラグインコードファイル(main.js)を作成する

XDの画面に「Hello, World!」という赤いテキストを表示する簡単なプラグインコードを準備します。

const {Text, Color} = require("scenegraph"); // XD拡張APIのクラスをインポート

function helloHandlerFunction(selection) { // メインのファンクション
  console.log("my function is called!"); // Developer Consoleに出力
  const el = new Text(); // XDのTextクラスからインスタンスを生成
  el.text = "Hello, World!";
  el.styleRanges = [ // テキストのスタイルを設定
    {
      length: el.text.length,
      fill: new Color("#FF0000"),
      fontSize: 24
    }
  ];
  selection.insertionParent.addChild(el); // XDノードツリーにテキストオブジェクトを追加
  el.moveInParentCoordinates(100, 100); // テキストオブジェクトの表示位置を指定
}

module.exports = { // コマンドIDとファンクションの紐付け
  commands: {
    helloCommand: helloHandlerFunction
  }
};

以上の2つのファイルを「myhelloworld」フォルダーに保存します。これで初めてのプラグインを動かす準備が整いました。

Adobe XDプラグインの開発フォルダーに必要なファイルを保存

4. XDのプラグインメニューから実行する

それではXDを起動してプラグインを動かしてみましょう。XDをすでに起動している場合は、XDのメニューで「プラグイン」>「開発版」>「プラグインを再読み込み」としてXDに自分のプラグインを読み込ませましょう。開発時の再読み込みは、ショートカットキー(Cmd+Shift+R/Ctrl+Shift+R)が便利です。

Adobe XDのプラグイン再読み込みメニュー

プラグインが読み込まれるとXDのプラグインメニューに自分が設定したメニュー項目が追加されます。

プラグインメニューに独自のメニュー項目が追加された状態

新たに追加されたメニュー項目「Say hello」を選んで実行してみましょう。

Hello World!が表示されたらOK

無事にHello, World!が表示されれば成功です。

開発を便利にするためのコツ

デバッグ用のコンソールを利用する

開発にはデバッグが必要です。そのためには、XDのDeveloper Consoleを使います。「プラグイン」>「開発版」>「Developer Console」を選択すると使用できます。

Developer Console

今回のプラグインを実行すると、先ほどのmain.jsに記述してある

console.log("my function is called!"); // Developer Consoleに出力

の結果として、Developer Consoleに以下のように表示されます。

Develper Consoleにconsole.logのメッセージが表示される

また、プラグインの読み込みに失敗した場合もDeveloper Consoleにエラーメッセージが表示されるので確認してみてください。

ショートカットキーを設定する

プラグインを効率よく呼び出すためにショートカットキーを設定することが可能ですが、これはプラグインの開発中にも非常に便利です。
manifestファイルを以下のように書き換えてショートカットキーを設定してみましょう。(”commandId: “helloCommand”の後の「,(カンマ)」の付け忘れに注意!)

{
  "id": "MY_HELLO_WORLD",
  "name": "Hello World sample plugin",
  "description": "定番のHello, World!を表示するプラグインです。",
  "version": "1.0.0",
  "host": {
    "app": "XD",
    "minVersion": "13.0.0"
  },
  "uiEntryPoints": [
      {
        "type": "menu",
        "label": "Say hello",
        "commandId": "helloCommand",
        "shortcut": {
          "mac": "Cmd+Shift+O",
          "win": "Ctrl+Shift+O"
        }
      }
   ]
}

manifestファイルを保存して、プラグインの再読み込みをしてからXDのプラグインメニューを見てみましょう。Say helloメニューにショートカットキーが表示されているはずです。(ショートカットキーが他の機能とぶつかっている場合は、プラグイン読み込み時にエラーメッセージが出力され、メニュー名の横に表示されません)

設定したプラグイン呼び出しのショートカットキーが表示

アートボードのテキストオブジェクトを削除して、ショートカットキーでもHello, World!が表示されるか確認してください。うまく行かない場合はDeveloper Consoleにエラーメッセージが出力されている可能性があります。

開発時は、プラグインの再読み込みのショートカットキー(Cmd+Shift+R/Ctrl+Shift+R)とプラグインのショートカットキー(今回の場合は、Cmd+Shift+O/Ctrl+Shift+O)をセットで使うことで効率よく作業を進められます。

開発したプラグインを他の人に使ってもらうためには

インストール可能なXDXファイル形式に変換する

開発したプラグインを他の人のXDで使用してもらうためには、インストール可能なXDXファイルに変換する必要があります。しかし、このファイル変換はびっくりするほど簡単です。
自分の用意したプラグインフォルダー内の全てのファイル群をZIP圧縮して、拡張子を「xdx」に書き換えるだけで完了です。以下はmacOSの場合の手順です。

main.jsとmanifest.jsonを選択して、圧縮します。

作成したファイルをZIP圧縮する(macOS)

デフォルトで「アーカイブ.zip」となるので、リネームします

ファイル名を変更する

分かりやすい名前と拡張子xdxを付けてリネーム完了です。(manifestファイルに設定したnameと同じにする必要はありません)

ファイル名と拡張子を変更をしてインストール可能な状態になった

作成したMyHelloWorld.xdxをダブルクリックしてXDにインストールできるか確認してみましょう。

プラグインファイルをダブルクリックするとインストールダイアログが表示される

以下のダイアログが表示されればインストール成功です!

プラグインのインストールが無事に成功

なお、XDXファイルでインストールすると、developerフォルダーと同階層にあるpluginsフォルダーにmanifestファイルで指定したID名のフォルダーに配置されます。

XDXファイル経由でプラグインをインストールした状態

アンインストールの方法

XDXでインストールしたプラグインをアンインストールする場合は、「プラグイン」>「プラグインを管理」から対象となるプラグインの「・・・」のところからアンインストールメニューを選択します。(開発中のプラグインはdevelopフォルダーから削除すればOKです)

プラグインのアンインストール

XD内のプラグインリストに載せるにはアドビの審査が必要

もっとステキなプラグインが完成したら、より多くのXDユーザーに使ってもらうためにXD内のプラグインリスト(「プラグイン」>「プラグインを見つける」)への登録を目指しましょう。
console.adobe.io にログインし、「New Plugin」ボタンから登録を開始してください。Plugin Nameを入力し「Create Plugin」ボタンを押します。

次の画面で「Unique Plugin ID」が発行されるので、manifestファイルのIDを書き換えてください。その後、再度XDXファイルを作成し「Submit For Review」からXDXファイルの登録ができます。これによりアドビの審査が行われ、無事に通過するとXD内のプラグインリストに入ります。

審査を通過するために、Publishing your pluginのページでプラグインファイルの容量制限(2018年10月時点では25MB未満)などのガイドラインを確認できます。

いろいろな機能を持つプラグインを開発するためには

Adobe XD PlatformのページにAPIリファレンスやサンプルコード、XDのドキュメント構造であるScenegraphについての解説があるので、それらを確認してみましょう。今回のサンプルコードでは触れなかったHTMLを使ったダイアログUIや非同期でのwebサービス連携など、いろいろな機能を持つプラグインの開発が可能です。また、日本以外のXDユーザーにも使ってもらえるようメニュー名プラグインUIのローカライズ対応も検討してみてください。

XDのドキュメント構造、Scenegraph

今後もアクセス可能なAPIが増える予定なのでアップデートにご期待ください!