Goto Aki が教える、売れる風景写真を撮る基本 #4 – 「造形の描写」 #AdobeStock
Goto Aki が教える、売れる風景写真を撮る基本
世界一周から日本全国の旅へと風景撮影の旅を続ける写真家・GOTO AKI。現在は日本の風景をモチーフに地球的な時間の流れをテーマとした作品を写真集や個展で発表する傍ら、当ブログや写真教室などで、より多くの方々に写真の魅力を伝えるための活動にも力を入れています。
この連載では、「ストックフォトとして売れる風景写真とは何か?」をテーマに、みなさんがAdobe Stock用の素材撮影に役立つような考え方と基礎的な知識を作品例とともにお伝えしていきたいと思います。
みなさん、こんにちは。
ここまでの3回の連載記事では「光」、「時間」、「色」についてお伝えしてきました。今回は「造形」の描写についての話です。
1 風景写真における「造形」とは何か?
山を例にしてみると、「造形」とは、山、岩や木々の「形」、それらを構成している複雑な「線」、触ったときに感じるゴツゴツ、ザラザラといった「質感」など、風景写真に表現される被写体の特徴、風景の表情といってもいいでしょう。
ストックフォトのユーザーが検索する際に、地名だけでなく、「ゴツゴツ」「ザラザラ」などのキーワードで探すことがありますので、単に場所を撮影した写真よりも特徴を捉えた上で撮影する分、検索にもひっかかりやすくなります。
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月光の斜光をいかして、山の質感、形、線を描写した一枚 | ©︎Copyright2018 GOTO AKI All Rights Reserved.
ここで、皆さんが見つけた被写体の造形を撮影する時に、大事になってくるのが「絞り」の基本知識です。
2 絞りを意識しよう
写真をはじめて数年の方々に撮影モードをどうしているのかと聞いてみると、P(プログラムオート)やAV(絞り優先)モードで撮影する方が多いようです。
細かな設定はせずにカメラが任せで撮影したり、絞り数値を理解せずに撮り続ける方もいるようですが、みなさんはいかがでしょうか。
今回のテーマである「造形=形、線、質感」を描写する時に、大事になってくるのが「絞り」の数値です。
数値が小さい開放(例 F2.8〜F4ぐらい)では、被写体の前後はやわらかくぼけて、数値が大きい深い絞り(F11〜F16ぐらい)では、被写体に全体的にピントがあっているように描写されます。
* F2.8 F16の写真
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F2.8で撮影。被写体のキノコにピントを合わせて形や質感を描写。前後は大きくぼかしてやわらかい印象の写真に仕上げている。(マクロレンズ使用)| ©︎Copyright2018 GOTO AKI All Rights Reserved.
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F16で撮影。被写界深度が深く手前から奥までピントが全体的にあって山の造形が描写されている。(広角レンズ、焦点距離16mmで撮影) | ©︎Copyright2018 GOTO AKI All Rights Reserved.
3 シャープな写真を撮るには
皆さんのお使いのレンズは様々かと思いますが、一般的にそのレンズの描写性能が一番発揮されてシャープに写るのは、開放から2〜3段絞った数値です。
開放がF2.8のカメラであれば、F5.6〜F8、開放がF4のカメラであればF8〜F11前後の数値に設定するとそのレンズの性能の範囲で高い描写といえるでしょう。
ストックにおける風景写真の場合、明るく描写のはっきりした写真が売れる傾向にあるので、お使いのレンズの一番シャープに写る絞りを把握しておくことは重要です。
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F11で撮影(標準ズームレンズ 焦点距離50mmで撮影)鍾乳洞の造形を細やかに捉えた一枚 | ©︎Copyright2018 GOTO AKI All Rights Reserved.
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F11で撮影。岩の質感や木々の細かな表情を捉えている。(望遠ズームレンズ 焦点距離240mmで撮影)| ©︎Copyright2018 GOTO AKI All Rights Reserved.
4 開放と深い絞り数値の注意点
逆に開放(F2.8〜F4)で撮影したり、F16以上の大きな絞り数値で撮影すると下記のようなデメリットがでる可能性があるので覚えておきましょう。
・ 開放
開放で撮影した時の写真画面の周辺は被写体が歪んだり、色収差が出やすくなります。各メーカーからでているいわゆる高級なレンズはそれがでにくい設計で、画面の四隅までシャープに描写します。本当はシャープに描写したいのに周辺がぼやけている場合は絞り数値を確認して撮影しましょう。
・ 大きな絞り数値
絞り数値を大きくすればピントが全体的に合うということで、F22、F32 などで撮影すると、ピントを合わせたはずなのに被写体がにじんで、シャープさが損なわれる現象が発生します。そのことを回折現象(かいせつげんしょう)といいます。(*現像ソフトによっては回折現象による滲みを迎える機能がついていますが)絞ったのにピントが甘く見える場合は、目安としてはF16を最大値として撮影するといいでしょう。
連載第4回目の記事はいかがでしたでしょうか。撮影において絞り数値を意識することで、ユーザーの目に留まりやすい、シャープな描写の写真が撮れることをお伝えしました。
今回お伝えした造形の描写は、連載でお伝えしてきた<光><時間><色>とすべて連動していますので、過去記事を軽く読み返しながら皆さんの創作へ役立てていただけたら嬉しいです。
次回は風景写真における明暗の話をお伝えしたいと思います。どうぞお楽しみに。
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