フォトレタッチの極意27:渓流をしっとりと幽玄な雰囲気に仕上げる

連載

Photoshop フォトレタッチの極意

水辺のシーンは季節を問わず楽しめる撮影スポットのひとつですが、撮影する時間帯や光の加減によっては、面白みのない写りになりやすいシーンでもあります。より印象的な色彩と雰囲気を出すにはどうすればよいのか、レタッチャー/ライターの桐生彩希さんが解説。「Shuffle by COMMERCIAL PHOTO」に掲載した内容から抜粋してお届けします。

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レタッチの設計
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1、「Camera Rawフィルター」の準備をする

(1)「背景」をスマートオブジェクト化する

「レイヤー」パネルで「背景」レイヤーを選択し、スマートオブジェクト化する。「スマートオブジェクト」のレイヤー(レイヤー0)が作られたら準備は完了。
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(2)「Camera Rawフィルター」を表示する

「レイヤー0」を選択したら、「フィルター」→「Camera Rawフィルター」を選択。「Camera Rawフィルター」画面を表示する。
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2、「Camera Rawフィルター」で冷たい印象にする

(1)露出を補正する

渓流のシーンを幽玄に見せるなら、濃度の高い色彩で冷たい印象を目指すと効果的。少し暗くて、明るい領域が控えめで、なおかつ青っぽい仕上がりを目指す。ただし、この作例は暗くするとシャドウがつぶれる危険があるので、ハイライトを抑える補正から作業を開始。写真の白い部分を見ながら「白レベル」「ハイライト」スライダーを左に移動して水流の白い部分の明るさを抑え、ローコントラストでやわらかな状態に補正する。
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(2)露出を整える

ハイライトを暗くしたことで、薄暗さが目立つ状態になっている。そこで、「露光量」スライダーを右に移動して露出を明るく補正。明る過ぎるとハイライトの強さが際立ち、幽玄な雰囲気が出にくくなるので注意。
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(3)青っぽい色彩に偏らせる

「色温度」スライダーを左に移動して青く偏らせ、冷たい印象を出す。やりすぎないように「暖色系の要素を取り除く」という考えで補正する。岩肌のマゼンタの強さが気になったので、「色かぶり補正」スライダーを左に移動してマゼンタの偏りも軽減している。
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(4)色彩に深みを出す

全体的に浅い色なので、濃度のある色調に補正する。まずは「彩度」スライダーを右に移動して全体の鮮やかさ(濃度)を高めてから、足りない濃度を「自然な彩度」スライダーで補う。
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3、「Camera Rawフィルター」で「湿度感」を出す

(1)「段階フィルター」を選択する

渓流の湿度感は、川霧や水煙を感じさせる描写にすると効果的。そこで、画面の上部にある滝の付近に対して、かすんだような効果を適用する。部分的な補正が必要なので、「段階フィルター」と組み合わせて使用する。「段階フィルター」を使う準備として、①「段階フィルター」ボタンをクリックして、②「新規」を選択し、③「かすみの除去」の「-」ボタンをクリックして最大値に設定しておく。「-」や「+」ボタンをクリックすることで、その他のスライダーがリセットされ目的の機能だけが調整された状態にできる。
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(2)「段階フィルター」を適用する

写真上の補正する部分(画面上部)から補正しない部分(画面下部)に向けてドラッグ。これにより、上から下に向かって設定した効果(かすみの除去)が弱くなる補正が適用できる。
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(3)補正値を再調整する

補正の範囲が分かりやすいように強めに適用されているので、イメージに適した量に再調整する。「かすみの除去」スライダーを右に移動してかすんだ効果を弱め、軽く水煙が立っているような印象を出す。「かすみの除去」でかすませると白く(明るく)なるため、「露光量」スライダーを左に移動して暗くし、元の露出に近くなるように露出を微調整。
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4、「Camera Rawフィルター」で明暗を演出する

(1)「円形フィルター」を選択する

左下や右下に黒いべたな領域や土の部分が見えていて雰囲気を壊しているので、これらを目立たないように処理する。トリミングしてしまうとワイド感が失せるため、周辺光量を落とすことで対応。補正の準備として、①「円形フィルター」ボタンをクリックして、②「新規」を選択し、③「露光量」の「-」ボタンをクリックして極端に補正が適用される状態(補正範囲が分かりやすい状態)にする。さらに、④スクロールバーでパネルの下に移動したら、⑤「効果」の項目を「外側」に設定。円の外側に補正が適用される状態にしておく。
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(2)「円形フィルター」を適用する

補正したい部分(画面左下と右下)が補正範囲になるように、写真上でドラッグして円を作成。この時、キーボードのShiftキーを押しながらドラッグすることで正円の補正範囲が作成できる。円を作ると、STEP1の設定に従って円の外側が暗く補正された状態になるので、中央の赤●のピンアイコンをドラッグして補正場所を、円周上の□をドラッグして補正の範囲を調整。
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(3)補正の強さを調整する

画面の左下と右下が暗く補正され、気になる部分が見えない状態。ただし、このままでは暗過ぎるため、「露光量」スライダーを右に移動して適切な補正量に調整。暗い中に質感が出ていて、なおかつ土の色が目立たなくなる程度になればOK。
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(4)補正の幅を調整する

円の内側(水の流れの白い部分)も補正で暗くなっているので、「ぼかし」機能を使って補正の幅を調整することで改善する。①スクロールバーでパネルの下部に移動したら、②「ぼかし」スライダーを左に移動。
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(5)各補正を見直して確定

①「ズームツール」か「手のひらツール」ボタンをクリックすると、「円形フィルター」画面から元の状態に戻せる。②「基本補正」ボタンをクリックして「基本補正」パネルを表示し、必要に応じて各補正量を再調整。補正できたら、③「OK」ボタンをクリックして「Camera Rawフィルター」を確定する。
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さらに詳しい解説は、Shuffle by COMMERCIAL PHOTO で連載中の「風景&ネイチャー レタッチの教科書」(解説・写真:桐生彩希)に掲載されています。サンプルファイルもダウンロードできますので、ぜひ挑戦してみてください!

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