デジタル化を通じて『機械可読なデータ』に。経済産業省CIO補佐官が語る「法人デジタルプラットフォーム」とは #AdobeDocCloud

行政サービスのさらなる向上などに向けて、日本政府は「電子政府」から「デジタル・ガバメント」へと発想を転換し、その実現に取り組んでいます。2018年9月4日に開催された「Adobe Symposium 2018」では、そうした政府の基本方針に基づいた経済産業省の実施計画や最新事例などを、経済産業省CIO補佐官の満塩尚史氏が、「官民デジタルサービスの連携を目指す経済産業省の法人デジタルプラットフォーム」と題して講演しました。

「デジタル・ガバメント」に向けた、政府の取り組みとは

「電子政府」から「デジタル・ガバメント」へ。その思いを、満塩氏は次のように語ります。「今までは紙をPDF化したり電子ファイル化したりすることが多かったのですが、それはただ『電子化』して、単なる『画像』のフォーマットになっているだけというのが実情です。そうではなく、『デジタル化』することで、『機械可読なデータ』にすることで、利用者へのサービス向上、行政手続きの効率化に積極的に活用していこうということなのです」。

その具体的な取り組みで、一つ目は、手続きを含めたオンライン化の推進とデジタル化による手続き自体の見直しを図る「デジタルファースト」の実現、そして二つ目が、「ワンスオンリー」の実現です。「ワンスオンリー」の実現とは、一度、行政に提出した資料は、二度提出する必要がないようにする仕組みづくりのこと。具体的には、決算書、登記事項証明書、印鑑証明書といった添付書類がその都度、求められる現在の法人の確定申告、補助金申請等の手続きから重複入力や添付書類を撤廃することを目指しています。そして三つめが、民間サービスを含めて、どこでも一か所で手続きや通知がなされる「コネクテッド・ワンストップ」の実現です。

「法人デジタルプラットフォーム」の構築により、各種申請も一つのID・PWで可能に

「デジタルファースト」、「ワンスオンリー」、「コネクテッド・ワンストップ」を原則として、経産省では「デジタル・ガバメント」の実現に向けた施策を推進しています。その一例が、ID・PW等の認証の共通化により行政手続きの「ワンスオンリー」などを実現する「法人デジタルプラットフォーム」の構築です。経産省が中小企業に支給する補助金制度は時期や補助金の種類ごとにシステムが異なり、それぞれの補助金申請システムの構築に1年を要することもあります。こうした課題を解消するうえでも、「法人デジタルプラットフォーム」への期待は高まっています。

満塩氏は、その意義を語ります。「たとえば補助金システムA、B、Cがあるとすれば、現状はシステムごとにログインに必要なID・PWを発行しています。これが一つのID・PWで複数の申請ができるようになるのです。しかも経産省のみならず、他省庁を含めID・PWを使うシステムにおいては、共通のID・PW等で申請できる仕組みづくりを考えています。中小企業などの皆さまは申請手続きの手間が省けますし、私たちにとっても累計すると膨大なID・PWの管理業務を効率化できます」。

数々の施策を、官民デジタルサービス連携のために。

「ワンスオンリー」を実現するためにも、不可欠なデータ連携。そのために「法人デジタルプラットフォーム」においては、個別に管理していたID・PWを統合管理し、各電子申請システムと連携させる「法人共通認証基盤」を構築します。

満塩氏は、「統合しながらも、安全性に配慮したプロトコルを活用します。しかも、標準的なプロトコルを利用するので、すぐにシステムをつくることが可能です。現在、法人のみならず個人事業主も想定したID・PWの発行準備をしていますが、今年の冬、いくつかのシステムと実装試験を行い、連携する予定です」と語ります。

また、「官」のみならず「民間」を横断したデジタルサービス連携の実現に向けて、行政が保有しているデータの再利用化を図る「オープンデータ・バイ・デザイン」をはじめとした行政データ標準の確立を推進しており、公的法人情報のオープン化が促進されることで、データ分析によるマーケティング強化や、新たなサービス創出などにつながっていくことが期待されます。

官民デジタルサービス連携の布石、「法人インフォメーション」。

「『デジタル・ガバメント』」を『官』だけで推進するのは、もはや限界です。『官民』が連携してサービスを提供することで、市民の方や法人の方に利便性をもたらす仕組みづくりを推進していこうと思います」と、満塩氏は意気込みを語ります。

その布石として、経産省では平成29年1月より「法人インフォメーション」の運用を開始しました。これは、法人が政府より受けた補助金交付や委託契約、許認可、表彰などの法人活動情報を掲載したオープンデータサイト。法人番号や会社名を入力すると、その活動情報の一括検索から閲覧、取得までが行えます。

掲載情報は経産省だけでなく、各府省庁が提供しており、まさに政府横断的なデジタルサービス連携の好例と言えます。満塩氏は、「掲載されているデータは、すべてAPIを付けています。オープンデータの標準フォーマットであるRDFでデータが取れますので、民間企業の皆さまも、自分たちが保有しているデータをマッシュアップして、サービスを提供していただければと思います」と締めくくっています。

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