【Edvation x Summit 2018登壇レポート】学校現場での「創造的問題解決能力」を養うデジタルツールの重要性を訴求 #アドビ教育
アドビは、11月4日~5日に開催された国内最大級のEdTechグローバルカンファレンス「Edvation x Summit 2018」に登壇し、テクノロジーを活用した、創造性を育てる教育の重要性を訴求しました。
「Edvation x Summit」は、教育や人材育成分野に特化した国内外の先進事例や、イノベーティブで多様な教育ソリューションを体感できる国際カンファレンスです。日本の産業界や教育関係者が一丸となり、教育現場におけるイノベーションをさらに推進する目的で開催され、今年で2回目となりました。紀尾井カンファレンスと麹町中学校の2会場で、基調講演やパネルディスカッション、ワークショップ、ブース展示などが催され、世界のEdTechトレンドやEdTechの海外事例、AI時代の教育や社会や何が未来の教育に必要かなど、さまざまな視点からディスカッションが行われました。
アドビの教育市場担当が登壇した二つのパネルセッションについてレポートいたします。
1.「創造的問題解決能力」を育む教育実践
このパネルディスカッションには、品川女子学院 情報科主任の竹内啓悟氏と、学校法人 角川ドワンゴ学園 N高等学校 教材制作部 副部長の中根祐氏にご登壇いただき、教育現場におけるAdobe Creative Cloud導入の理由と生徒の反応、クリエイティブツールを使った授業内容について語っていただきました。アドビのマーケティング本部教育市場部グループリーダーの小池晴子がモデレーターを務めました。
Creative Cloud導入の理由と生徒の反応
実社会につながる教育の一環として情報教育や創造性育成教育に力を入れている品川女子学院とN高等学校では、Creative Cloudを選んだ理由として、生徒が卒業して社会人になった時を考慮し、現在の社会でスタンダードとして使われているデジタルツールを使えるようになってほしいと考えました。世の中には学校向けアプリなどもたくさんありますが、学生向けにカスタマイズされているものは使わない方針をとっており、業界標準ツールに慣れ親しみ、卒業後に役立つ経験を学校で積むことが重要だと提言しました。
N高等学校は、6月に新たにWebデザイン授業コースを始めるタイミングで、Creative Cloudの小中高校ユーザー指定ライセンスを導入しました。導入が決まった際に、学校側がSlack上で発表したところ、生徒たちから過去最高の約500件以上のリアクションがあり、想定以上の生徒の喜びの声に驚いたと中根氏は言います。また、総務省の「異能(Inno)vation 2018」プログラムで分野賞を受賞した生徒からは、学校からCreative Cloudを自由に使える環境を提供されていたからこそ、Photoshopのスキルが上達し受賞できたとの報告があったそうです。
品川女子学院では、28才になったときに社会で活躍している女性を目標とする「28プロジェクト」という取り組みを行っています。その観点からも、学校でどのようなツールを利用するかは生徒が自由に選択できるよう、環境を整えることを重要視しています。今年の4月には、PC教室のMacBook用にCreative Cloudを導入しました。特別講座として外部企業とコラボする取り組みも多数行っており、企業担当者との打ち合わせの最中にIllustratorのアートボードを見せながら、このようなデザインにしたいと直接伝える生徒もいるとのこと。学生がイニシアチブを取りその場で作業を進めるスピード感に、企業側が驚くことも多々。竹内氏は、実社会で活用できるデジタルスキルを身につけた生徒達の成長を目の当たりにしたと話しました。
クリエイティブツールを使った授業
教育環境にクリエイティブツールを入れた場合、先生が使い方を聞かれて困る場合や、まず先生が使い方をしっかりと覚えなくてはいけないという教員の不安があります。品川女子学院の竹内氏は、「生徒は教えなくても自発的に学びます。まったく使い方も教えていない中学1年生がIllustratorを簡単に使いこなしていたり、中学2年生がIllustratorやPhotoshopを駆使して電子フリーペーパーを作ったこともあります。学生は先生よりも早くツールに慣親しむため、もし分からない時はアドビのCreative Cloudチュートリアルを学生と一緒に見て学んでいます。」また、N高等学校の中根氏も、「教員は学生と一緒に本やネットで使い方を調べて学びます。生徒の方が理解している事があるので、その場合は積極的に生徒からクラス全体に教えてもらっています」と、先生が使い方をわかっていなくても問題がないと現状をお話くださいました。さらに両氏ともに、どんな活動もアウトプットと目的を明確にして、そのために必要な道具としてクリエイティブツールを使うことが重要と話しました。Creative Cloudを導入して使うことが目的ではなく、実社会に出来る限り沿った環境と目標を設定し、生徒が必要なツールを使いながら試行錯誤し、さまざまな成功体験を積み上げることが大切だと説明しました。
アドビのクリエイティビティに関する調査
アドビは、クリエイティビティに関する調査結果を発表しています。2017年に行った「教室でのZ世代:未来をつくる」の調査において、日本のZ世代(12歳~18歳)で「自分は創造的である」と回答したのは、わずか8%にとどまっています。一方、創造的問題解決能力の重要性は教育関係者の間で広く共有されており、2018年の「学校現場における『創造的問題解決能力』育成に関する調査」では、93%の教員が学校で「創造的問題解決能力」を学ぶことは重要と回答しています。
アドビの小池は、次のように述べています。「人工知能(AI)などの発達で定型的な業務の自動化が加速するこれからの時代で、未来を生きる子どもたちは創造性を発揮して問題解決に取り組めるようになることが大切です。アドビの調査から見えてくることは、Z世代の創造性が足りないのではなく、自分の創造性に対する自信が足りないということです。創造的問題解決能力における創造性とは、芸術的な能力やセンスのことではなく、新しい発想から新しい価値を創り出す力です。この自信を育むためには、学校で試行錯誤しながらプロジェクトに取り組み、成功体験を積み重ねていくことが大切だと考えています。」
2. 外資ITからみた日本の教育クラウド
もう一つのパネルディスカッションには、一般社団法人教育イノベーション協議会代表理事 佐藤昌宏氏、日本マイクロソフト株式会社業務執行役員の中井陽子氏、Google for Education マーケティング統括部長アジア太平洋地域のStuart Miller氏、アマゾンウェブサービスジャパン株式会社パブリックセクター営業本部 アカウントマネージャー大富部貴彦氏、アドビの執行役員本部長の清水久裕が登壇し、クラウドソリューションの利点と日本の教育現場における取るべきアプローチについて議論を展開しました。新しい教育の選択肢を知ること、また既成概念にとらわれない教育イノベーターを生み出す事を目的として、国内外の事例や教育現場の現状が議論されました。
ディスカッションでは、総務省の教育や医療等の分野におけるICT化が推進され、教育現場でのクラウド化が進む中、自治体によってクラウド移行の進歩は大きく異なることが語られました。クラウド化によってもたらされるメリットは、生徒と教員をクラウドで繋げることにより教員の仕事環境が職場以外に広がり、教員の仕事効率が向上し、子どもたちに教えるための時間を確保できることです。また、クラウドは課題の共有、修正、調整、完成における共同作業を容易にし、学校で実社会に通じる経験を得ることができます。今後の教育現場で、政府のクラウド化の後押しとともに、自治体の予算管理によって教育機関でのクラウド化がさらに進めば、教員と生徒のより良い環境が整えられると各々が同意しました。
また、アドビの清水久裕は、「アドビの調査結果から、日本の先生の40%は教室で活用できるデジタルツールがないと答えており、各国と比べて大きく遅れをとっていると述べ、教育現場のIT化はこれからの社会を生きていく子どもたちにとって欠かせないものである」と説明しました。