Goto Aki が教える、売れる風景写真を撮る基本 #5 – 「明暗の描写」#AdobeStock

連載

Goto Aki が教える、売れる風景写真を撮る基本

世界一周から日本全国の旅へと風景撮影の旅を続ける写真家・GOTO AKI

現在は日本の風景をモチーフに地球的な時間の流れをテーマとした作品を写真集や個展で発表する傍ら、当ブログや写真教室などで、より多くの方々に写真の魅力を伝えるための活動にも力を入れています。

この連載では、「ストックフォトとして売れる風景写真とは何か?」をテーマに、みなさんがAdobe Stock用の素材撮影に役立つような考え方と基礎的な知識を作品例とともにお伝えしていきたいと思います。

みなさん、こんにちは。

ここまでの4回の連載記事では「光」「時間」「色」「造形」についてお伝えしてきました。今回は「明暗」についての話です。

1 売れる風景写真

ストックフォトにおける風景写真は素材であるという話を第一回目にお話しました。素材として売れる風景写真には一定の傾向がありますが代表的な条件はなんでしょう?

・撮影時の天候は晴天

・明るく色が美しい風景写真

近年、アマチュア写真家の方でもプロと同じ一眼レフやミラーレスカメラを使用されている方がたくさんいますので、ストックフォトの検索で明るく色が美しい写真ばかりが並んでいても逆に目立たなくなる可能性があります。皆さんの作品が選ばれやすくなるにはどうしたらよいでしょうか。

そこで撮影の時に**注目していただきたいのが、被写体の暗部(シャドウ部)**です。

冬の光芒 シャドウが光を引き立てる ©︎Copyright2018 GOTO AKI All Rights Reserved.

2 明暗を観察しよう

人は明るいものに目がいく習性がありますが、シャドウ部を意識することでより一層明るい場所や色彩を引き立てることができます。写真にメリハリが生まれるだけでなく、明るい箇所から暗部へと目線を誘導する効果もあり、写真を検索する人の滞留時間も長くなりますね。

写真の中で明るい場所、暗い場所がはっきりするとストックフォトの利用者でもある編集者やデザイナーさんにとってはコピースペースとなり、素材として使いやすい風景写真となります。被写体の明るい箇所が気になったら、同時にファンダーの中でシャドウ部を探してみてください。

シャドウ部で写真に力強さを与え、コピースペースとなる空間も意識して撮影 | ©︎Copyright2018 GOTO AKI All Rights Reserved.

対角線に明暗を入れて視線の誘導効果を狙う。視線の誘導があると写真を見ている滞留時間が長くなる | ©︎Copyright2018 GOTO AKI All Rights Reserved.


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湖の向こう岸の山の影をシャドウ部として撮影。雨による水紋が写真に浮かび上がった | ©︎Copyright2018 GOTO AKI All Rights Reserved.

3 撮影時の注意点

さて、明るい場所や色彩を引き立てるためのシャドウ部の役割をお伝えしましたが、実際の撮影で注意する点は何でしょうか?

答えは「露出」です。特に大事なのは「白飛び」しないことです。

明るい箇所が「白飛び」をしてしまうとデータ上に被写体の情報がなくなるため、Lightroomでの現像で、明暗の調整をしても被写体のトーンは再現できません。その対策として、皆さんがお使いのカメラに**「白飛び」警告の表示機能があればオンにして撮影**しましょう。また、液晶モニターなどでヒストグラムを表示すれば、被写体の明るい部分が白飛びしていないかを撮影前後に確認することができるので、積極的に使いましょう。

ヒストグラムを表示すれば白飛びしているかどうか、液晶モニターですぐに確認できます | ©︎Copyright2018 GOTO AKI All Rights Reserved.

▼ 失敗例


https://blogs.adobe.com/japan/wp-content/uploads/2018/11/5DR0255_1.jpg

海の色は明るく綺麗だが雲が白飛びしている失敗例 ©︎Copyright2018 GOTO AKI All Rights Reserved.

▼ 成功例

露出を少し暗めに撮影して白飛びを防ぎ、Lightroom の現像でハイライトを迎えて雲のトーンを再現した写真 ©︎Copyright2018 GOTO AKI All Rights Reserved.

一方で「黒つぶれ」はどうでしょうか?

近年のデジタルカメラの性能が上がり、黒つぶれしたように見えるシャドウ部を撮影後に現像で明るくしてもノイズが目立たなくなりました。

撮影時には白飛び厳禁、シャドウ部は現像処理である程度までは明るく戻すことが可能です。モニターを確認しながら、ノイズが目立っていないかを確認して調整しましょう

撮影時にはほぼ真っ黒に潰れているように見えたシャドウ部をLightroomの現像で明るくして岩の質感を見せている | ©︎Copyright2018 GOTO AKI All Rights Reserved.

連載第5回目の記事はいかがでしたでしょうか。撮影は明るい場所を強調する時は暗部にも注目すること、撮影時には白飛びに注意するという基本をお伝えしました。

露出の話は、連載の1-4回目でお伝えした「光」「時間」「色」「造形」と連動していますので、過去記事をご参照いただきながら、ストックフォトの風景写真撮影にお役立てください。次回は全6回の連載最終回、アングルの話をお伝えしたいと思います。どうぞお楽しみに。

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