フォトレタッチの極意28:理想とする紅葉の色彩を再現する

連載

Photoshop フォトレタッチの極意

紅葉のシーンは、肉眼では色付いて見えた景色が写真ではもの足りないと感じることがあります。どんな要素が不足していたのかを見極め、Photoshopで足りない要素を補って理想とする色彩を再現してみましょう。解説はレタッチャー/ライターの桐生彩希さん。「Shuffle by COMMERCIAL PHOTO」に掲載した内容から抜粋してお届けします。

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Before

After

レタッチの設計
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1、「Camera Rawフィルター」の準備をする

(1)「背景」をスマートオブジェクト化する

「レイヤー」パネルで「背景」のレイヤーを選択し、メニューから「スマートオブジェクトに変換」を選択。「スマートオブジェクト」化された「レイヤー0」が作られる。
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(2)「Camera Rawフィルター」を表示する

「レイヤー0」を選択したら、「フィルター」→「Camera Rawフィルター」を選択。これで「Camera Rawフィルター」画面が表示される。

2、「Camera Rawフィルター」で「写真的」に補正する

(1)露出を補正する

華やかな色彩を得るには、少し明るめの露出が適しているが、明る過ぎると色が抜けたように薄くなるので注意。露出は最後に微調整すればよいので、ここでは木の葉の重なり部分のシャドウが薄くなる程度に補正しておく。

(2)鮮やかさを補正する

露出の次は「コントラスト」を補正するのが定番だが、作例はコントラスト補正の必要はないので、次の鮮やかさ(発色)の補正を行う。使う機能は「彩度」と「自然な彩度」スライダー。最初に「彩度」で全体の鮮やかさを底上げして、「自然な彩度」で不足している鮮やかさを補っていく。

(3)全体の色味を補正する

黄色や赤みが足りないと感じたら、「色温度」スライダーを調整して暖色系を強めておく。紅のような深みが必要なときは、「色かぶり補正」スライダーも右に移動すると効果的。写真的な仕上がりにするなら、「基本補正」パネルの機能だけで仕上げられるこの段階で終わらせる。

3、「Camera Rawフィルター」で「写真的」に色彩を強調する

(1)「HSL/グレースケール」パネルを表示する

思い描く紅葉の色彩を作り出すときは、さらに色を個別に補正することになる。使う機能は、「Camera Rawフィルター」にある「HSL/グレースケール」パネル。まずは、①「HSL調整」ボタンをクリックして「HSL/グレースケール」パネルを表示し、②「色相」タブをクリックして色が変えられる状態にする。

(2)黄色い木の葉をオレンジ色に補正

紅葉の色彩というと、オレンジや赤系を連想する。そこで、黄色い木の葉をオレンジ色に近付ける。移動するのは「イエロー」スライダーで、左に移動すると黄色い木の葉をオレンジ色にすることができる。

(3)上下のスライダーを連動させる

「HSL/グレースケール」パネルのスライダーは、1本だけを大きく調整すると階調の崩れやトーンジャンプなどの要因となる。そこで、(2)で調整した「イエロー」スライダーの上下にある①「オレンジ」と②「グリーン」スライダーも連動して移動する。必要に応じて③「基本補正」パネルの各スライダーを微調整して色調を整えたら、④「OK」ボタンをクリックして補正を確定する。

4、「芸術的」な仕上げを目指す

(1)「特定色域の選択」を選択する

リアリティよりもインパクトや発色を求めるときは、さらにPhotoshopのレタッチ機能で色調を作り込んでいく。作例はさらなる赤系の色彩がほしいので、黄色い要素を赤く変化させたい。使う機能は、調整レイヤーの「特定色域の選択」機能。「レイヤー」パネルの下部にある「塗りつぶしまたは調整レイヤーを新規作成」ボタンをクリックして「特定色域の選択」を選択し、補正の画面が表示されたら、下部の設定を「絶対値」にする。
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(2)「イエロー系」を調整する

「カラー」から「イエロー系」を選択して、黄色が重点的に補正できる状態に設定。移動するスライダーは「マゼンタ」と「イエロー」で、「マゼンタ」スライダーを右に移動して紅葉の紅の印象を作り出し、「イエロー」スライダーを右に移動して紫系の強さを緩和する。

(3)燃え立つ紅葉の色彩を再現する

続いて、パソコンやスマホ、タブレットなどのディスプレイで鑑賞する際に効果的な赤の作り込みを行う。この補正はプリント(CMYK)で再現しづらい色域が増えるので、プリントが目的の写真では避けたほうが無難だ。(2)で「マゼンタ」と「イエロー」スライダーで赤系に補正した状態に対し、「シアン」スライダーを左に移動してレッドの要素を追加。

5、「色相・彩度」で色味を整える

(1)「色相・彩度」を選択する

「色温度」とは異なる効果で全体の色味を補正する裏技が、「色相」を使うテクニック。「レイヤー」パネルの下部にある「塗りつぶしまたは調整レイヤーを新規作成」ボタンをクリックして「色相・彩度」を選択し、補正の画面を表示する。
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(2)「色相」スライダーを調整する

「色相」スライダーを左右に移動すると、色相環と呼ばれる色のつながりに応じて全体の色がシフトする。写真の場合は「ほんの少し」だけスライダーを移動して、微妙な色の偏りや作り込みに活用する。作例は、赤の印象が強くなる方向(左)にスライダーを微調整している。

6、「トーンカーブ」で透過光の印象をアップ

(1)「トーンカーブ」を選択する

Camera Rawフィルターや調整レイヤーなど補正を重ねると、最初に決めた露出から変化することがある。そこで、「トーンカーブ」を使い、明るさとコントラストを補正。「レイヤー」パネルの下部にある「塗りつぶしまたは調整レイヤーを新規作成」ボタンをクリックして「トーンカーブ」の画面を表示する。
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(2)透過光の透明感を出す

透過光によるキラキラ感がほしいので、ハイライトを明るく補正する。線グラフの右上と左下付近をクリックして2つのポイントを作成し、右上のポイントを上に移動。木の葉の繊細さ(分離した感じ)が失せなければ、多少の色の飽和は「透明感を演出する効果」と考えてかまわない。

(3)コントラストを整える

ハイライトだけ明るくすると、コントラストが強く感じることが多い。作例も、木の葉が重なった陰の部分の暗さが目立ち、コントラストが強い印象だ。色の濃さよりも軽やかな色彩や透明感を優先したいので、線グラフの左下のポイントを上に移動してシャドウを明るく補正する。

7、重ねた補正を馴染ませる

(1)重ねた補正を再調整するコツ

補正を重ねていくと、先に適用した補正のバランスが崩れがち。また、仕上げた直後は「目が補正中の色」に慣れているため、補正が強い状態になっていることが多い。そこで、しばらく時間をおいてから写真を見直して、補正のバランスを調整する。使う機能は「レイヤー」パネルの「不透明度」機能。①補正の強さを弱くするレイヤーを選択し、②「不透明度」横のボタンをクリックし、③表示されたスライダーを左に移動する。「Camera Rawフィルター」の再調整は、「レイヤー」パネルで「Camera Rawフィルター」の文字をダブルクリックすればOK。
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(2)補正の強さを仕上げる

各調整レイヤーの不透明度を調整して、補正のバランスを整える。作例は「特定色域の選択」と「トーンカーブ」の効果が少し強かったので、不透明度を下げて色調を馴染ませている。

さらに詳しい解説は、Shuffle by COMMERCIAL PHOTO で連載中の「風景&ネイチャー レタッチの教科書」(解説・写真:桐生彩希)に掲載されています。サンプルファイルもダウンロードできますので、ぜひ挑戦してみてください!

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