アムステルダム国立美術館:3Dモデルで再現する芸術の美 #AdobeStock

連載

Adobe Stock アップデート

1808年に設立されたアムステルダム国立美術館(Rijksmuseum)は唯一無二の美術館です。芸術における長い歴史や100万点を超えるオブジェの見事なコレクション、レンブラントやフェルメールを含むオランダ黄金期の名画の数々を誇る同館は、公共施設としての役割の発展を目指し、先を行く存在であり続けています。 2013年に所蔵作品から12万5000点以上をオンラインで入手可能な高解像度画像として公開したことは、まさにその先進性の表れといえるでしょう(今後は年間4万点の追加を目標としています)。この「Rijksstudio」と称するデジタルアーカイブの独自の試みといえば、芸術作品のオンライン無料公開に加え、CC1.0 Universalライセンスが適用される画像(パブリックドメインの画像)を誰もがダウンロードできるようにしていること。同館はこうした取り組みにより活動の領域を転換し、社会の個々人が芸術系コンテンツとどのように関わり、消費することが可能なのかを探る方向性を打ち出しています。

次なる画期的な試みとして、アムステルダム国立美術館はこのほどAdobe Stockとパートナーを組み、独自に厳選した28点のオブジェを3Dモデルに変換し、無料で公開することといたしました。元の作品からインスピレーションを得て制作されたこれらの3Dモデルは、宝石をあしらったカード入れの凝った装飾から磁器の花瓶の豊かな青の色合いまで、キャプチャ可能なあらゆる細部が再現されています。

左:アムステルダム国立美術館コレクションの青い磁器の花瓶 右:Adobe Stockの同じ花瓶からインスピレーションを得た3Dモデル

この3DモデルのコレクションがAdobe Stockギャラリーで無料提供されるほか、デザインコミュニティの才能溢れるアーティスト3名が、参考作品として、これらのアセットを用いた素晴らしいレンダリングをDimension CCで作成しています。ぜひ皆さんも無料アセットをダウンロードし、創作意欲を湧き立たせ、あなたならではのユニークなファインアートの世界を作り上げてみてください。

シンプルに表現された自然

アーティストにとって、素晴らしい屋外の世界を作品に取り込むことはなかなかの難題です。フォトグラファーは一日の中で最高の撮影時間帯を模索し、画家はキャンバスの上に花の風合いを表現すべく奮闘し、デジタルアーティストはIllustratorで植物をゼロから再現しようと試みますが、ディテールを表現しきれないこともあります。Adobe Stockとアムステルダム国立美術館にとって、やるべきことは明らかでした。それは、2次元の絵画に目を向け、そこから視覚的な構成要素を抜き出し、元の作品にインスパイアされたリアルな3Dモデルを制作することです。

左:アムステルダム国立美術館コレクションのLouis Moritzによるチューリップの絵の写真 右:Adobe Stockの同じチューリップの絵からインスピレーションを得た3Dモデル

本プロジェクトのテーマのひとつである自然については、動植物のモデルを6点作成しました。アーティストはこれらのモデルと他の要素を組み合わせ、甘美なシーンを生み出すことも可能です。自然を題材に、私たちが制作を依頼したのは、独特なファンタジー世界を築く2D/3D のクリエイター、Davide Pellinoです。彼は、Dimensionのアセットパネルから選んだいくつかの追加の素材にアムステルダム国立美術館の3Dモデルセレクションを散りばめ、夢幻的な自然の世界を作り上げました。


https://www.behance.net/gallery/73201193/Rijksmuseum-The-Beauty-of-Art-in-3D-(Nature-Artwork)

Davide Pellino によりDimensionで作成された3Dレンダリング

Davideのレンダリングでは、どことなく漂うシュールレアリスムの雰囲気に加えて、構成と色が成功の決め手といえます。また、前面の中央に配置された蝶と花に小さな旗と木の小屋を加えることで、作品にオリジナリティを持たせています。独自の観点で自然の概念を捉え、視覚的にリッチなレンダリングを作成するため、DavideはDimensionとPhotoshopの様々な機能を駆使しました。人生の中のシンプルなことに気づかされると同時に、静けさや穏やかさに包まれ、満月と大きな蝶の夢に浸れる作品です。

装飾的なインテリアをつくる小物

アムステルダム国立美術館の作品にインスパイアされた3Dモデルの中で最も多いのは、インテリアデザインの分野です。というのも、額装された絵画やビロードのドレープが美しいベッド、豊かな色合いの花瓶など、デザイナーがディテールにこだわった部屋を完成させるために必要な装飾品を揃えておきたかったからです。

ヨハネス・フェルメールの「牛乳を注ぐ女」のような絵画については、完成時の作品のリアリズムを高めるため、オリジナルの額縁から3Dモデルを作成しました。この素晴らしいインテリアデザイン関連のアセットは全部で18点。アーティストの皆さんの個性溢れる部屋づくりにぜひお役立てください。

左:アムステルダム国立美術館コレクションのヨハネス・フェルメール作「牛乳を注ぐ女」の絵画の写真 右:Adobe Stockの同じ絵画からインスピレーションを得た3Dモデル。オリジナルの額装も再現

インテリアの参考作品は、提供開始当初から熱心なDimensionユーザーであるAnna Natter(別名Cinniature)とのコラボレーションです。Annaは、まず初めに作品の土台としてAndras Csontosによるバロック調の部屋を選びました。彼女の考える構図にぴったりの背景です。それから、3Dモデルセレクションの各オブジェを配置や向きに気を配りつつ慎重に調整しました。現実の世界の雰囲気をさらに強調するため、Adobe Stockからワインのデキャンタ―布製の枕といったデザインエレメントも数点追加しています。

Anna Natter/CinniatureによりDimensionで作成された3Dレンダリング

Annaの作品で成功の鍵を握っているのはライティングとモデルのレイアウトです。写真をトリミングすることで、古い時代の心地良い豊かな感覚や空気が生まれています。Annaは、Dimensionのアセットパネルからたっぷりとしたバーガンディーのカーテンやその他の細かなアクセントを加え、さらに時代感を表現しました。優美なファブリック類、光沢のあるクリスタル、温もりある光などの素晴らしいエレメントが、美しさ、快適さ、華やかさを備えた魅力的な寝室のシーンを作るのに一役買っています。

精巧なミニチュア

アムステルダム国立美術館のコレクションで最も興味深い作品の中に、現実世界のものを模したミニチュアがあります。今回のキュレーションでは、家や舟、灯台など、2通りの使い方ができるオブジェを見つけました。これらのオブジェ計4点は、3Dモデルにすることで、卓上サイズのミニチュアのシーンの創作に使用したり、現実世界のサイズの建造物に変換したりすることができ、様々なジャンルで活動するデザイナーの方々に幅広い用途でご活用いただけます。

左:アムステルダム国立美術館コレクションのミニチュア灯台の写真 右:Adobe Stockの同じ灯台からインスピレーションを得た3Dモデル

ミニチュアの参考作品については、優れた3Dアーティスト、Mohamed Chahinにご協力いただきました。彼が生み出す愉快なローポリの作品はいつもインスピレーションを与えてくれます。レンダリングに際して、Mohamedが着目したのはこれらのモデルの多用途性です。彼は、家や舟、大砲や灯台を組み合わせて卓上サイズの空間に取り込むことで、各モデル独特の古風な趣を見事に表現しました。

Mohamed ChahinによりDimensionで作成された3Dレンダリング

また、別世界の雰囲気を強調するため、Mohamedは一風変わったスタイルで形や素材、色を適用しています。Dimension のアセットパネルのプリミティブ(基本図形)からガラスボックスを作成したり、銀や白の磁器のように見せるため別の素材を足すなどして、灯台のような現実世界のモデルを新鮮な意外性のあるものに変身させました。背の高い枯れ草大きな岩も含め、この魅力的な内包された世界は夢――意識が自由にさまよい、心が解き放たれるような夢を思わせます。

今回は、アムステルダム国立美術館の3DコレクションをAdobe StockDimension CCで入手し、どのような作品を作ることができるのか、いくつかの見本をご紹介しました。皆さんもぜひ無料アセットをダウウンロードし、レンダリングを作成して、素晴らしい作品をシェアしてください。

この記事は2018年11月28日に Adobe Stock Team により作成&公開されたRijksmuseum: The Beauty of Art in 3Dの抄訳です。

*ヘッダーイメージ:Davide Pellino がDimensionで作成した3Dレンダリング