知っておきたい写真の権利。写真に権利問題が絡むとき その2 #AdobeStock

連載

Adobe Stockで作品を販売しよう!

著作権について前回のブログに引き続き青山綜合法律事務所のパートナー弁護士である氏家優太先生をお迎えしフォトグラファーとして株式会社ヒーコ代表の黒田明臣氏がピックアップしフォトグラファー視点で気になる疑問について確認していきます。今回のブログでは前回の基礎編から、自分の作品が権利問題に巻き込まれてしまったらどうなるのかなど、1歩踏み込んだ内容を触れていきます。

Adobe Stock コントリビューターの方であればもし自分の作品が権利問題に巻き込まれてしまったらどうなるの?という抱いたことがあるであろう素朴な疑問についてシチュエーションごとに確認していきましょう。

Q:ストックフォトに投稿した著作物が偶然他の作品と似てしまった!これって著作権侵害ですか? A:偶然似てしまったら侵害にはなりませんが、本当に偶然なのか?という立証の問題があります。

日本の法律上、著作権侵害となるにはまず既存の著作物をもとにしている、アクセスしているという「依拠性」という要件が必要です。全く知らずに類似のものを作ってしまっても著作権侵害にはなりません。
著作権侵害を訴える側は依拠されていることを立証しなくてはなりません。確固たる証拠がない場合、本来の著作物と類似している著作物、2つの類似している部分について、不必要であるはずの部分まで同一であるとか、似ている部分がこんなにもあるなど、依拠していないとこれは作れませんよね、という立証の仕方がされることが多く、これをもとに裁判でも判断されることになります。

Q:私の写真が著作権侵害されています!損害額ってどうやって決めたらいいんでしょう? A:ストックフォトに登録していることが損害額算出の有力な材料になる可能性があります。

いくらになるかは最終的には裁判の結果が出るまでわかりませんが、ストックフォトで写真を販売していた場合、損害賠償額の算定の際の有力な参考価格になるでしょう。つまり、1枚単位の販売額を基に、著作権侵害されたことで本来正規で売っていればこれだけ売れていたという、本来取得できたであろう金額が損害額として認められることは大いにあり得ます。著作権侵害されてしまった写真のストックフォトに登録している期間の機会損失ですね。

番外編 著作権侵害行為を捕捉しやすいのが写真の特徴

昨今の技術の発展から、インターネットを利用してグラフィックや画像といった著作物の著作権侵害行為を探すことが簡単になってきているといえます。
しかし、写真や画像にはその傾向があるといえますが、音楽や映像といった著作物の場合だと、聴き比べたり、楽譜を読んだり、映像を観て比較したりと、人による骨の折れる一定の手間・作業が必要ですし、また、そもそもどこからどこまでが一つの著作物なのかも不明確な場合もあるでしょう。もちろん、技術的・機械的に同じ音楽や映像を補足する手段が実際に使われ、日々進歩してきていることは認識していますが、写真や画像などに比べると、まだまだ難しい面があることは否めません。写真や絵、グラフィックは1枚で完結しているものが多いことが特徴といえます。そして、侵害行為を捕捉したい時、その特徴が大いに役立ちます。これらは著作権侵害行為を捕捉しやすいし捕捉されやすいということですね。撮影する側にもより高いリテラシーが求められるともいえるでしょう。

Q:自分の写真の著作権侵害行為が海外で行われていた場合、どうすればよいですか? A:侵害行為が行われている海外の国の著作権法に基づいて検討する必要があります。

まず、著作権はどこかに申請したら権利が生まれるといったようなものではありません。著作物が生まれた瞬間に権利が生まれます。そして日本において著作権が生じるのはもちろんとして、ベルヌ条約という条約を締結している国においても同時に著作権が生じます。つまり、同条約を締結している海外の国の複数国で同時に著作権を持つことになります。海外において著作権侵害行為が行われていた場合、日本の著作権に基づいて訴えることは基本的にはできません。主権侵害になってしまうからです。あくまでも侵害行為が行われている海外の国の法律に基づいて侵害にあたるかを検討し争っていくこととなります。著作権はあくまでも国ごとのルールによるのです。

Q:写真を撮るにあたって権利を把握しておくにはどうすればいいのか教えてください。 A:大まかでもよいので著作権法を簡単に学んでおきましょう。

概要としてでも、著作権法上自分にどのような権利があり得るのか、逆に他者にどういう権利があり得るのか、どういったときに権利が制限されるのか、などを知っておきましょう。気づかずに権利を侵害したり、されたりすることを未然に防ぐことができるかもしれません。ただ、法律の条文は原則的にカタカナを使わないように書かれているし(例:コンピューターは「電子計算機」「電子情報処理組織」)、普段読みなれないような用法・決まりのもと、堅苦しい文体で書かれていますので、相当に読みにくい部分があると思われます。いきなり法律の条文そのものを読み始めるのではなく、まずは簡単にまとまられたものに目を通し、理解のとっかかりを作るとよいでしょう。基礎内容だけでもとにかく知ることが大切です。

まとめ

写真にまつわる権利問題について色々なケースを想定して触れました。写真ならではの特性や著作権ならではの特性を理解しておくことは権利問題の回避に繋がることは勿論、著作物を正しく保護してもらうことにも役立つでしょう。また、AdobeStockが写真が売れたらお金が入るという営利は勿論、権利保護に役立つかもしれないという利点についてはご存知なかった方が多かったのではないでしょうか。クリエイターの権利を著作権にしっかり守ってもらった上で、ストックフォトでマネタイズや腕試しを楽しんで見ませんか?写真撮影行為が日常をもっと楽しく、もっと豊かにしてくれることでしょう。

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