連載/hueが直伝! “売れる“料理の撮り方、見せ方。 #13 炒める! 茹でる! “調理写真”を10倍美味しく撮る方法 #Adobe Stock

【連載】 hueが直伝! 売れる料理の撮り方、見せ方

シズル感あふれる食のビジュアルを創るプロ集団hue(ヒュー)。同社の近藤泰夫が、そのワザを伝授する連載の第13回目です。今回は、レシピサイトやレシピ本でお馴染みの、調理中の写真(プロセスカット)を上手に撮るためのちょっとしたワザを紹介します。

実は、最も「美味しそう」 に撮れる瞬間

熱々のラーメンのパッケージから、食事中のスナップ、あるいはみずみずしい果物の写真まで――。
あらゆる“食の写真”を撮っている私ですが、個人的に、「これこそが最も美味しそうに見える写真だ」と考えているジャンルがあります。

それが「調理写真」。

言うまでもなく、茹でる、炒める、焼く、あえる……といった、料理のプロセスを切り取った写真のこと。そんな調理写真こそ、私は最も美味しさを伝えられる、と考えています。
たとえば。こちらを見てください。

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『アサリとワタリ蟹のトマトペンネ』の完成カット。トマトの赤とバジルのグリーンのコントラストもきいた、雰囲気があって美味しそうな写真です。ただ、下の写真と比べてみてください。

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こちらは、前のペンネを皿に盛り付ける直前の調理中の最後に撮ったもの。ペンネとソースをフライパンの中でからめている一瞬を切り取った調理写真です。
「ジュッ」というフライパンの奏でる音と、「ふわっ」と優雅にたちのぼる湯気とソースのいい香りがこちらまで漂ってくるよう、ですよね。

この連載で繰り返しているように、私は、料理写真によく求められる「シズル感」を、「五感を刺激して美味しさを感じさせること」と捉えています。
考えてみれば、五感を刺激する「音」や「香り」や「熱」は完成した料理より、むしろ料理中にこそ現れる。炒めたり、茹でたり、あえたり、焼いたり。つまり、そうした調理のプロセスを切り取ることこそ、シズル感あふれる写真を撮るチャンスというわけです。

だから、レシピサイトやレシピ本などでよくみる、調理途中の分解写真などとしてはもちろんのこと。メニューやパッケージを際立たせる一枚としても、「調理写真」は大いに需要があると考えています。あまりストックフォトでは見ないジャンルだと思いますので、これから売れる可能性は高いと思います。

その調理写真はどう撮るか。まずは前出の『アサリとワタリ蟹のトマトペンネ』の調理写真を連続でお見せしましょう。

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オリーブでオイルアサリを炒めます。

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トマトソースとバジルを入れます。

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茹でたペンネを入れます。

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からめて、完成!

基本は撮影前に「工程が何分割になるか」をしっかり認識し、何をしているシーンか伝わるよう「寄り気味」に撮るのが基本。
加えて、こうした調理写真を撮るときに、実はひとつ実践したい「裏ワザ」があります。

というのも、家庭用キッチンのコンロが設置されている場所は、それほど広くない。ライトを立てるのが困難なところも多いはず。
そこで試してほしいのが、下のような屋外看板などを照らすために使う大光量「LEDランプ」とクリップ式のソケット。

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これをレンジの上にある換気扇用のフードの端っこに、パチっとクリップで設置。下の写真のように、カメラからみて半逆光になる位置に設置して、撮影してください。
すると、ちょうどいい陰影のある立体的な写真に。同時にハイライトも入るのでツヤ感もきれいに出せます。瞬間を切り取る必要がある調理写真には最適なライティングになるというわけです。

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実は消防法によって、家庭用コンロの上には高さ1メートル以内に換気扇とフードをつける義務があるんです。この高さが、ちょうどこのクリップ式の照明を取り付け、半逆光のライティングをするのにちょうどいいところに取り付けられます。LEDライトとソケットはネット通販などで数千円で手に入ります。簡単、かつリーズナブルにシズル感あふれる調理写真がとれるので、ぜひお試しを。
※火災や事故の原因になりますので、ライトの電源コードには細心の注意をはらい火元に近づけないようしてください。

美味しさがぐっと引き立つ調理の瞬間を押さえられるはずですよ。

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参考写真撮影:鈴木孝彰(hue inc.)