ダイバーシティ向上の武器としてのデザインと、その提唱者が語るシニアデザイナーの責任 | アドビUX道場 #UXDojo
エクスペリエンスデザインの基礎知識
この記事は、デザインを手にコミュニティのために戦うことの意味や、デザインリーダーシップが重要である理由について、ロンドンを拠点とするデザイナーのローラ・オイレオ・ピアソンが語った言葉を紹介します。あなたは自分の中のデザインの戒律に従っていますか?
ロンドンのある地区は、人口の26%を黒人が占めています。この地区では, 高セキュリティ精神障がい者施設の入居者の50%、低~中程度セキュリティの施設の入居者の67%が黒人です。
この状況について、ちょっと考えてください。
こうした不均衡な数値は、英国に存在する大きな精神健康格差の一部です, ランベス黒人ウェルネス委員会によると、特に黒人男性は、深刻なメンタルヘルスの診断に臨む可能性が、白人男性よりも17倍高いということです。
これは社会問題です。では、デザインの問題でもあるでしょうか?
ロンドン在住のUXデザイナーであるローラの答えはイエスです。彼女は次のように話しています。「私たちはデザインを社会的な行動に使うことができます。デザイナーとしてこの問題の改善のために何ができるか、デザインコミュニティに問いかけることができます」
不平等に取り組む道具としてのデザイン
ローラはRooted Innovationという名の団体に関わっています。この団体は、英国のマイノリティの民族に影響を与えている不平等のいくつかに対処する手段として、デザインを使おうと試みています。 設立者は、ジュリアン・トンプソンという黒人のサービスデザイナーです。彼は、デザインが議論のより大きな一部になる必要性を理解していました。ローラによると、彼は次のような厳しい質問を尋ねていたそうです。「なぜ、黒人男性と話をする奉仕活動のデザイン案を議論している部屋の中で、私は唯一の黒人なのでしょうか?」
Ladies that UX ロンドンの主催者、ローラ
ジュリアンは、ローラと他の数名を説得して、共同で昨年Rooted Innovationを設立しました。組織は、チーム内のメンバー、エージェンシー、第三セクターの組織と協業し、政府のチームと連携して、「マイノリティのコミュニティのためのデザイン」に関わる考慮事項に取り組んでいます。組織の壮大な野望は、より望ましいな結果に向けた会話を発展させる目的ために、他の人々が世界に取り入れることができるコンテンツの作成です。
「私は、自分のコミュニティに影響する領域に、自分のスキルセットを集中できるようになりました。それにより、現在存在している不平等の一部に対処し始められられるのではないかと期待しています」とローラは述べています。
このすべての活動を、彼女はボランティアとして行っています。
日中は、彼女は、ブロックチェーン企業のための技術ソリューションを開発している会社Chainspaceで製品戦略をリードします。夜は、Ladies that UXロンドンに出席します。10月にはボストンで行われたTalk UX conferenceで講演もしました。彼女は熱心な指導者として、他のデザイナーがビジネスとリーダーシップのスキルを伸ばすための支援に注力しており、また、すでに母親似の強い性格の兆候を示しつつある幼児の母でもあります。
UX デザイナーの責務
「ダーマ」は、仏教、ヒンドゥー教、シーク教などのいくつかのインドの宗教に見られ、多くの意味を持つサンスクリット語です。西洋の言語に直接該当する単語はありませんが、ヨガのように西洋化された精神的な修練の分野で研究されています。より崇高な目的や正義を行う義務として理解される種類の言葉です。
ローラと話すとき、ダーマのような言葉を直接議論していなくても、彼女の言葉からはその概念が発せられます。デザイナーの仕事の目的は世界をより良い場所にすることであり、現在よりも良い場所として残すことであると、彼女が情熱的に考えているのは明らかです。
「私たちデザイナーが日常の中で下す決定が、たとえ一人の人にでも良くない影響を与え、その理由が考慮する方法を知らなかったことにあるのなら、私たちはもっとうまくやるための努力をするべきです」と、ローラは言います。
「結果が皆に平等になるよう気を配るのならば、私たちは最善の努力をして、何が違っているのか?その差をサポートする最善の方法は何か?を考えなければなりません。デザインにおいて、それが私たちの存在理由です。私たちは、世界のあるべきビジョンを示すためだけに存在するのではなく、世界をそこで暮らす住民に適した場所にして、それを実現している一翼を私たちが実際に担っていることを確認するために存在します」
これは理想主義などではありません。UXデザインのキャリアを目指す人々は、一般的に、人々を助けようとする傾向があります。彼女は、デザイナーという立場を、変化の潜在的な機会を見つけ出し、それを引き起こす役割と見ています。
「これは政治的な行為ではありません。何か良い行いをしたくて、良い行いをする方法を知っていたとしたら、良い行いをしない理由は無いでしょう?それが簡単にできることなら、なおさらです」
Pixel Up 2018で講演するローラ
デザイナーの責任としてのリーダーシップを学ぶ
もちろん、真に変化を引き起こして違いを生みだすには、デザイナーは周囲を導く方法を知らなければなりません。それが、デザインという手段を使う立場について、ローラが指導力を重視している理由です。
「特にデザイン領域に関しては、ユーザー中心のデザイン経験を持つビジネスリーダーが、いまよりももっと必要だと考えています。それが意味するところは、私たちデザイナーは、キャリアをどう進化させるかという問題に目を向けなければならないということです。ある程度の経験を積んだデザイナーは、キャリアの次の一歩と、自分がしたいことを選択する必要があります」とローラは言います。「今、デザインリーダーシップが注目されつつあります。これはデザイナーに指導役へのステップアップが求められる領域です」
彼女はこの話題について、Talk UXをはじめとするカンファレンスで頻繁に語り、その中で、リードする立場に立つことに対する抵抗が、デザイン業界が抱える大きな問題になっている状況を追求しています。
「私たちはより高い賃金を希望し、より多くの権限を望んでいます、しかし、私たちは管理する立場になりたがりません」
だからこそ、ローラはLadies that UXようなグループに参加しています。それは、女性に成長する機会を与え、同時にその過程をサポートするコミュニティです。デザインリーダーシップが自身の目指す未来なら、このようなグループに参加して、その領域における自信とスキルを構築し始めることができるでしょう。
より多くのデザイナーがリーダーシップの役割を担うようになれば、若手デザイナーもその分野に関わる機会を与えられ、最終的にデザインを通して変えようとしているもの、それが仕事であれ、コミュニティであれ、さらにその先にあるものであれ、より大きな影響を与えられるようになるでしょう。
「私たちは責任を持つ立場になることを受け入れるべきです。そうすれば、素晴らしい仕事をする後輩のデザイナーのための場所を作れるかもしれません。それは、特にシニアである私のようなデザイナーにとって重要なことです。私たちは、その一歩をもっと受け入れるべきです」
この記事はMeet Lola Oyelayo-Pearson, an Advocate for Increased Diversity in Design(著者:Sheena Lyonnais)の抄訳です