グラフィックデザイナー2人がUXデザインを身に付けるまでのそれぞれの道のり | アドビUX道場 #UXDojo
エクスペリエンスデザインの基礎知識
グラフィックデザイナーがデジタルの仕事に関わるのはよくあることです。Eメールのキャンペーン、バナー広告、Webサイトなど、ビジュアルデザインがメインのデザイナーは、スキルや才能のの自然な発展として、UXデザインに関わる機会が増えています。
グレース・ハートマン
グレース・ハートマンはコロラド州デンバーにあるSpire Digitalに勤務する、プロダクトデザインのディレクターです。彼女はチームとともに、航空、医療、B2Bテクノロジー、教育といった業界のクライアントのプロジェクトに取り組んでいます。コーリー・ルイスは、現在、国際的なプロフェッショナルサービス企業でクリエイティブディレクターとして働いています。彼の経歴は、紙とデジタルの雑誌や本の出版、そして保険業界などの製品やUIのデザインでした。
2人に共通するのは、自身のグラフィックデザインのスキルを積み上げるためにUXのコンセプトを利用したことが、デザイナーとしての境界を広げる手段になってきたという点です。彼らがどのようにUXを学ぶようになったのか?その過程で見つけたことは何か?彼らの経験談を聞いてみましょう。
UXデザインスキルの獲得に向けた準備
Webプロジェクトへの参加はグレースのUXの世界への一歩となった 出典: dribbble.com/gracehartman
グレースが働いていたエージェンシーから急にUXデザイナーが離職した時、彼女はすぐ新しいスキルを学び、その穴を埋めなければなりませんでした。「私は彼のWebプロジェクトに飛び込み、代わりに作業を始めなければなりませんでした。当時、そのチームは、私が慣れ親しんだツールであるPhotoshopを使っていました。私はただプロジェクトに深く入り込み、そして、私の新しい役割には私がこれまでに培った全てのスキルがぴったりはまることを発見しました。それは物理的な世界とデジタル世界の融合、すなわち、私のグラフィックデザインスキルの、デジタルメディアへの適用でした」。この機会が、彼女のプロセスやスキルにUXを取り込むきっかけになりました。
Macleansのような雑誌のデジタル版の仕事は、コーリーが最適なユーザー体験のデザインについて考えるきっかけになった 出典: coreybeep.com
コーリーの場合は、Macleansマガジンのデジタル版での仕事が、画面向けのデザインの世界への入り口になりました。彼は、可能な限り良い読者体験を提供する手段を見つけたくて仕方ありませんでしたが、要件をどうまとめればよいのか全く見当がつきませんでした。「私は、Macleansで働き、雑誌のデジタル版をInDesignを使ってつくることになりました。最適なユーザー体験とそれを実現する最適な手法についてはチーム内で良く衝突したものですが、自分の見方を共有する言葉を持ち合わせていないことがしばしばでした」と彼は言います。彼が失業中の時、ある友人がUXのコースを勧めてきました。「スキルに加えて職探しの選択肢を増やすには良い機会だと思いました」
UXデザインのコツを学ぶ
コーリーはより正規の教育コースを選択し、12週間に及ぶパートタイムのUXクラスを受講しました。学内の環境で学ぶ機会を得て、実際に手を動かすプロジェクトに参加しました。それとは対照的に、グレースのUXの学びの場は、仕事の現場でした。「技術やソフトウェアを学び、開発者たちと会話して、とにかく練習を繰り返しました」とグレースは語ります。
「レスポンシブデザインや、開発への配慮などは、最も大きな変化でした。総合的には、UXとグラフィックデザインとの共通点は、相違点よりもずっと大きかったと思います。ごく自然にユーザーを理解して、問題を指摘し、ユーザーにとっての重要性を順位付けし、会社のビジョンと価値を示せました。グラフィックデザインでも異なる文脈でこれらは既に行っていたことでした」
授業の課題を通じて、スケッチ、プロトタイプ、ユーザーテストなどのUXプロセスをすべて実践して、コーリーはUXを探り新しいスキルを学んだ 出典: coreybeep.com
UXを学んだことで、コーリーのアプローチは形になり、UXについての理解も広がりました。「私は他の人たちのようにUXをちゃんと理解していませんでした。もっとUIや画面の中のデザインの話だと思っていました。コースを受講したことで、問題解決の手段としてのUXの理解を固めることができました」
彼もグレースと同様に、グラフィックデザイナーとしての考え方やアプローチとUXの間に多くの重複を見出しています。「ユーザー体験について考えるとき、他のアプリはどうしているか以外のことを言いたかったのです。UXを学んだことは、ステークホルダーと建設的な方法でユーザー体験の問題を議論するツールと言語を与えてくれました。私が何か気に入らないとき、それは個人的な問題ではなく、ユーザーに意味をなさないからです」
グラフィックデザインとUXデザインの共通点と相違点
「UXの分析の側面にこれだけ引き付けられたことには驚きました」とグレースは言います。「気に入っただけでなく、ごく自然に自分が受け入れたことに驚きました。というのは、以前は、UXやWebサイトの開発は手ごわく複雑だと考えていたからです」。開発者との会話や協業は手ごわさの軽減に大いに役立ち、成長志向のマインドセットを受け入れる支援にもなりました。
「一つのUXプロジェクトにあまりに多くのコンポーネントがあると感じていたのを覚えています。グラフィックデザインの仕事では、思考や詳細の大半はロゴのようなたった一つのコンポーネントに注がれていたものでした」
Spire Digitalの彼女のチームと働くグレース 出典: Spire Digital
コーリーは次のように言っています。「UXは私が思っていたよりもずっと良いものでした。より考えて、より調べて、問題を解決するのです。また、UXは、使いにくい構造のドアから、フィードバックの無い読み込み中の画面まで、実に多様で全てのものに当てはまります」
コーリーにとって、UXデザインとグラフィックデザインの違いのひとつは、自分の作業の提示方法でした。「グラフィックデザインを見せていた時は売り込んだり説得していたかもしれませんが、UXでは中立の立場を心掛け、ユーザビリティを改善するためのフィードバックなどに耳を傾けます」
多くのリソースが利用可能であることも、コーリーにとってはうれしい驚きでした。「たくさんのコミュニティが調査を行っていて、自分のプロジェクトに安心して採用することができます。自分が直接調査できないとき、他の人々がUXの課題について書いているものをオンラインで調べるのは、よい次善の策になりました」
UXの仕事への挑戦
自分にぴったりと合った仕事を見つけるのは困難なものです。コーリーが職探しをしていたとき、多くの相手が十全にUXを理解してはおらず、何を必要とするのかも把握していないことを見つけました。「私が身に着けたUXスキルが仕事探しに役立つかは、面接官のUXについての理解、それkが彼らにとってバズワード以上のものであるかどうかに大きく依存していました。少なくとも、人々は私が持っていたUXのマインドセットに敬意を払ってくれたと思います」
コーリーはグラフィックデザイン寄りの役職に就くことを決めましたが、引き続き彼の仕事にUXスキルを取り入れました。「それは自分にとって考え方の基盤を示してくれました。誰かがアイデアを伝えに来ると、ユーザーの立場に立つように努め、彼らがどのように感じるだろうかと考えました」
PlanOmaticとの継続する仕事は、Spire Digitalにとって実りあるクライアントとのパートナーシップだった 出典: www.spiredigital.com
グレースのキャリアは、引き続きユーザー体験にフォーカスしたものとなっています。彼女のグラフィックデザインのスキルは、特にブランディングについての仕事の時には、彼女の仕事の堅牢な基盤になっています。「私はデザインに目が利き、UXデザインのビジュアルの側面を素早くまとめられます。例えば、既存のブランドとスタイルガイドを使い、製品にそれを取り入れたりします」
彼女のお気に入りのプロジェクトのひとつは、不動産業者にサービスを提供する企業のオンラインの注文フローの仕事でした。「彼らには信頼され親しみやすいブランドがありました。私たちは、それを、忙しいユーザーが効果的にタスクをこなせるフローの中に組み込んだのです。私たちは会話帳の言葉を使い、、進捗を示す機能を付け、最後には達成感を与えるようにハイタッチのアニメーションを付けました」
グラフィックデザインとUXは良い友達
グレースとコーリーの体験が示すように、UXは、しっかりとしたグラフィックデザインスキルの自然な拡張、または進化となり得ます。また、UXに魅せられてその方向を深めるにせよ、ビジュアルに比重を置くにせよ、グラフィックデザインは常にあなたの味方になる素晴らしい基盤を成すスキルです。どちらの進路でもUXを学ぶことは可能ですが、グレースとコーリーの言うとおりなら、どちらのシナリオを選んでも、たくさんの学びを得てデザイナーとしての技量を広げ、いくつかの驚きを体験することになるでしょう。
この記事はLike Peanut Butter and Jelly: How Two Graphic Designers Added UX to the Mix(著者:Linn Vizard)の抄訳です