写真を選ぶ目が変わる。フォトリテラシー基礎講座 #2 : 目的とターゲットを考える #AdobeStock

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写真を選ぶ目が変わる! フォトリテラシー基礎講座

雑誌やタイアップ広告などを数多く撮影し、現在は広告写真を手がける写真家・善本喜一郎。2008年より宣伝会議の「編集・ライター養成講座」や「フォトディレクション基礎講座」で講師を務め、編集者、ライター、企業の広報担当者などに向けて「写真を撮るとは、ビジネスシーンに求められている写真とは」をテーマに、その方法論を経験に基づき教えています。

このブログでは、「数あるストックフォトの中で効果的な一枚を選ぶには?」をテーマに、みなさんのフォトリテラシー(=写真を読み解く力)が上がるような基礎知識をお伝えします。カメラマンの視点を知ることで、写真素材を選ぶ目は確実に変わるでしょう。

みなさん、こんにちは。前回のブログでは、「なぜ写真素材を使うのか?」ということを明確にするために、写真の性質や写真表現についてお話しました。今回は「目的とターゲット」について一緒に考えたいと思います。

1. 目的を意識していますか?

カメラマンは自分の知識や感性だけを頼りに仕事をしているわけではありません。特に広告写真は、そのブランドを好きになってもらい、売れる仕組みを作り出すという明確なゴールがあるため、依頼主やディレクターとの細かいすり合わせが必要になります。写真のコンセプトと目的を共有し、そこからブレないようにするためです。

ブランドに対する信頼を高めたい、新しい商品を使ってほしい、WEBサイトに親しみを持ってもらいたい。写真を使う背景には明確な目的があるでしょう。ただ格好良く撮っただけの写真だけでは何も伝わらないので、カメラマンは常に目的を意識しながら撮影やセレクトをしています。

ストックフォトの中から写真素材を選ぶ際も、同じように目的を意識する必要があります。その写真から何を想像させて、実際にどのような行動を取ってもらいたいのでしょうか? ビジネスは結果に繋げることが何よりも重要ですよね。いい写真は、読者や顧客に「選びたい」「出向きたい」と行動を喚起させる力を秘めています。

写真を通して伝えたいこと——つまり方向性やゴールが漠然としたままでは、大量の写真素材を前に頭を抱えることになるでしょう。選ぶべき一枚のイメージを浮かび上がらせるために、これからお伝えする項目について具体的に書き出してみてください。

Wavebreak Media/Adobe Stock

2. どのような世界観にしたいですか?

まずは、どのような世界観で表現するかを考えてみましょう。世界観は、被写体になる人やモノ、そして風景や背景が持つ空気感によって作られます。

たとえば、写真を通して伝えたいことが「ラグジュアリーな生活」だった場合。それを表す言葉は「高級感」や「上質感」でしょう。色はシックな黒や深い赤、ゴールドや焦げ茶などが合いそうですよね。その他にも、暗めの間接照明やアンティーク調の家具といった要素が浮かんできます。

一方で、伝えたいことが「丁寧な暮らし」だった場合。それを表す言葉は「ぬくもり」や「ナチュラル感」でしょう。色は白やアイボリー、緑や木材の色などが似合いそうですよね。柔らかな日差しが入ってくる窓辺、観葉植物やコーヒーが入ったマグカップなどが連想されます。

このように、醸成したい世界観を決めると、どのようなストーリーや設定を持つ写真素材を選ぶべきなのかが明確になります。

3. 誰に見てもらいたいですか?

「何を見せたいのか」が決まったら、次は「誰に見せたいのか」について考えてみましょう。制作物の向こう側には、必ず読者や顧客がいます。みなさんが伝えたいことと、見る側が知りたいことを一致させるのが大切です。

たとえば、若い読者層の女性誌で、白黒の威厳のある写真ばかりを使うということはあり得ません。また、職人向けの道具のカタログで、商品の雰囲気だけを伝えるような写真ばかりを使うこともないでしょう。

写真素材を選ぶときは独りよがりにならないことが大事です。ターゲットは若い女性なのか、年配の男性なのか、主婦なのか、何かの専門家なのか。そして、その人たちが好むのはどのような情報なのか。性別、国、年代、職業、ライフスタイルなどを考慮しながら、ビジネスターゲットに合ったものを選びましょう。

Wavebreak Media/Adobe Stock

4. どの媒体で使用しますか?

最後に考えたいのは、写真を使用する媒体についてです。媒体は大きく紙とデジタルに分けられますが、それぞれに適したものを選ぶ必要があります。

ポイントの一つ目は「明るさ」です。パソコンやスマートフォンなどは画面が発光しているので、暗めの写真でもそれなりに見えますよね。しかし、紙は光を反射しているだけなので、画面で見たときよりもさらに暗い印象になります。印刷物用の写真を選ぶときは、明るさの度合いに気をつけてみてください。

二つ目は「情報量」です。デジタルディスプレーは長時間眺めると目が疲れる、閲覧のスピードが速いなどの理由から、ゆっくりと写真を見せることには向いていません。インパクトがある分かりやすいものが好まれます。一方で、紙はディティールまで伝えられるので、情報量が多い写真とも相性が良いでしょう。

三つ目は「大きさ」です。スマートフォンは画面が小さいので、低解像度の写真でも表示できますよね。しかし、紙は高解像度の写真でなければ綺麗に印刷できません。ポスターなどのサイズに合わせて解像度を確認することが大事です。

Blend Images/Adobe Stock

IT技術が発達し、デジタルの勢いは年々増していますが、一方で“ディスプレーよりも紙媒体の方が情報を理解させるのに優れている”という研究結果も出ています。記憶に残りやすく、感情に訴えかける力が強いので、メッセージを発信し続けることでブランドのファンになってもらいやすいとも言えるでしょう。*1

どの媒体にもメリット・デメリットがあるので、それぞれの特徴に合わせた写真素材を選ぶことが大切です。

今回のブログはいかがでしたか? ぜひ、目的・世界観・ターゲット・媒体を意識してみてくださいね。次回は、「カメラマンが撮影時に必ず押さえるポイント」をお伝えします。どうぞお楽しみに。

いかがでしたか? Adobe Stockでは、3D素材を含め、写真やイラストを中心とした「通常アセット」を毎月10枚利用いただける年間サブスクリプションが、1ヵ月無料となるキャンペーンを引き続き継続中です。PhotoshopやIllustratorなどいつものアプリから直接検索でき、高解像度画像への差し替えも一発でできるため、高い作業効率を実現できます。まだの方はこの機会にぜひお試しください。Adobe Stockについてさらに詳しく知りたい場合はこちらをご覧ください。

次回は、「目的やターゲットの設定」を軸にお伝えしたいと思います。どうぞお楽しみに。

*1参考文献

・トッパン・フォームズ株式会社(2013年)「紙媒体の方がディスプレーより理解できる」 ダイレクトメールに関する脳科学実験で確認,https://www.toppan-f.co.jp/news/2013/0723.html?fbclid=IwAR1YcO4P_QGSqk0_e-Rt9qHVgFP_5-8l55tc26w5mwpuhuRc0qdrsir3acs