声を上げる企業:ブランドとしての使命は何ですか?#AdobeStock
Adobe Stock ビジュアルトレンド
2019年の2つ目のビジュアルトレンドとして、私たちは消費者と企業の関係における大きな変化に注目しています。今の時代、優れた製品あるいはサービスだけでは、顧客の愛着や信頼度を高めるのに十分ではありません。消費者が自分の中の価値観を頼りに消費をする傾向はますます強まってきており、企業は会社の姿勢を明らかにする必要が出てきています。
これまで大胆なメッセージを打ち出してきた歴史があるブランドにとっては、「声を上げること」イコール「社会問題の論争を巻き起こすこと」なのかもしれません(Nikeには私たちも注目しています)。しかし、そこまでしなくても効果的な企業姿勢の表明は可能です。問題意識を提起する優れたキャンペーンは、ブランドの従来のメッセージを広めることにつながります。大事なのは、多くの人々が共感する価値観にフォーカスすること。たとえば、子どもとの絆を深める父親のプラス面をアピールしたり、私たちにできる天然資源の保護を訴えたりと、問題に正面から取り組む企業の姿勢は人々の心に響きます。
これをビジュアルの世界にあてはめてみると、クリエイティブ制作において最も重要なのは、企業が力を注いでいる取り組みを伝える画像を選ぶことです。たとえば、環境にやさしい活動や社会的な正義、多様性、あるいは共感を呼ぶような活動をアピールするビジュアルです。
Adobe Stockでの昨年の検索傾向を見ると、「リサイクル」という検索語は53%増、「サステナビリティ」は50%増、「社会的責任」は43%増という結果でした。この傾向からも、顧客の心を動かすような主張とブランドとを結びつけるビジュアルこそが、最も効果的といえます。ぜひ、「声を上げる企業」をテーマにしたAdobe Stock,の特集ギャラリーやOcean Agency、TONLなどの社会的使命を持つコントリビューターの作品をご覧いただき、現在人気上昇中の問題意識を提起する作品に触れてみてください。
BONNINSTUDIO / Stocksy / Adobe Stock
購入することで支持を表明
企業が声を上げるというこのトレンドは、どれほどの広がりを見せているのでしょうか?最近のEdelmanの調査から、年齢層や所得水準を問わず、世界の消費者の64%が企業の社会的あるいは政治的な姿勢を購入の判断基準にしていることがわかりました。
同調査によると、購入者が製品の購入を検討するようになったきっかけは「製品の謳い文句を見て」と同じくらい「ブランドの社会的あるいは倫理的な取り組みについてのメッセージを読んで」が多かったそうです。回答者たちは、会社の姿勢を明らかにしているブランドをより支持したくなる、とも述べています。
上記の数値から、企業の姿勢表明は、ニッチ市場ではなくメインストリームでの関心を集めつつあることがわかります。こうした傾向の要因のひとつはソーシャルメディアです。SNSの台頭により、消費者は発言力を得たように感じ、事実、企業の倫理観を注視し、意見を述べることが、かつてないほど簡単にできるようになりました。消費者は、自分たちが住みたいと思う社会を築くために企業を選択し、変化への支持を表明するためにモノを買うようになってきているのです。
kkgas / Stocksy / Adobe Stock
何から、どのように、を透明に
姿勢を明らかにする側から見れば、どのように商品が作られているのか、プロセスを透明にすることが戦略のひとつといえます。オーガニックフードはその代表例で、まだ成長を続けている巨大なマーケットです。また、同様に注目を集めているのが、サステイナブルなファッションです。最近の<u>調査では</u>、アメリカ人の25%近くが持続可能な衣類を購入しており、3分の1が持続可能な方法で生産された衣類にはもっとお金を支払ってもいいと回答しています。
アパレルブランドに関してもうひとつ、消費者が最も気にかけている点は、従業員の適正な賃金と権利です。そのため、大手服飾ブランドは人権について真剣に向き合い始めました。例えばLevi’sは、同社のサプライヤーと協力し、従業員の金銭面、健康面、家庭面のニーズを支援するプログラムを実施しています。
透明性への賢明なアプローチとして、家具やホームグッズのメーカー、Fogo Island Shopは、食品の栄養成分表に倣い、経済成分表なるものを作成しました。これを見れば、購入者は自分が支払った金額の配分先と、そのお金がいかに地域社会に役立てられているかを知ることができます。
VeaVea / Stocksy / Adobe Stock
ブランドのポジションを明確に
声を上げる企業の中でも大きなインパクトを与えるケースは、自社の事業とブランドに合ったメッセ―ジとは何かを十分に理解している会社です。例えば、燃料電池自動車MIRAI用にトヨタが選んだ<u>エコフレンドリーな 屋外広告(ビルボード)</u>は、スモッグを吸収する素材で覆われており、汚染された大気を浄化します。パタゴニアは税制改革による減税措置で得た1000万ドルを環境運動に寄付しています。リサイクルボトルから作られたサスティナブルな水着を売り込むMadewellや、海に漂うプラスチックごみを使用したシューズをアピールするAdidas。さらにはPampersまでもが、「Love the Change」と題したコミカルで心温まる広告を展開し、オムツ交換を含め、育児に積極に関わる父親たちを応援する姿勢を打ち出しています。
いずれのブランドも物議を醸すのではなく、会社の事業目的を発展させ、皆が支持できる主張にまで高めていくことで成功しています。
The Ocean Agency / Adobe Stock
一方、上記のブランドよりはやや議論を呼びそうな積極的な行動が、創業当初から根付いている企業もあります。その中でも成功している企業は、多くの顧客から厚い信頼を勝ち得ています。アイスクリームメーカーのBen & Jerry’sは何年にもわたり、自分たちが支持する運動への寄付額を開示し、人々の意識を高めるためのスペシャルティフレーバーを展開するなど、会社としての取り組みを示してきました。2015年には、環境運動のための嘆願書への署名を呼びかけ、Save Our Swirledと称するフレーバーを発表。30万人もの人々を行動に動かしたほか、2017年のHome Sweet Honeycombでは、アイスクリームを愛する人々に、ヨーロッパにおける難民の再定住を助ける法律への支持を訴えました。
Jarrod / Adobe Stock
Tom’sもまた創業当初から困っている人々に靴を寄付し、社会的な使命を果たしてきた企業です。そのため昨年、銃による暴力をなくすために500万ドルの寄付を約束し、 Tom’sのウェブサイトから議会へ直接ポストカードを送ることができるように、すぐさま消費者は、同社が積極的に活動に取り組んでいることを理解しました。最初の12時間で58,000人もの人々が銃規制支持のポストカードを送ったそうです。
もちろん、話題性の高い広告の中には、論争に発展するものもあります。Nikeが アメフト選手のColin Kaepernickを起用したキャンペーンを行った際は、賛否両論が巻き起こり、その一方で株価は急上昇しました(同選手は人種差別への抗議として、試合前の国歌斉唱時に起立をせず注目を集めていました)。Nikeのような大胆な企業(そもそも、同社のキャッチフレーズが「Just do it」です)にはぴったりのキャンペーンだったといえます。これに続く今年の広告「Dream Crazier」も同様にパワフルで、スポーツ界における男女間のダブルスタンダードに対して声を上げるSerena Williamsをフィーチャーしています。この広告はアカデミー賞授賞式の際に公開され、瞬く間に拡散されました。
TONL / Adobe Stock
Gilletteは、#MeToo運動が高まる中、最高の男とは?を問う「The Best Men Can Be」キャンペーンを打ち出しました。彼らはリスクを取ったわけですが、結果として文化的な議論に火を付け、一種の企業姿勢のアピールとなりました。消費者の反応はさまざまでしたが、この広告により、人々を引きつけ、ブランドとのつながりを生んだことは確かです。Gilletteは次のように説明しています。「男性が最高の自分になることを応援する企業として、私たちは、男であることの意味をポジティブに、達成可能なものとして、誰をも排除せず、健全に解釈するよう促していく責任があります」。同社は、若い男性がロールモデルを見つけられるよう支援を行う団体への寄付計画を実行し、好調な売上を維持しています。
私たちがシェアする価値観に訴えたり、既成概念を打ち破ったりすることで、キャンペーンは成功する可能性があります。ただし、ここで注意点がひとつ。単なるマーケティング・キャンペーンでは、声を上げたところでうまくいきません。消費者は自分たちの消費と実際の変化が同等であることを望んでいるため、企業の熱心さを注視しています。つまり、真摯な姿勢が足りなければ失敗に終わるということ。記憶に新しいのが、ケンダル・ジェンナーを起用し、警官による暴力行為反対の抗議を利用しようとしたペプシの広告です。消費者は即座に彼らの姿勢を見抜きました。ある分析によると、このCM放映最後の日、「tone deaf(感覚が鈍い、空気が読めない)」という言葉を含むデジタルコンテンツの実に77%が、ジェンナーやペプシに言及したものだったといいます。
aryfahmed / Adobe Stock
企業やデザイナーにとってのポイント
自分の中の価値観を頼りに選択をする消費者の共感を呼ぶコンテンツを作成しようという場合に、考慮すべき大事な点は以下の通りです。
■論争を巻き起こさなくても企業姿勢をアピールする効果的なキャンペーンは可能です。会社が関心のある問題に対して、物議を醸すことなく、いかにして取り組みの成果を上げているか、さまざまな例を示してブランドの利害関係者の理解を深めてください。
■広告を制作する際は、ブランドのDNAに忠実で、かつ明確な親しみやすいメッセージを見つけましょう。
■インパクトの強いビジュアルアセットを選ぶ際は、どこに向けてアピールするのか、ぶれることのないよう中心となるメッセージを必ず念頭に置いて検討してください。環境にやさしい活動や社会的な正義、多様性などテーマは何であれ、ダイナミックなビジュアルコンテンツには、ブランドの目的を伝えるだけでなく、人々を引きつける力があります。
■広告で企業姿勢をアピールし、成功するケースは、自社のブランドイメージを強化するものは何かを十分に理解している企業です。その認識を基にすべてのクリエイティブプロセスを進めていくことが肝心です。
何を購入するか、個々人の選択に政治的な力がある、という意識が高まるにつれ、消費者はかつてないほどに企業の社会的、環境的な取り組みに目を向けるようになってきています。地域が直面している課題や国際問題について、リアルに、切迫した状況を見せつつ、希望の持てる方法で表現した画像は、ブランドがこの機会を活かすうえで役立つでしょう。
Lindsay Mound / Adobe Stock
「声を上げる企業」について、更に詳しく知りたい方は<u>問題意識を提起する作品を揃えたAdobe Stockの特集ギャラリー</u>をご覧ください。私たちは消費者が最も関心のある問題を題材に作品づくりを行うアーティストに話を伺っていく予定です。ぜひ引き続き本ブログをお楽しみください。
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この記事は2019年4月10日にAdobe Stock Team により作成&公開されたBrand Stand: Show Us Your Missionの抄訳です。
*ヘッダーイメージ:Mosuno / Stocksy / Adobe Stock