自分で自分の働き方を設計する——残業ゼロだけではない、働き方改革実践のコツ
近年、働く環境やワークスタイルの変化を背景に、働き⽅改⾰が加速しています。しかし残業ゼロや有給休暇取得だけが働き⽅改⾰ではありません。⽬指すべきは、⽣産性を上げ、創造性を発揮できて働くことが楽しくなる新しいやり⽅の構築です。ではそんな働き⽅の実現に向け、デジタルソリューションはどのように貢献するのでしょうか。2019 年 3 ⽉ 20 ⽇に開催された「デジタルファースト × 働き⽅改⾰ 100%デジタル化したドキュメントプロセスが実現する新時代のワークスタイル」では、先進企業 2 社の事例やアドビシステムズのドキュメントソリューションからこの疑問を紐解いていきました。
最初に登壇したのは、NEC ネッツエスアイ 営業統括本部 マーケティング本部 本部⻑の吉⽥和友⽒です。同社は企業や⾃治体などにネットワークソリューションを提供しているほか、10 年超にわたり⾃社とお客様のオフィス空間・ICT を活⽤したワークスタイル改⾰事業にも注⼒しています。
NEC ネッツエスアイ 営業統括本部 マーケティング本部 本部⻑ 吉⽥和友⽒
そんな同社が働き⽅改⾰に着⼿したのは 2007 年のこと。きっかけは、IT 分野のオープン化が進んだことでした。従来のように、統制された業務プロセスでシステムを構築すればいいというわけでなく、さまざまな要件が複雑に絡み合い、スピードも要求されます。こうしたことから「同じやり⽅で業務を進めていては対応できないと考えました」と吉⽥⽒は説明します。
そこで同社が実施したのは、書類や会議室を⼀掃し、執務スペースと会議スペースをオープンにしたオフィス改⾰でした。紙をなくした理由は、個々⼈が持つ知⾒やノウハウを共有し、誰がどんな仕事をしているのか可視化するためです。
多くの企業はペーパーレスやデジタル化を段階的に進めがちですが、吉⽥⽒は「改⾰は⼀気に進めることが⼤事です」と⼒説します。この取り組みにより、キャビネットなど紙の保管スペースが削減できたため、オフィスがスリム化し、コストダウンも実現しました。また会議スペースがオープンになったことで、コミュニケーションが活性化し、意思決定スピードが劇的に速くなったそうです。
以前は紙やキャビネットでオフィス内が分断されていたが、開放的な新オフィスにより情報共有や意思決定スピードが加速
これを踏まえ、同社は 2015 年からさらなる働き⽅改⾰を推進。2015〜2017 年は「働き⽅改⾰ 1st STAGE」と位置づけ、全社員を対象にテレワークを導⼊し、働く時間と場所の制約を取り払い、業務を⾃分で設計する⼟台を作りました。
2018 年から始まった「働き⽅改⾰ 2nd STAGE」では、イノベーション創発をテーマに、デジタルトランスフォーメーションを活⽤して新しい働き⽅を提案する社⻑直轄のチームを作りました。さらに他拠点と常時接続して、空間の枠を超えていつでも対⾯会議ができる共創環境も整備。こうしてコラボレーションが活性化することで、イノベーションが⽣まれやすくなります。
「働き⽅改⾰とは、社員の意識や動きを変えることです。IT を活⽤すれば、情報やコミュニケーションがオープンになり、場所や時間の制約から解放され、働き⽅を⾃分で設計できるようになります。当社はそんな働き⽅改⾰を⽬指し、これからも進んでいきます」と吉⽥⽒は話し、講演を締めくくりました。
業務の 8 割は紙に依存! Adobe Document Cloud で紙から脱却、自由な働き方を実現
続いて登場したのは、アドビシステムズ(以下、アドビ)ドキュメントクラウドマーケティング プロダクトマーケティングマネージャーの昇塚淑⼦です。
実はアドビはドキュメントソリューション分野において 25 年以上の実績があり、「Adobe Document Cloud」(以下、Document Cloud)というソリューションを提供しています。昇塚は、この Document Cloud が働き⽅改⾰にどのように貢献するのか、デモンストレーションを交えながら説明しました。
厚労省の調査によると、従業員の意欲が⾼く、業績の良い会社の社員は「働きやすい」「やりがいがある」と答える⼈が多いそうです。紙依存の業務から脱却することは、⾃分の働き⽅を⾃分で設計できる機会となり、結果として会社の業績を上げることにつながります。つまり「社員⾃らが⾃律的に働き⽅を設計できる企業は伸びる」といえます。
紙業務からの脱却により、効率性と創造性、コラボレーションを加速する Adobe Document Cloud
「Document Cloud で、なぜ働き⽅を⾃律的にデザインできるのか」と疑問に思う⽅もいるでしょう。これに対し昇塚は「Document Cloud は業務の 80%を占める紙依存型の業務から解放します。さらにモバイルアプリによって場所や時間の制約をなくすことで、⾃律的に働き⽅をデザインできるのです」と話します。また Document Cloud なら、セキュリティ対策も万全。⾃由な働き⽅を安全⾯からサポートできます。
スマートフォンで Document Cloud のデモを⾏うアドビシステムズ ドキュメントクラウドマーケティン グ プロダクトマーケティングマネージャー 昇塚淑⼦
デモでは Document Cloud のモバイルアプリを通じて、Office ⽂書を PDF 化して確認したり、その PDF をチームで共有したり、承認フローを確認したりなど、スマートフォン 1 つで業務を遂⾏できる実例が紹介されました。ある⽶国企業では、承認プロセスの効率化を⽀援する Adobe Sign の導⼊により、契約業務のスピードは 21 倍になり、1 ⼈当たり年間 50 時間の業務効率化を実現、383%の ROI を達成したそうです。
情報の一元化がもたらしたワークスタイル変革とは——積水ハウスの挑戦
最後に登壇したのは、積⽔ハウス IT 業務部部⻑(システム企画/IT 推進担当)上⽥和⺒⽒です。
積⽔ハウス IT 業務部部⻑(システム企画/IT 推進担当)上⽥和⺒⽒
積⽔ハウスでは、2010 年から 2015 年まで「邸情報プロジェクト」と呼ばれる改⾰を進めました。これは情報を⼀元化することで、各部⾨から⾃由にデータを参照し、⼀気通貫の業務改⾰を実現するというプロジェクトです。
コンセプトは、必要とするコア情報を定義し、それを⼀気通貫で全社からどこでも使えるようにすること。データが⼀元化されていればどこからでも必要な情報を参照できるので業務の⾃由度が上がります。結果、年間 87 億円のコストダウンにつながり、スピードも向上しました。上⽥⽒は「⽬的を明確にし、⼀気に進めたことが成功のポイントだったと思います」と振り返ります。
このプロジェクトを実現したことで、2013 年から始めた「スマートデバイスを活⽤したワークスタイル変⾰」の成功につながりました。これは全社員に 2 万台の iPad を付与し、業務活⽤を⽬指した取り組みです。KPI に「全社員、100%の利⽤率」を掲げ、業務アプリや必要なデータ、設定などを事前に IT 部⾨が⾏うことで、使⽤を促しました。ゲームのダウンロードも⾃由で、「とにかく使って持ち歩いてくれれば良し」というコンセプトです。
iPad に業務に必要なアプリ、データを搭載してワークスタイルが劇的に変化
事前に邸情報プロジェクトを遂⾏していたため、iPad から必要な情報にアクセスしやすくなり、ワークスタイルが劇的に変化しました。震災などの際には、被害状況を把握するアプリを即リリースし、iPad を使って現地の状況を登録・共有することで、迅速な対応が可能になったそうです。
こうした実績を背景に、2018 年は「真の働き⽅改⾰に向けて」という理念の下、さらなる業務効率化に着⼿。会議や検査で忙殺される現場監督の業務改⾰に取り組み、労働時間を変えることなく、間接業務の時間を減らすことで本業の時間を増やすことに成功しました。
テレワークの導⼊や男性社員の育児休暇取得など、新しい働き⽅にチャレンジしている積⽔ハウス。最後に上⽥⽒は「こうした⾵⼟ができたことも、⼀連の取り組みの成果だと思います」と評し、セミナーは盛況のうちに終了しました。