写真を選ぶ目が変わる。フォトリテラシー基礎講座 #3 : カメラマンが撮影時に必ず押さえるポイント【前編】 #AdobeStock

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写真を選ぶ目が変わる! フォトリテラシー基礎講座

雑誌やタイアップ広告などを数多く撮影し、現在は広告写真を手がける写真家・善本喜一郎。2008年より宣伝会議の「編集・ライター養成講座」や「フォトディレクション基礎講座」で講師を務め、編集者、ライター、企業の広報担当者などに向けて「写真を撮るとは、ビジネスシーンに求められている写真とは」をテーマに、その方法論を経験に基づき教えています。

このブログでは、「数あるストックフォトの中で効果的な一枚を選ぶには?」をテーマに、みなさんのフォトリテラシー(=写真を読み解く力)が上がるような基礎知識をお伝えします。カメラマンの視点を知ることで、写真素材を選ぶ目は確実に変わるでしょう。

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みなさん、こんにちは。前回のブログでは「目的とターゲット」を意識して、写真のコンセプトを固めることの重要性についてお話しました。今回は「カメラマンが撮影時に必ず押さえるポイント」と題して僕がどんなプロセスで撮影をしているかお話しします。カメラの仕組みを少しずつ理解し、最低限のメカニカルなノウハウを身につけることが大切です。

前回のブログで写真を撮る時には目的・世界観・ターゲット・媒体を意識することを述べました。それらを意識した上で実際に写真を撮る時に必ず押さえるポイントは**「フレーミング(構図)」と「光と影」**です。

写真を撮影する時、まず視点・視野・視座の組み合わせでフレーミングを考えます。フレーミングは構図とも言います。構図は写真を撮る上でのメソッドのようなものですが、構図がいいからと言って、いい写真が撮れるとは限りません。フレーミングの要素の一つ「視座」(位置)によって変化する「光と影」を読み取ることが大事です。「光を見る」と言いますが、僕は「影を見る」ことを意識します。影の印象に注目することで光の特徴が見えてきます。「視座」によって変化する「光と影」に留意して、そのコンテンツにふさわしいものはどれか考えてみてください。人が心地よく感じる調子や、伝えたい主題とそれにまつわる副題の関係性に合わせたバランスを考えながらフレーミングを整え、シャッターを押します。

フレーミング(構図)を考える時には「視点」「視野」「視座」を意識します。

1.視点について

「視点」とは、目の付けどころのことです。カメラを構える前に、まずは一番アピールしたいところ、共感してほしいところを被写体の中に見出そうとする姿勢が大事です。

2.視野について

「視野」とは画角、つまりカメラで撮影したときに写る範囲の広さを角度で表したものです。被写体にどれくらい寄るのか? ということでもあります。

レンズの画角、焦点距離によってピントの合う範囲(被写界深度)が変わります。

広角、標準、望遠それぞれのレンズの特性を学びましょう。(広角、標準、望遠レンズ参照)

3.視座について

「視座」とはアングル、つまり被写体に向かって撮影する角度のこと。カメラを上下に傾けることで、同じ被写体でも見え方、印象が大きく変化します。しかし、それ以上に大事なことがあります、どの位置から撮るかがその写真の「意味」に大きな影響を与えます。

具体例として、まずはこちらをご覧ください。とある漁港でスルメイカが干されている光景です。
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大手ビールブランドのwebサイトへの掲載目的で取材撮影に行った時のファーストカットです。

このままでは使えません。このwebサイトではローカル鉄道の旅を通じて地方の文化、名所、名産品などを紹介しています。ビールそのものを写真に撮るのではなく、鉄道の旅に誘引して、実際に売店で駅弁を購入した時に思わずそのブランドのビールも購入したくなる。それがこのwebサイトの狙いであり、コンセプトでした。そのためにはブランドイメージである「ちょと贅沢な」を踏まえた、美しく贅沢なトーンが出ている写真が必要とされます。美しい写真は記憶に残りやすく、感情に訴えかける力が強いので、そのブランドのファンになってもらいやすい。そのようなことを踏まえ撮影した写真がこれです。

この写真は「イカ」「青い空」「影」の三要素で構成されています。

主役は「イカ」です。その「イカ」に太陽の光が背後から当たっている状態です「透過光」といいます。被写体の輪郭をくっきりと浮かび上がらせ、空抜けでイカの透明感が出ています。地面に写り込む強い影が相まってドラマチックに印象強い写真が撮れました。

視野としてはイカが画面の外に出るような力強さ、ダイナミックさを感じさせる効果を狙って超広角レンズ(フォーサーズ7mm、フルサイズ14mm相当)を選択しています。広角レンズの特性として手前のものは大きく、遠くのものは小さく写るので、実際よりも奥行きがあるように遠近感が出て迫力と躍動感が伝わります。パンフォーカスと言って手前から奥までピントが合っているように見せる方法で、絞りはf11としました。被写界深度(ピントが合っているように見える範囲)を深くしてます。パンフォーカスする時にはピント位置が重要です。この写真は手前の被写体がボケないように画面手前1/3ぐらいの箇所にピントを合わせています。奥にピントを合わせると手前がボケてしまいます。

当然、視座にも拘りました。最初の写真では、現場をそのままの目線で撮りましたが、工夫が足りませんよね。ぐっと下から「イカ」を覗き込むようなアングル、背景に広がる爽やか「青い空」、そして印象的な「影」も写り込ませました。美しく贅沢なトーンが写真から伝わり、読者の記憶に残ったことと思います。

さて、さらっとレンズについて触れましたが、ここで改めて広角、標準、望遠レンズの特性を理解してみましょう。カメラのレンズには、広角、標準、望遠、それぞれに単焦点レンズ、ズームレンズがあります。カメラマンはそれぞれのレンズの特性を理解し、使い分けています。頭の中でイメージした画を再現するためには、どのレンズを選べばいいのでしょうか?できれば知識を取り入れるだけでなく、実際にカメラを持って体感してみてください。

写真素材を選ぶときには広角レンズか、標準レンズまたは望遠レンズで撮られたものなのかレンズの特性を意識することが大切です。

広角レンズ

人間の視野よりも広い範囲を撮影できるレンズを広角レンズと呼びます。 手前のものは大きく、遠くのものは小さく写るので、実際よりも奥行きがあるように遠近感が出ます。また、画面の外に出るような力強さ、ダイナミックさを感じさせる効果もあります。また広角レンズの特性として、被写界深度が深く、歪みが生じます。

標準レンズ

人間の視野に最も近い範囲を撮影できるレンズを標準レンズと呼びます。
歪みや自然な遠近感で、被写体のありのままの姿を写します。

望遠レンズ

人間の視野よりも狭い範囲を撮影できるレンズを望遠レンズと呼びます。
遠くのものを大きく写すので、手前のものとの距離が圧縮されて遠近感がなくなります。

今回のブログはいかがでしたか? 写真素材を選ぶときには写真から、レンズの選択を意識してみて、選んでみてください。

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次回は、続編として**「光と影」**について解説いたしますね。お楽しみに。