アドビの教育者コミュニティのリーダーたちが各校での取り組みを披露 #アドビ教育

PhotoshopやIllustratorなどが、中学校や高等学校の普通の授業でも活用されていることをご存じですか? 5月12日(日)、「2019 Adobe Education Leader Summit」が開かれ、アドビのクリエイティブツールを教育現場で積極的に活用する先生が集いました。

▼アドビの教育者向けコミュニティ

アドビでは、プロのクリエイター向けだけではなく教育分野にも力を入れていて、教育者向けのコミュニティを用意し、世界中の先生の支援をしてきました。オンラインのコミュニティであるAdobe Education Exchangeには、先生自身が学べるコースや、授業に活用できる教材などのリソースが豊富に用意され、英語圏を中心に現在世界で約67万人が参加しています。

コミュニティを牽引するリーダーであるAdobe Education Leader(AEL)には、現在全世界で182名が登録され、より密なコミュニケーションが取られています。日本では今年初めて13人の先生がAELに認定され、今回の「2019 Adobe Education Leader Summit」は、メンバー同士の貴重な顔合わせの場となりました。

教育分野でのコミュニティ形成について説明するGlobal Education Community ManagerのClara Galan氏

▼「創造的問題解決能力」を身につけるために

アドビが教育者のサポートをするのは、その先にいる子ども達にこれからの時代に必要とされる力を身につけて欲しいと願っているからです。アドビでは「創造的問題解決能力(Creative Problem Solving Skills)」に注目し、教育者や政策決定者に調査をしたところ、多くの人がこの力が有用だと考えつつも、現在教育現場で十分に育成できていない実感を持っていることが見えてきました。

では、「創造的問題解決能力」を育てる学びはどのように創出すればよいのでしょうか? その答えはひとつではなく、今回のサミットのような場で、事例やアイディアが共有され、活発なディスカッションが生まれることが大切です。今回は、日本のAELメンバーに加え海外からも韓国のAELメンバー、オンラインでアメリカ、オーストラリア、イギリスのAELメンバーがひとりずつ参加し、各自が事例を発表しました。全体としてどのような傾向が見えたかをご紹介しましょう。

▼教師の役割は知識の伝達ではなく学びの設計へ

多くの先生に共通していたのは、ツールの使い方を先生自身が手取り足取り教えているわけでは決してない、ということです。アドビが豊富に用意しているオンラインのチュートリアルを活用したり、ほんの入り口の部分を教えたりすれば、子ども達が自ら使い方を調べ吸収していくといいます。「むしろ私は使い方を知らないほど」という声もあがりました。

その代わりに先生が注力しているのは、どんな目的で何を作るかという学びの中身の設計と生徒の動機付けです。ツールの活用分野は、教科の学習、学校行事、部活動など様々で、制作物もポスター、チラシ、名刺、動画、LINEスタンプ、ウェブサイトなど多岐にわたりますが、いずれも先生が重視しているのは、制作の技術習得ではなく、目的を明確にして情報を取捨選択し、より効果的なアウトプットにまとめ上げることでした。

生徒の様々な作品例とその取り組みの狙いを解説する参加者

教師の役割は知識を伝達することだという従来型のイメージは根強いですが、それは日本に限ったことではありません。オンラインで参加したオーストラリアのBrett Kent先生は「教師の役割は、正しい答えを見つけて示すということではなく、いかによりよい質問を投げかけられるかということです」と、その役割の変化を表現しました。

▼プロ用ツールであることの利点

アドビのツールを使う利点として、複数の先生が、プロ用のツールだということをあげました。機能が不十分なツールを使うと、生徒の「やりたいこと」が育ったときにその発想を実現できないことが多いというのです。アドビのツールならば、机上のアイディアで終わらせることなく成果物として仕上げることができるので、学びの質が変わったそうです。

また、プロ向けで一般に流通するツールを使うことで、リアルな社会とつながる活動ができるようになりました。例えば印刷物のオンライン入稿や、コンテストの募集、動画の公開基準など、各所が求めるファイルの仕様に無理なく対応できる上、クオリティの高いものを作れるため、できることが一気に増えたということです。

使うとできるようになることの比較表。品川女子学院情報科教諭 竹内啓悟先生の資料より

アドビのツールを手にしたことで、授業外でも、生徒自らが自分達の課題解決のために活用していくという広がり見せています。オリジナルグッズの制作をして学園祭で販売したり、卒業アルバムのデザインをしたりするなどの例があがりました。

品川女子学院では、学校が配布する学習記録プリントの使いづらさを解消するため、生徒たちがオリジナルのデザインノートを製作し文化祭で販売した。同校竹内先生の資料より

▼より高度な技術への可能性

生徒の学びのためのツールというだけではなく、より高度な技術を実現するためにアドビのツールを活用している大学の先生もいます。アメリカのセントラルフロリダ大学Assistant professorのMatthew Dombrowski先生は、先天的に手や足の装具を必要とする子ども達に、安価で安全な装具を3Dプリンターで創るLimbitless Solutionsの活動を紹介しました。筋肉の動きに応じて指などを動かせる機能が備わり、デザインをカスタマイズできるおしゃれでかっこいい装具で、子ども達の可能性を広げています。

Limbitless Solutionsの装具を使う子供たち

また、旭川大学助教の宮﨑剛司先生はVRを使った看護実習のための教材作りをしていることを紹介しました。

アドビのツールを使う生徒たちが、同じツールでより高度なことやリアルな社会にインパクトを与える活動ができるということを知れば、具体的な夢を描くきっかけになりそうです。

文/狩野さやか