フォトレタッチの極意32:ダイナミックな明暗で平凡なイメージを打破する#Photoshop
Photoshop フォトレタッチの極意
印象の薄い平凡な露出を改善するには、「光と陰」のバランスが大切です。ダイナミックに見せる演出のパターンとしては、「暗い中に明るい部分を作る」「明るい中に暗い部分を作る」の2通りがありますが、今回は水辺の風景を例に、暗い林と対照的な「空や水面の明るさ」を印象付けるレタッチをPhotoshopで行います。部分的な補正を上手に使って作品のクオリティーを向上させましょう。解説はレタッチャー/ライターの桐生彩希さん。「Shuffle by COMMERCIAL PHOTO」に掲載した内容から抜粋してお届けします。
Before
After
レタッチの設計
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1、水面の補正
(1)「トーンカーブ」を選択
露出の補正に使用する「調整レイヤー」の「トーンカーブ」を作成する。レイヤーパネル下部の「塗りつぶしまたは調整レイヤーを新規作成」ボタンから「トーンカーブ」を選択する。
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(2)水面の露出を補正
トーンカーブの線グラフを下にドラッグすると徐々に暗くなり、シャドウがつぶれつつハイライトのコントラストが強まってくる。この段階では「水面の状態」だけに注意を払い、イメージ(美しいハイライト)に近い色調に近づければOK。奥の林は黒つぶれしているが問題ない。
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(3)レイヤーマスクを塗りつぶす
「トーンカーブ」の「レイヤーマスク」を黒で塗りつぶす。調整レイヤーの補正が透過され、補正前の状態が表示されるようになる。
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(4)「ブラシツール」を設定する
「レイヤー」パネルで「トーンカーブ」の「レイヤーマスクサムネール」をクリックして選択。続けて、描画色を「白」に設定し、「ブラシツール」をクリックする。ブラシの形状はボケ足のあるタイプが適している。
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(5)水面の部分だけを補正する
現状は「レイヤーマスク」を「黒」で塗りつぶして補正が透過されている状態になっているので、この画像に対して「水面付近」を「白」で描画して補正された状態に戻していく。補正の境界が目立たないようにブラシの大きさや不透明度を調整し、水面の露出だけが補正された状態を作り出す。
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2、空の補正
(1)「トーンカーブ」を選択
空を補正するために、新たに「調整レイヤー」の「トーンカーブ」を作成する。水面の補正と同様に、「レイヤー」パネル下部の「塗りつぶしまたは調整レイヤーを新規作成」ボタンから「トーンカーブ」を選択。
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(2)空の露出を補正
線グラフを下にドラッグして、暗くなるように補正。これで、色の薄かった空に濃さが出て、さらにコントラストが強まり雲のハイライトが際立ってくる。ここでは空以外の色は気にする必要はない。
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(3)空の補正だけを残す
「1、水面の補正」の(3)の要領で、空の補正用の「トーンカーブ」の「レイヤーマスク」を黒で塗りつぶしたら、「描画色」を「白」に設定してブラシツールで空の領域をドラッグ。これで、空の部分だけ補正された状態になる。
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3、水面と空の色を補正
(1)「特定色域の選択」を選択
水面と空の色は、「調整レイヤー」の「特定色域の選択」で補正する。「レイヤー」パネル下部の「塗りつぶしまたは調整レイヤーを新規作成」ボタンから「特定色域の選択」を選択して補正画面を表示し、補正の効き具合を「絶対値」に設定しておく。
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(2)青の深みを補正
「カラー」から「シアン系」と「ブルー系」を選択し、それぞれの「シアン」と「マゼンタ」スライダーを右に移動。つまり、シアン(水色)とブルーに対して「シアン」と「マゼンタ」を足すことで、青に深みを出している。
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4、全体の露出を補正
(1)「レベル補正」を選択
補正済みの水面と空を含めた全体の露出を整えるには、「調整レイヤー」の「レベル補正」を使用する。「トーンカーブ」でコントラストもまとめて補正すると手間が省けるが、調整レイヤーで複数の補正を重ねる場合には、「露出」と「コントラスト」の補正を分けた方が分かりやすいし、微妙な調整が施せるようになる。
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(2)全体の露出を補正
中間調のスライダーを使い露出を補正する。作例では背後の林の露出に着目し、ハイライトの美しさが際立つように「わずかに暗く」補正している。水面の色調がイメージよりも濃くなってしまうが、後で微調整できるので気にしなくてもOK。
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(3)「トーンカーブ」を選択
水面、空、林のすべての範囲を含めたコントラストを「調整レイヤー」の「トーンカーブ」で仕上げていく。この作例では、「水面」「空」に続いて、3つめの「トーンカーブ」になる。
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(4)雰囲気を再現する
「トーンカーブ」を使う目的は、シャドウからハイライトまでのコントラスト(明暗)を調整し、イメージ通りの雰囲気を作り出すこと。作例では、ハイライトの明るさを抑えることで空の濃度を濃くし、さらにシャドウをわずかに下げることで薄暗い鬱蒼とした雰囲気を出している。ただし、雲のハイライトまで失せないように注意!
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5、白樺の白さを際立たせる
(1)「明るさ・コントラスト」を選択
ここから先は細部の仕上げ。やるべき作業は、背後の白樺の幹をもう少し際立たせることと、水面や空などの補正の強さを微調整すること。前者は「調整レイヤー」の「明るさ・コントラスト」で作業し、後者は各調整レイヤーの不透明度で整えられる。
(2)白樺の白さを出す
「明るさ」と「コントラスト」スライダーを使い、白樺の幹の白を強調しつつ、木々の立体感を出す。作例では、露出はできる限り変化しないように調整している。水面や空にも補正の影響が及ぶが、レイヤーマスクを使い補正範囲を制限するので白樺付近だけに着目すればOK。
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(3)白樺付近の補正だけを残す
「明るさ・コントラスト」調整レイヤーの「レイヤーマスク」を黒で塗りつぶしたら(補正を透過させる)、「描画色」を「白」に設定してブラシツールで白樺付近をドラッグ。これで、白樺とその周辺が補正された状態になる。
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(4)各補正を微調整して仕上げ
最後は、各補正の強さを調整してバランスを整える。この作業は「調整レイヤー」の「不透明度」を変更すればOK。作例は水面の色が濃くなり過ぎているので、水面を補正した「トーンカーブ」調整レイヤーを選択し、不透明度を下げて補正を弱めている。同様に、白樺林を補正した「明るさ・コントラスト」調整レイヤーも不透明度を少し下げて補正を弱める。暗めの露出の中でハイライトの美しさが際立てば完成。
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