電通グループ企業が一同に会したクリエイティブイベント:企業向けCreative Jam開催レポート

企業向けに開催されるCreative Jamでは、参加企業が実際に感じている課題を基に、当日の課題が選定されます。参加者は、その日学んだばかりのツールを使い、クリエイティビティを駆使して、課題発表から3時間で解決案のプレゼンをチームを組んで作成します。

「Creative Jamのような新しいことに楽しく挑戦する機会を持つことが、グループ各社が働き方改革を進めている中で、変化をポジティブに受け止める人を増やすきっかけになれば」と期待を語ったのは株式会社電通 CR計画推進センター長 石田茂富氏です。「私たちの業界はものすごい変化にさらされています。新しいことがうまくいくかどうかをあまり考え過ぎずにチャレンジするのはすごく大事なことだと思います。今日、このワークショップを通じて、新しいことにとりあえずチャレンジしてみるという態度を身に着けてもらえたらと思います」

この日の課題は次のようなものでした。

日本の「移動」をユニバーサルに。
日本国内の移動障壁がある人々を救うソリューションを生み出そう。

通常取り組んでいるクライアントの課題ではなく、社会課題だったことについて、電通アイソバー株式会社 取締役 田中信哉氏は次のように話しています。「おそらく難しかったのではないかと思いながら見ていました。ただ、たぶん、クライアントからの課題はこれからより複雑化して大きくなってくると思うので、これくらいの課題を最後のデザインにまで落とし込む作業を、我々はもっとトレーニングしなければならないと認識しています。今日参加した全員が体験したように、課題をどう捉えるかとか、どういう切り口でアウトプットを出すかとか、そういう着眼点を磨きながら日々やっていただけたらなと思います」

田中氏は、成功しているベンチャー企業には「もっとこうあればいいのに」という強い気持ちがあると指摘します。「社会課題は『こんなことで不便を被ってはならない』のようにかなり強い思いがないとできないと思うのですが、電通に求められるソリューションもそうした面が大事になってくると思います。これからの時代、クライアントの製品とサービスの境界線がなくなっていって、サービスをデザインするとか、経営をデザインするとか、そういう領域に我々は踏み込んでいかざるを得なくなると思います。その意味でも今日一日はすごく有意義だったと思います」

グループを横断するクリエイティブチームの融合

実は、電通グループ会社の制作に関わる社員が一堂に集まって、しかもミックスされた状態でチームを組むのはおそらくこれが初めての機会ではないかと石田氏は話しました。「これを機会に、グループ内の結束とか協力的な気持ちが育っていくといいなと思っています」

株式会社電通デジタル 執行役員 アドバンストクリエーティブセンター部門長 並河進氏は、ワークショップ会場の参加者の様子を次のように説明します。「今回は電通グループの5社のメンバーが組み合わされた混合チームが編成されていたのですが、それぞれのチームごとに切り口の違うアイデアがあり、アウトプットの形も様々で、いろんな職種が混ざり合ったチームだったことがプラスになったように感じています。初めましてのチームが融合しながら、一日を通してチームが出来上がっていって、最後はどう発表しようかとみんな真剣に話し合っていて、こういう形で課題に本気で取り組んだことで発見がたくさんあったのではないかと思います」

実際に他社のメンバーと共同作業をした電通アイソバーの中島立夏氏は次のように述べています。「初めてお会いする他社の方と一緒にコラボレートして施策を考えていくっていうのがとっても刺激的で、また、新しいツールも使いながらというところで、勉強になることが多い一日で本当に楽しかったです」

さらに規模を拡大して積み重ねていきたいと話したのは田中氏です。「グループ横断で交流が生まれると会話が生まれて、仕事が生まれて、そこにまた新しい制作物とかクリエイティビティが生まれてきます。その最初の一歩として今日は重要なポイントになったかなと思います。これを電通グループの中で広げていくという考え方もありますし、協力会社と一緒に作業する機会もこれから増えてかつ内容も複雑になっていくと思いますので、濃いお付き合いのある協力会社と一緒にこういったイベントをやるといい一体感が生まれるのかなと思いました」

新しいツールとワークフローから得た学び

初めてのメンバーとチームを組んだ参加者に与えられたもう一つの「初めて」は、ワークショップで使用したアドビのツールとサービスです。参加者は事前に90分間のブートキャンプで、Adobe XD、Adobe Stock、CCライブラリの使い方を学びました。電通の道寄浩美氏は、その際にAdobe XDを学ぶために提供された教材が印象的だったと話します。「レクチャーで教材としていただいたスターターキットがすごくわかりやすくてびっくりしました。吸収が早くできて、開発されている方の熱量を感じました」

さらに、実際にワークショップで使用する中でAdobe XDの良さを見つけた参加者もいたようです。電通デジタルの池映理子氏は、「XDってプロトタイプのツールだと思っていたので、アイコンのデザインから全部一気にできるのはすごいなって思いました」と話しています。また、電通の櫻井瞭氏は、Adobe XDがワークフローの高速化に貢献したことを強調して次のように述べました。「とにかく直観的に操作できるお陰で、全員の意思を10分に一回とかもっと短いスパンでどんどん確認していけるので、短時間の作業に役立ちました」。同じチームだった電通デジタルの梅宮良輔氏もこれに同意して「自分でつくったもの、チームでつくったものが、すぐにライブで見れて、操作感が得られるっていうのがとにかく便利でした。モノづくりをしてるなっていう感覚があって楽しかったです」と語っています。

AIが支援するAdobe Stockの検索機能が気に入ったと話していたのはピクトの永吉竜也氏です。「被写界深度とか色で画像を選べるっていうのは、他のストックサイトには無い機能です。そこが今後結構使えそうだなって思いました」

並河氏は、普段使用しているPhotoshopとIllustratorが使えないことがクリエイターには大変だっただろうとした上で、XDを使った協業のメリットを挙げました。「XDを使うことで、アイデアの骨格の部分がくっきりとしたような印象を受けました。骨格の部分を短い時間でとにかく形にする、まさにプロトタイピングの持つ力が形になったんじゃないかなと思います。一方的に講師からレクチャーを受けるとかではなく、チームで一緒にプロトタイプをつくり、皆で一緒にイベントを作り上げていって、だからこの空気感だったり、これだけの満足度のあるイベントになったと思っています」