第1回「基本的な考え方」#InDesign

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InDesign入門ガイド

Adobe InDesignは、ページレイアウトソフトです。Illustratorと同様の機能も多いですが、ページを扱ううえで欠かせない機能がたくさん搭載されています。また、テキストや画像を扱う基本的な考え方にも若干違いがあります。まずは、InDesignがどのようなアプリケーションなのかを理解しておきましょう。

Illustratorとの違い

IllustratorとInDesignのどちらのアプリケーションを使用しても、印刷物用のドキュメントを制作することは可能です。しかし、大きく異なるのは、InDesignがページレイアウトを行うアプリケーションであるということです。Illustratorには、ノンブルや柱といったページ物に欠かせないアイテムを作成する機能はありません。また、ページをまたいでテキストが流れるようなドキュメントは基本的に作成することができません(Illustratorのマルチプルアートボード機能を使用すれば可能ですが、すべて手動で設定等を行うため、統一したレイアウトを作成するには非効率です)。

他にも、表組みや特色の掛け合わせ、目次や索引等、Illustratorには用意されていない機能も多く、操作性や機能性を考えた場合、やはりページ物制作にはInDesignを使用した方が効率的に作業できるのは間違いありません。Illustratorを使用しているユーザーであれば、同じAdobe製品であるInDesignは比較的操作しやすいはずです。これまで、ページ物制作にIllustratorを使用していた方も、これを機会にInDesignを使ってみてはいかがでしょうか。

InDesignには[ページ]パネルが用意されており、[ページ]パネル上でページに関するさまざまな操作を行う。ノンブル(ページ番号)や柱(セクションマーカー)、各ページに共通するアイテムもマスターページ上に作成することで、自動生成が可能となる。

InDesignの基本的操作でIllustratorと異なるのは、テキストや画像には必ずフレームが必要だということです。例えば、Illustratorでは文字ツールでドキュメント上をクリックすればそのままテキストを入力できますが、InDesignでは文字ツールでドラッグしてテキストフレームを作成してからでないとテキストを入力できません。同様に、画像にも必ずグラフィックフレームが必要となります(テキストフレームやグラフィックフレームは、配置時に自動生成させることもできます)。テキストや画像といったオブジェクトには、必ず入れ物であるフレームが必要だということをまず覚えておいてください。

InDesignのフレーム

InDesignには、「フレームツールで作成するグラフィックフレーム」「文字ツールで作成するプレーンテキストフレーム」「グリッドツールで作成するフレームグリッド」「長方形ツールや楕円形ツール等で作成する図形としてフレーム」の4種類のフレームがあります。用途に応じたさまざまなフレームが用意されているわけですが、これらのフレームはパスでできており、ダイレクト選択ツールやペンツールを使って自由に変形することが可能です。

また、フレームの自由度は非常に高く、フレームの属性を変更することも可能です。例えば、テキストフレームに画像を配置することもでき、その場合、フレームは自動的にグラフィックフレームに変換されます。さらに、文字ツールでグラフィックフレーム上をクリックすれば、テキストフレームに変換され、そのままテキスト入力が可能となります。

InDesignには、4種類のフレームが用意されている。

フレームの属性や種類は[オブジェクト]メニューの[オブジェクトの属性]や[フレームの種類]から変更することも可能。

プレーンテキストフレームとフレームグリッドの違い

InDesignの大きな特徴として、2つのテキストフレームがあることが挙げられます。グリッドと呼ばれる升目が表示されるフレームグリッドと、グリッドのないプレーンテキストフレームです。どちらを使用しても文字を入力することは可能ですが、その性質は大きく異なります。書式を設定してあるテキストをコピーし、それぞれのテキストフレームにペーストしてみてください。プレーンテキストフレームにペーストした場合にはコピー元の書式のままペーストされるのに対し、フレームグリッドにペーストした場合にはテキストの書式が変わってしまうのが分かるはずです。

プレーンテキストフレームは単なるテキストの入れ物ですが、フレームグリッドはフレーム自体が書式属性を持っており、テキストを入力、およびペーストした場合には、そのフレームグリッドの持つ書式属性でテキストが入力・ペーストされるのです。逆の言い方をすれば、あらかじめ決められたフォントや文字サイズ等を設定したフレームグリッドを作成しておけば、その書式でテキストを流し込めるというわけです。一般的には、文芸書等のようにあらかじめ決められた体裁で本文テキストが流れる場合には「フレームグリッド」、異なる書式のテキストが混在するようなケースでは「プレーンテキストフレーム」を使用すると便利です。

コピー元のテキスト(上)と、そのテキストをフレームグリッドにペーストしたもの(下)。異なる書式でペーストされるのが分かる。

[フレームグリッド設定]ダイアログ。フレームグリッドの場合、このダイアログの設定内容でテキストが入力・ペーストされる。

文字サイズの単位と表示される高さ

IllustratorとInDesignでは、デフォルトの文字サイズの単位が異なります。Illustratorでは「ポイント」が設定されており、InDesignでは「級」が設定されています。単位は、環境設定から好きなものに変更できますが、ここでは分かりやすいように、IllustratorもInDesignも「級(Q)」を単位として例を示したいと思います。なお、「1級=0.25mm」となっており、例えば20級の文字であれば、5mm四方の正方形に収まる文字となります。

Illustratorで横組みをした場合、選択ツールでテキスト選択すると、バウンディングボックスが表示され、[変形]パネルに表示される「高さ」はフォントによって異なります(フォント内部に書き込まれた値を基にIllustratorが計算した値)。そのため、テキストオブジェクトを[整列]パネルを利用して揃えたいといったようなケースでは、思い通りに揃えることができません。しかし、InDesignではどんなフォントを指定していたとしても[変形]パネルに表示される[高さ]は変わりません(テキストがぴったり収まる高さのテキストフレームにしておく必要がありますが…)。これはフォントサイズを基準に値を表示しているためで、1行の文字数や行数に応じた値を計算するのに非常に便利です。もちろん、整列コマンドも思い通りに実行できます。

Illustratorでは、適用しているフォントによって[変形]パネルに表示される「高さ」の値は変わる。

InDesignでは、どんなフォントを適用していたとしても[変形]パネルに表示される「高さ」の値は同じ。

2つの作業モード

InDesignでは、新規でドキュメントを作成する際に、[レイアウトグリッド]と[マージン・段組]のいずれかのモードを選択して作業を進めることになります。InDesignに慣れていないと、どちらを選択すればよいのか迷う方もいらっしゃるかと思います。結論から言えば、どちらを選択しても最終的に目的とするドキュメントを作成することは可能なのですが、制作物の内容によってモードを切り替えて使用した方が効率良く作業できます。

例えば、書籍や雑誌のように決められた本文等のフォーマットがある場合には[レイアウトグリッド]、ポスター等のようにとくに決まったフォーマットがなくデザインの自由度の高い制作物には[マージン・段組]を選択した方が良いと言われています。ちなみに、Illustratorライクな使い方をしたい場合は、[マージン・段組]を選択した方が良いでしょう。

[マージン・段組]を選択した場合には、最初にマージンと段組のみを決めて作業を進めるのに対し、[レイアウトグリッド]を選択した場合には、本文用のフォントやサイズ、字間、行間をはじめ、行数や行文字数、段数、段間等を指定して作業を進めます。[レイアウトグリッド]では、最初にきっちりとドキュメント設計をしてから作業を開始するため、決まったフォーマットがある制作物では後々の作業をスムーズに進めることができるわけです。慣れるまでは、2つのモードを色々と試してみてください。制作物によって、どちらのモードの方が作業しやすいかが、だんだんと分かってくるでしょう。

新規でドキュメントを作成する場合には、[レイアウトグリッド]と[マージン・段組]のいずれかを選択して作業を進めます。

[マージン・段組]を選択した場合。

[レイアウトグリッド]を選択した場合。

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