第7回「作業効率に大きく影響するスタイル機能」#InDesign

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InDesign入門ガイド

InDesignを使用する上でもっとも重要と言っても過言ではないのが「スタイル機能」です。この機能を使いこなせるかどうかで、作業効率も大きく変わります。とくにテキスト編集に時間を取られることの多いInDesignでは、段落スタイルと文字スタイルを使う作業は必須と言っても良いでしょう。スタイル機能には、段落スタイルと文字スタイル以外にも、「先頭文字スタイル」や「正規表現スタイル」「次のスタイル」「行スタイル」「オブジェクトスタイル」等があり、表のための「表スタイル」や「セルスタイル」もあります。

段落スタイルと文字スタイル

InDesignのスタイル機能で、まずマスターしたいのが「段落スタイル」と「文字スタイル」です。これらは、テキストに適用した書式属性をスタイルとして登録することで、同じ書式を他のテキストにも素早く適用できる機能です。例えば、同じ書式の見出しが何十個もあったとしましょう。ひとつずつ手作業で書式を設定していては、非常に時間がかかってしまいますが、スタイル機能を使用すれば、ワンクリックで同じ書式を設定していくことができます。クリックするだけなので、手作業による書式設定のミスも起こりません。

段落単位で適用する「段落スタイル」と文字単位で適用する「文字スタイル」があり、テキスト編集時はもちろん、テキスト修正時にも非常に威力を発揮します。すべてのテキストに対して「段落スタイル」を設定するつもりで作業すると、後々の直しも非常に楽になるでしょう。なお、まれに「段落スタイル」を使用せずに「文字スタイル」だけで作成されたドキュメントを見かけますが、これは誤った使い方です。まずは「段落スタイル」を適用し、その中で部分的に書式を変更したい時に「文字スタイル」を使用すると良いでしょう。

[段落スタイル]パネル(左)と[文字スタイル]パネル(右)。[段落スタイル]パネルには「基本段落」、[文字スタイル]パネルには「なし」というスタイルがあらかじめ用意されている。

段落スタイルの作成方法

段落スタイルの作成方法は非常に簡単です。
①文字ツールで書式を設定したテキストを選択します。

②[段落スタイル]パネルの[新規スタイルを作成]ボタンをクリックします。

③選択しているテキストの書式内容が「段落スタイル」として作成されます(図では「段落スタイル1」)。

④ただし、この段階ではまだ、段階スタイルとテキストは関連付け(リンク)されていません。関連付け(リンク)を行うためには、スタイル名をクリックすればOKですが、ここではスタイルに分かりやすい名前を付けておきたいので、新しく作成されたスタイル名「段落スタイル1」をダブルクリックします。[段落スタイルの編集]ダイアログが表示されるので、[スタイル名]を入力し、[OK]ボタンをクリックします。この際、[スタイル設定]欄で書式内容も確認しておくようにしましょう。

⑤あとは、同じ書式を適用したい段落内にカーソルをおき(あるいはテキストを選択し)、スタイル名をクリックしていけば同じ書式が適用されます。

文字スタイルの作成方法

文字スタイルは、一般的に段落スタイルを適用したテキストの書式を部分的に変更したい時に使用します。例えば、部分的にテキストを太字にするなどして、強調したいようなケースです。作成方法も基本的に段落スタイルと同じです。

①書式を変更したテキストを選択します。

②[文字スタイル]パネルの[新規スタイルを作成]ボタンをクリックします。

③選択しているテキストの書式内容が「文字スタイル」として作成されます(図では「文字スタイル1」)。なお、スタイルとして保存されるのは、段落スタイルと異なる書式属性のみです。

④ただし、この段階ではまだ、文字スタイルとテキストは関連付け(リンク)されていません。関連付け(リンク)を行うためには、スタイル名をクリックすればOKですが、ここではスタイルに分かりやすい名前を付けておきたいので、新しく作成されたスタイル名「文字スタイル1」をダブルクリックします。[文字スタイルの編集]ダイアログが表示されるので、[スタイル名]を入力し、[OK]ボタンをクリックします。

⑤段落スタイル同様、あとは、同じ書式を適用したいテキストを選択し、スタイル名をクリックしていけば同じ書式が適用されます。

その他のスタイル機能

段落スタイルと文字スタイル以外にも、InDesignにはさまざまなスタイル機能が用意されています。「先頭文字スタイル」や「正規表現スタイル」「オブジェクトスタイル」や「表スタイル」「セルスタイル」等です。これらのスタイル機能を使用することで、さらに高度なテキスト運用が可能となります。「段落スタイル」や「文字スタイル」を使いこなせるようになったら、一歩進んでこれらのスタイル機能も活用できるようにしましょう。なお、ここでは「先頭文字スタイル」と「正規表現スタイル」「オブジェクトスタイル」「グリッドフォーマット」を簡単にご紹介します。

先頭文字スタイル

段落の先頭から指定した任意の文字が出てくる所までに対し、指定した文字スタイルを自動的に適用する機能が「先頭文字スタイル」です。インタビュー記事のように、段落先頭の名前の部分だけ太字にしたいといったようなケースで使用すると、いちいち手作業で名前に対して文字スタイルを適用していく手間がなく便利です。図のケースでは、段落の先頭から「:」が出てくるところまでに対して、自動的に文字スタイルが適用されるよう設定しています。なお、先頭文字スタイルは、段落スタイル内の属性として指定することが可能です。

正規表現スタイル

記述した正規表現にマッチするテキストに対して、指定した文字スタイルを自動的に適用する機能が「正規表現スタイル」です。図では、鍵括弧で囲まれた文字列に対して自動的に文字スタイルが適用されるように設定しています。他にも、指定した桁数の数字を等幅半角字形に置換したり、ひらがなちカタカナのみ、文字ツメを適用したりと、使い方によって、じつにさまざまに活用することができます。

※正規表現を使用すると、通常の文字ではなく、文字のパターン(特徴)を指定することができます。通常の文字とメタキャラクタと呼ばれる特別な意味を持つ記号を組み合わせて表記され、検索や置換等に利用することができます。例えば、すべての数字を検索したい場合には、0から9まで10回検索をしなければなりませんが、数字をあらわすメタキャラクタを使用すれば、一度の検索ですべての数字をヒットさせることができます。

オブジェクトスタイル

「塗り」や「線」のカラー、「線」の太さ、ドロップシャドウ等、オブジェクトレベルの属性をスタイルとして登録したものが、オブジェクトスタイルです。同じ属性を持つオブジェクトを複数作成する場合に便利な機能で、作成方法は段落スタイルと同じです。なお、オブジェクトスタイル内には、[塗り]や[線]以外にも、[線と角のオプション]や[テキストの回り込みほか][フレーム調整オプション]など、さまざまな属性を設定できます。また、手動で「段落スタイル」を指定することも可能なため、段落スタイルをさらに高度に運用することもできます。

グリッドフォーマット

InDesignには[グリッドフォーマット]というパネルがありますが、これも一種のスタイル機能と言っても良いでしょう。[グリッドフォーマット]パネルは、フレームグリッドの[グリッド書式属性]をスタイルのように登録して運用できるパネルです。書式属性の異なるいくつかのフレームグリッドを使い分けたい場合に威力を発揮します。使い方も他のスタイル機能と同様なので、ぜひ使っていただきたい機能の1つです。

スタイルの運用

実際にスタイル機能を運用する際には、[スタイル再定義]や[オーバーライドを消去][リンクを切断]等、覚えておいてほしいコマンドがいくつかあります。ここでは、とくに覚えておいて欲しい、[スタイル再定義]と[オーバーライドを消去]について解説します。

スタイル再定義

段落スタイルや文字スタイルを適用しているテキストの書式を変更しなくてはならなくなった場合でも、再度、スタイルを作成して適用し直す必要はありません。目的の段落スタイルが適用されたテキストのいずれか1つの書式を修正したら、パネルメニューから[スタイル再定義]を実行します。これだけで、同じスタイルを適用しているテキストの書式を一気に修正できます。直しにも強いのがスタイル機能の特徴です。

オーバーライドを消去

InDesignでは、スタイルが適用されているテキストを選択した際、段落スタイル名の後に「+」の記号が表示される場合があります。これは、選択しているテキストのどこかに、適用しているスタイルの内容と異なる部分があることを表しています。例えば、あとから任意の箇所に手作業でカーニング等を設定すれば、当然、オーバーライドになるというわけです。しかし、オーバーライドになった箇所を元の状態(オーバーライドになったていない状態)に戻したい場合は、[オーバーライドを消去]を実行します。ただし、[オーバーライドを消去]はいくつかのやり方があり、どのコマンドを実行したかで結果が異なる場合があるので注意が必要です。詳細は、筆者にサイトの「other No.07 スタイルのオーバーライドについて」を参照してください。

[段落スタイル]パネルの[選択範囲のオーバーライドを消去]ボタン。選択しているテキストのオーバーライドを消去できる。

なお、[スタイルオーバーライドハイライター]ボタンをクリックすれば、オーバーライドになっている箇所がハイライトされるので、目で見て確認することもできます。

今回は、スタイル関連の機能のいくつかをご紹介しました。スタイル関連の機能は奥が深いため、まずは、段落スタイルと文字スタイルを使いこなせるようにしてから、徐々にステップアップしていくと良いでしょう。なお、スタイル機能を使いこなしたい方は、書籍やWEBで勉強されることをお勧めします。