サブスクリプション型ライセンスの導入でお客様のビジネスを加速
アドビは、デジタルメディア事業部門担当エグゼクティブバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャー ブライアン ラムキン(Bryan Lamkin)の来日に伴い、2012年から提供しているクラウドベースのクリエイティブソリューション「Adobe Creative Cloud」で導入した新しい契約モデル「サブスクリプション型ライセンス」に関するプレスラウンドテーブルを開催しました。
ラムキンは、お客様のビジネスを加速するために導入したイノベーションの例としてアドビが2016年に発表したAIと機械学習のフレームワーク「Adobe Sensei」などに関して説明しました。
アドビデジタルメディア事業部門担当エグゼクティブバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャー ブライアン ラムキン
永続型からサブスクリプション型へと転換することで、イノベーションをより短いタイミングで提供できるようになった
アドビの変遷の歴史
ラムキンは1992年にアドビに入社し、代表的な製品であるPhotoshopの製品マネージャーとして活躍しました。その後、当時開発コードネーム「Carousel」(カルーセル)と呼ばれていたAcrobatを担当し、PDFという現在まで続くWebパブリッシング、デスクトップパブリッシングの礎を築き上げました。その後、経営幹部の一人に昇進したラムキンが担当したのが、主力のクラウドソリューションとなる「Adobe Creative Cloud」でした。
ラムキンは「従来の箱売りをしていたソフトウェアでは、新製品の投入までに18~24ヶ月を費やしていました。当時はこのタイミングであることに合理性がありましたが、今はその期間では他社のイノベーションの速度において行かれてしまうのです」と説明。
かつてのパソコン向けのソフトウェアは、箱の中に製品の使用権を証明する証書とライセンス番号などを封入して提供するという形で提供していました。従来は「Adobe Creative Suite」と呼ばれる複数のクリエイターツールをセットにするという形で提供していたのです。
しかし、2012年に提供を開始した「Adobe Creative Cloud」では、お客様へのライセンスの提供方法を、従来の箱売りのような永続ライセンス(一度お支払い頂くと、反永続的にお使い頂ける形のライセンス形態)からサブスクリプション型ライセンス(サービス利用料として月額や年額などの形で定期的にお支払い頂くライセンスの形態)へと変更させていただきました。
2012年に提供開始したAdobe Creative Cloud
ラムキンは「従来の永続型ライセンスの提供形態では、研究開発部門が新しい画期的な機能を開発しても、それを投入するまでには18~24ヶ月に一度やってくるバージョンアップのタイミングを待つ必要がありました。しかし、サブスクリプション型へと移行したことで、新しい機能の投入は随時行うことが可能になり、クラウドを経由した新しい形のアプリケーションやサービスを随時お客様に提供させて頂くことができるようになったのです」と述べ、サブスクリプションの導入がお客様にいち早く新機能を提供し、クラウドを経由してサービスを提供する形になったため、従来型のアプリケーションでは提供できなかった新しいサービスも提供できるようになったと説明しました。
また、ラムキンはお客様にとっての目に見えるメリットとして「年額に加えて、月額という料金プランも設定することで、お客様は低コストからCreative Cloudのツールを使い始めることができるようになりました」とも述べ、お客様にとっては低コストで始められることも、サブスクリプション型への移行の大きなメリットであると強調しました。
クラウド経由でサービスを提供できるメリットに関してラムキンは「従来からアドビがサービスやソフトウェアを提供してきたパソコンだけでなく、スマートフォンやタブレットといったモバイル機器に対してもサービスやソフトウェアを利用いただくことが可能になり、外出先にはモバイル機器、事務所に戻ったらパソコンで作業というシームレスな環境を実現できるようになりました」とデスクトップからモバイルの移行が可能になることも、サブスクリプションに移行したからこそ実現できたと述べました。
グローバルに企業向けCreative Cloudを導入していただいている代表的な企業お客様
以上のように、ラムキンは、サブスクリプション型ライセンスへと移行することでお客様は新しいテクノロジーやソフトウェアを随時利用することができ、クラウドの利点を生かした新しいサービスが利用でき、かつ低コストで始めることができるという点が評価されているため、世界中のお客様、そして日本でも多くのお客様にクリエイターツールとして選んでいただいていると説明しました。
Creative Cloudのイノベーションを支える「Adobe Experience Cloud」
日本の報道関係者に説明を行なうラムキン
ラムキンはそうしたAdobe Creative Cloudの成功が、Webパブリッシングの事実上の標準となったAcrobatを発展させた「Adobe Document Cloud」、そして企業のデジタルトランスフォーメーションを支援するツールである「Adobe Experience Cloud」の導入へとつながっていったと述べ、そのAdobe Experience CloudがAdobe Creative Cloudの発展に役立っていると説明しました。
「私たちはCreative Cloudの導入後に従業員のモチベーションを上げるための新しい仕組みを導入しました。それがAdobe Experience Cloudの最も重要な機能のひとつであるDDOM(Data-Driven Operating Model)という仕組みです。これにより、従業員が自分の成績を客観的に見つめることが可能になり、それと同時にお客様が弊社に接触してくるときにお客様が何を求めているのかを数字で客観的に見つめることが可能になりました。」と述べ、Adobe Experience Cloudの最重要機能であるDDOMをAdobe Creative Cloudを日々改善していく際の指標として活用していることを説明しました。
DDOM(Data-Driven Operating Model)
DDOMとは、お客様が企業に接触し、試し、購入し、利用し、更新するという一連の消費活動において、消費者がどういう形で企業に接触しているかを数値化し、可視化する考え方です。消費者が何を望んでいるかを知りたい企業が「数字」という客観的なデータを利用して理解することを支援する仕組みになります。アドビはこのDDOMをAdobe Experience Cloudの最重要な仕組みとして提供しており、消費者が何を必要としており、どこを改善すればよりよいサービスを提供できるかを企業が理解できるようにしています。3月にラスベガスで行われたAdobe Summitでは、CEOの シャンタヌ ナラヤンがこのDDOMに関して多くの時間を割いて説明しました。
3月にラスベガスで開催されたAdobe Summitで講演するAdobe CEO シャンタヌ ナラヤン
Summitでの基調講演ではDDOMに関して詳細な説明が行われた
アドビではAdobe Experience Cloudをお客様となる企業に対して提供するだけでなく、自社のサービスであるAdobe Creative Cloudの改善にも使っています。
お客様がどんな機能を用意すれば、体験版のソフトウェアを利用して頂けるのかを数字で理解し、新しい機能を追加したときにお客様の満足度が向上したなどを数字で理解することが可能になっており、それが明日のAdobe Creative Cloudの新機能の開発につながっています。
そうした日々改善が行なわれるAdobe Creative Cloudのイノベーションの中で、ラムキンが時間を割いて強調したのは、2016年にAdobe MAXで初めて発表された日本人にとってなじみがある名称のAIと機械学習のフレームワーク「Adobe Sensei」です。
ラムキンは「まるで師匠に習うかのようにという意味で日本語の「先生」からブランド名がつけられたAdobe Senseiは、アドビの各種サービスの見えないところにいる縁の下の力持ち。そのAdobe Senseiのパワーにより、お客様が繰り返して行なうような定型的な処理を代行して自動化してくれるのです」と述べ、Adobe Senseiが3つのクラウドサービスAdobe Creative Cloud、Adobe Document Cloud、Adobe Experience Cloudの背後にあって、お客様によりよいサービスを提供する基盤になっていると説明しました。
Adobe Senseiはアドビのクラウドソリューションすべてのアプリケーションでユーザーの生産性を向上させるために利用されています
例えば、Photoshopで写真を編集するときには、人の顔の特徴を掴んで笑顔にする作業は、従来であれば何度も領域を指定して細かな指定をして…と膨大な時間がかかる作業でした。今は、Adobe Senseiにより何ステップかマウスをクリックするだけで簡単に行なえるようになっています。
また、ストックフォトサービスである「Adobe Stock」では、数百万におよぶライブラリーの中から目的の写真を探すのに、色や特徴など大雑把な指定でもAdobe Senseiが探している人の目的を推定して探し出してくれるのです。こうした人間が定型処理として時間をかけて行なっていたことを、自動化し短時間で終了するにすることで、クリエイターの皆様がもっとクリティブワークに集中し生産性を向上させることができる、それがAdobe Senseiの特徴です。
ラムキンは最後に「Adobe Creative Cloud、Adobe Document Cloud、Adobe Experience Cloudという3つのクラウドサービスとAdobe Senseiをよりよくしていくことで、今後もお客様に対してイノベーションを提供し、お客様のビジネスを加速していきたいと考えています」と述べ、今後もアドビがイノベーションにコミットメントしていくことを誓って記者の皆様への説明を終了しました。