サンプルファイル付き!2Dデザイナーが3Dデザインを習得した方法
デザイナーが容易に生き生きしたイメージを生み出せるツールがAdobe Dimensionです。2D画像と3Dアセットの合成により広がるクリエイティブな可能性は尽きることがありません。
この記事では、Dimensionチームのシニアプロダクトデザイナーであるエリン・キムが、自身が3Dデザインの世界に足を踏み入れた経緯と、実際に3Dのデザインを行ったプロセスをステップごとに紹介します。Dimensionとエリンのデザインファイルをダウンロードして、彼女のやり方を参考に、独自のデザインに挑戦してみましょう。
PhotoshopデザイナーがDimensionに興味を持った理由
私はエリンです。アドビのDimensionチームのメンバーです。私は3Dの上級者ではありませんが、3Dアートの制作にはずっと興味がありました。
アドビに勤務する前は、さまざまなブランドや広告代理店で働いていました。その間、パッケージデザインからスニーカーのキャンペーンまで、様々なプロジェクトで頻繁に3Dモックアップを作成していました。とはいえ、実際に行っていたことは、手間と時間をかけて2D画像に施した3D効果の「偽造」でした。
大まかに説明すると、背景画像(スタジアムやアリーナなど)と目的のオブジェクのト画像(例えばスニーカー)をPhotoshopに取り込み、必要な画像が表示されたらPhotoshopで画像をさらに操作して、同じ照明で一緒に撮影したかのような見た目に修正します。その作業に費やした時間の多くは、視点の角度、影の方向、そして光源が自然に見えるように調整するための作業に使われました。
Photoshopで3Dを捏造するのに限界があることにはすぐに気付きました。それで、3Dソフトの使い方を学ぼうと決めました。私は、フラットな画面の上に、本物のようなオブジェクトを作成できる可能性に魅せられていました。特に大きかったのは、3Dデザインが、これまでに取り組んだ2D制作物よりも本物らしくて、まるで実物のような外観を表現できることへの期待です。実際に3Dソフトウェアを使い始めてみると、とても単純なモデルを短時間で作成することができました。でも、期待していたほどの見た目にはなりませんでした。私は何を間違っていたのでしょうか?
結局のところ、3Dでは2Dよりも多くの事柄を考慮しなければなりません。本当の課題だったのは、様々なテクスチャやライティングを駆使して3Dを魅力的でリアルに見せる方法でした。3Dアプリケーションで行き詰ったために、Photoshopに戻って照明や影などの効果を駆使して画像編集したことも何回もありました。私にとっては、モデルの構築自体が既に高いハードルでしたが、質感とライティングは3D空間でのデザインをさらに難しいものにしました。
左は、昔ながらの3Dアプリケーションでライティングやマテリアルを使用せずに作成されたシーン、中央は、Dimensionでライティングのみが追加されたシーン、右は、さらにDimensionでマテリアルを追加した完成シーン デザイン: エリン・キム
アドビに入社したとき、すべてが変わりました。私は、Adobe Dimensionというアプリの計画を知り、それが私が夢見ていた3Dデザインソフトであることをすぐに理解しました。そして、そのチームへの参加を願い出ました。私のように、3Dの仕事に興味があってもその複雑さに怖気づいている2Dのデザイナーを支援するという目標に触発されたのです。
最高の体験を実現するには、3Dデザイン固有の考慮点をユーザーが簡単に理解できるものへ単純化して、少ないステップで望む結果を得られるようにしなければなりません。そこで私は、Dimensionを使って毎週3Dデザインを作成するという挑戦を始めました。製品コンセプトをより良く理解するのはもちろん、ユーザの悩みに共感できるようになるためです。この取り組みは、私をユーザーとして、そして製品デザイナーとして成長させてくれました。更に、これまでは実現できなかったようなプロジェクトに取り組むこともできました。
エレンが毎週作成した3Dプロジェクトから デザイン: エリン・キム
Dimensionを使って質感を表現するステップ
このファイルをダウンロードして開いてみてください。ステージとオブジェクトの配置が完了した状態になっています。この記事での私の目標は、マテリアルの使い方と効果を説明して、シーンを演出できるようになってもらうことです。下の画像が完成した状態です。以下に示す手順に従って、シーンを一緒に作成していきましょう。
まずサンプルの簡単な説明です。Dimensionのワークスペース右上のシーンパネルには、Softbodyというフォルダがあります。その中には、カンバス上に配置されている複数のオブジェクトが含まれています。カンバスを見ると、どのオブジェクトにもまだマテリアルが適用されていないことが分かるでしょう。マテリアルをそれぞれのオブジェクトに適用した手順については、これから順番に紹介します。
それから、迷子になったときにいつでも最初のカメラの位置に戻れるように、ブックマークを作成してあります。PgUpキーとPgDownキーを使うと、ブックマークを順に辿れます。また、カンバス上部に配置されているツールバーの右隅のアイコンをクリックすると、レンダリングプレビューパネルを開いて最終的な見た目を確認することができます。
このシーンで使用したマテリアルは、砂利、メタル、デニム、プラスチックの4種類です。ひとつずつ説明していきましょう。
砂利
最初に使用するマテリアルは砂利です。Adobe Stockから「White Gravel」を入手して使います。素早く始めたい人は、アセットパネルのスターターアセットに用意されているマテリアルから近い質感のものを選ぶと良いでしょう。シーンパネル内のSoftbodyフォルダをクリックして開き、Ctrlキーを押しながらクリックして “Gravel-1” と “Gravel-2” を選択します。その状態でアセットパネル内のマテリアルをクリックすると、“Gravel-1” と “Gravel-2” に適用されます(下図参照)。レンダリングプレビューパネルを開いて、実際の見た目を確認してみましょう。
“Gravel-2” の外観を少し変えたいと思います。現状では“Gravel-1” と “Gravel-2” のマテリアルがリンクされていて、調整の結果が両方のオブジェクトに反映されるため、先にリンクを解除します。
“Gravel-2” の右端のアイコンをクリックすると、“Gravel-2” の編集モードになり、シーンパネルには “Gravel-2” のレイヤーが、アクションパネルにはリンクアイコンが表示されます。リンクアイコンをクリックすると、リンクが解除され(アイコンが消えます)単独で編集できるようになります。実際にプロパティパネル内でカラーを変更して、“Gravel-2” に反映されることを確認しましょう。
パターン
次は、Photoshopでいくつかパターンを作成して、それをオブジェクトの表面に配置します。まずPhotoshopを開き、新規ファイルを作成したら、任意のブラシを選択して落書きを開始します。今回の例では、カイルのブラシのUltimate Pastel Paloozaを#0F1584、#FF8F8F、#A5A9ffのカラーで使用しました。
これを繰り返ししま配置して並べます。psdファイルの背景が透明になっていることを確認して、ファイルを保存します。同じ手順でもうひとつパターンを作成します。それぞれ、“Gravel-1” と “Gravel-2” の表面に模様として貼り付けるために使います。
まずは “Gravel-1” に模様を張り付けてみましょう。“Gravel-1” の編集モードでアクションパネルから「グラフィックをモデルに配置を選択し、開いたダイアログから先ほど作成したPhotoshopファイルを指定します(あるいは、 オブジェクトの上に直接ドラッグ&ドロップする方法ても配置できます)。模様が表面に配置されたら、ドラッグして位置やサイズを調整しましょう。同様の操作で“Gravel-2” にも模様を張り付けます。
オブジェクトの表面にPhotoshopで作成した模様を配置(約注:旧バージョンの画面のため、シーンパネルの仕様が一部異なっています)
このように、Photoshopでブラシツールを使用して作成した独自の図柄を利用すると、標準のマテリアルに独自のテイストやスタイルを取り入れることができます。
メタル
次は、メタリックなマテリアルを配置します。今回は、アセットは使わずに、オブジェクトの属性値を指定して、メタルの質感を表現します。
まず、“Metal-1” オブジェクトを選択して編集状態にします。「表面」セクションの「ベースカラー」に任意の色を指定します。今回は、16進でFFA985”を入力しました。
次に、「メタリック」の値を指定します。名前のとおり、これはオブジェクトを金属のように見せるための属性です。今回は、値を75%に設定します。
さらに、「粗さ」の値も指定します。粗さは、表面の光沢を定義する属性です。0に設定すると光沢が出て、1に設定すると粗くて光沢の無い表面になります。いくつか値を選択して違いを確認してみましょう。
粗さの指定には、「粗さ」に数値を指定する以外の方法も利用できます。モノクロの画像を読み込んで、「粗さ」にマスクとして指定する方法です。今回は、金属の表面が少し傷ついている様子を表現するために画像を使います。
Photoshopを起動し、正方形で黒い背景の新規ドキュメントを作成します。そして、白いカラーのカイルのSpatter Brushを使用して、ドキュメントを均等に塗りつぶします。適当な頃合いでファイルを保存しましょう。
Dimensionに戻り、「粗さ」の隣の「+」ボタンをクリックします。ポップアップウインドウが開いたら、先ほど作成したファイルを読み込みます。読み込まれた画像は、Photoshopのレイヤーマスクと同様に、粗さの指定に使われます。画像の白色の領域は粗くなり、黒色の領域は光沢が出ます。このようにして、金属の表面に粗さを不均一に配置できます。さらに、「繰り返し」を使って、画像の倍率を調整できます。値を明示的に入力するか、値フィールドの上でマウスホイールを操作すると外観が変化する様子を確認できます。
マスク画像を読み込む前後の状態
続けて、“Metal-2” に “Metal-1” のマテリアルをコピーしましょう。“Metal-2” を選択し、サンプラーツールを使用して “Metal-1” をクリックすると、同じマテリアルを適用できます。このとき、マテリアルはリンクされた状態になります。先程と同様、アクションパネルでリンクを解除してから “Metal-2” の色を変更します。今回は16進数でFFBE5Cを指定しました。
プラスチックとデニム
完成までもう少しです。“Denim” オブジェクトを選択して、アセットパネルからデニムを選択します。検索フィールドに「デニム」と入力すると、簡単に見つけることができます。プロパティの白線の量や強度を調整すると、デニムに表情を加えることができます。
“Plastic” オブジェクトには、アセットからプラスチックを適用します。好みに応じて色を調整してみましょう。
レンダリング
最後に、“Rest” のフォルダに適当なマテリアルを適用すると、すべてのオブジェクトにマテリアルが追加されたことになります。いよいよ、レンダリングプロセスの開始です。
この作業は、「レンダリング」タブで実行します。時間のかかる処理ですが、レンダリングが進行するにつれて、イメージがだんだんクリアになります。3Dデザインの完成する様子を楽しみましょう。下が完成したシーンです。
週に1回、新しい3Dのシーンを作成するという毎週のチャレンジを開始してから3か月が経過しました。その経験の一部を皆さんと共有することができて楽しかったです!今でもAdobe Dimensionで毎週新しいプロジェクトに取り掛かるのは楽しみです。デザイナーとしての私に開かれた可能性を探求するのが大好きだからです。この製品が私の創造性を豊かにしてくれるのと同じくらい、他のデザイナーの創造性に新たな次元を加えてくれることを願っています。
この記事はStepping Into a New Dimension: From 2D to 3D Design(著者:The Creative Cloud Team)の抄訳です