10年に渡るAdobeのモバイルドローイング革命が次のステージへ
AppleがiPadを発表した2010年、Adobe Ideasも同時期に発表されました。アドビ初のモバイルドローイングアプリであるAdobe Ideasは、ベクターベースを採用した高解像度でスケーラブルな出力や、シンプルなインターフェース、選べる描画ツール、細部まで補完できる高倍率ズーム機能などを備えていました。
アドビのドローイングチームは、iPadが人々の作業手法やその場所を変えていくだろうという考えのもとアプリの試作に取り掛かり、後にAdobe Photoshop Sketch、Adobe Illustrator Draw、Adobe Illustrator Lineがそれぞれ正式にリリースされました(Lineは廃版となり、Lineで人気を博した機能はDrawとSketchに引き継がれました)。
デスクトップ版に匹敵するようなアプリではなく、自由にドローイングやペイントができるデジタルスケッチブック(ベクター形式およびラスター形式)を想定していました。スケッチパッドやドローイングツールのためのコンパクトなソリューションで、アプリで作成した作品をPhotoshop や Illustrator で完成させられるというメリットもありました。
やがて人々が本来の目的を超えた方法でアプリを利用し始めたため、これまで数年に渡ってアドビはより専門的な機能の追加や、デスクトップツールへのより密接な統合を求める要望に対応してまいりました。アプリの機能をモバイルプラットフォームの技術力や実際のアプリの用途に合わせたいと考えていましたが、もともとの方針に沿って進化させたいという思いもあり、その葛藤の中で折り合いをつける必要がありました。
そこで新しい機能をランダムに追加するのではなく、SketchやDrawについてお客様と話したことを念入りに検討することにしました。そしてすぐに、人々が求めているものを作るにはモバイルドローイングへのアプローチを一から考え直す必要があると気づきました。
その気づきが、Adobe Fresco誕生のきっかけとなりました。
そして、またとない機会が訪れたのです。アドビの開発計画は、iPadのさらなる進化とApple Pencilの発表、またAppleのMetalフレームワークとGPU開発それぞれと同時に進行しており、Frescoは可能性を秘めたアプリを超えて、大変革をもたらすアプリへと姿を変えました。Frescoのライブブラシは、これまでのデジタルドローイングツールにはなかった形でアナログのドローイングを再現しています。
信じられないという方は、Kyle WebsterによるFrescoのドローイングツールデモをご覧ください。
MAX 2018でプレビューが行われたAdobe Frescoは、ベクター形式とラスター形式を統合したドローイングアプリであり、モバイルドローイング分野における約10年間の集大成です。アドビはFresco の導入によって、ドローイングおよびペイントテクノロジーを通したクリエイティブ表現への取り組みをさらに強化していきます。
このような次世代ドローイングツールの開発にはかなりの費用が見込まれるため、
総力をあげて取り組む必要があります。そのためアドビはAdobe Frescoに全リソースを集結させるべく、Photoshop SketchとIllustrator Drawの開発中止を決定しました。積極的な開発は行われなくなりますが、しばらくの間はApp StoreやGoogle Playで引き続きご利用いただけます。また、それらの機能はAdobe Frescoへスムーズに移行される予定となっています。
Adobe Frescoは、お客様のご要望から実現した専門的なツールです。日頃アドビ製品をご愛顧くださっているお客様のご意見や創造力なくしては実現に至らなかったでしょう。Adobe Frescoは近日リリース予定です。実際に体験していただき、ご意見を聞かせていただくことを楽しみにしております。