フォトレタッチの極意37:太陽+逆光の構図でファンタジックな光景を作る

連載

Photoshop フォトレタッチの極意

今回は定番の風景写真とはひと味違う、逆光で撮影した写真を採り上げます。画面に太陽を入れた構図の写真をPhotoshopで仕上げると、ファンタジックな光景が浮かび上がってきます。レタッチの加減で自然な色彩にも絵画的な色調にもできますが、ここではアーティスティックな仕上がりを目指して調整してみましょう。解説はレタッチャー/ライターの桐生彩希さん。「Shuffle by COMMERCIAL PHOTO」に掲載した内容から抜粋してお届けします。

Before

After(※クリックで拡大)

1、HDR的な露出に補正する

(1)「スマートオブジェクト」に変換する

「Camera Rawフィルター」を使うので、後から再調整がしやすいように「背景」レイヤーを「スマートオブジェクト」化しておく。「レイヤー」パネル右上のメニューボタンをクリックしたら、「スマートオブジェクトに変換」を選択して、「レイヤー0」を作成。

(2)「Camera Rawフィルター」を選択する

「レイヤー」パネルで、(1)で作成したレイヤー(レイヤー0)を選択したら、「フィルター」メニューの「Camera Rawフィルター」を選択。これで、「Camera Rawフィルター」画面が表示される。

(3)シャドウの暗さを改善する

逆光で暗くなったシャドウを明るくしたいので、「シャドウ」スライダーを右に移動。幻想的な仕上がりを目指すなら、最大値の「+100」まで調整してみよう。黒つぶれが目立つときは、「黒レベル」スライダーも少し右に移動すれば改善できる(作例は未調整)。

(4)ハイライトの明るさを抑えて階調を出す

ハイライトを色濃くしたり、階調感の高い描写にするには、明るい部分の明暗が補正できる「白レベル」と「ハイライト」スライダーを調整する。薄い色や明るい色は、暗くすることで色濃く階調感が出てくるので、それぞれのスライダーを左に移動。「シャドウ」スライダーと同様に、最大値の「-100」まで調整してOK。

(5)露出を整える

適度な明るさになるように露出を補正。暗い露出を明るく補正したいので「露光量」スライダーを右に移動する。露出とメリハリは最後に「トーンカーブ」で仕上げるので、ある程度イメージに近い露出になっていれば問題ない。

(6)色調を引き締める

暗い部分から明るい部分まで階調が出ている代わりに、少しかすんだようなヌケの悪さが感じられる状態。色調を引き締める効果を狙い、「コントラスト」スライダーを右に移動して補正する。より印象的な色彩を狙うなら、「かすみの除去」スライダーで補正してもよい(作例は未調整)。

2、色を補正して色彩豊かにする

(1)「彩度」「自然な彩度」の順に補正

「彩度」スライダーを右に移動して全体の発色をよくし、「自然な彩度」スライダーを右に移動して足りない鮮やかさを強調。絵画っぽさを狙っているので、「彩度」で色が飽和しないギリギリまで補正し、「自然な彩度」で色かぶり(山並みの青い部分)が生じる程度に強めの補正を施している。色かぶりに関してはあとで軽減すればよいので、この段階ではイメージを優先した発色にしておく。

(2)「色温度」で雰囲気を出す

発色(鮮やかさ)の次は、色味を補正して雰囲気を出す。作例は夕暮れ時に撮影しているので、暖色系に偏らせて夕方の雰囲気を再現。この調整は、「色温度」スライダーを右に移動すればよい。

3、青と赤の発色を調整する

(1)「HSL調整」機能を表示する

彩度の補正で顕著になった青系の色かぶりを「HSL調整」機能で補正する。「HSL調整」は特定の色に対して「色相」「彩度」「輝度」の補正が行えるため、鮮やか過ぎる青系の色に対して「彩度」や「輝度」を補正し、自然な発色に整える。まずは「HSL調整」ボタンをクリックし、「彩度」タブをクリックして機能を表示する。

(2)青系の色の彩度を下げる

山並みの部分は青が強く出過ぎているので、青系の色(「ブルー」と「アクア」)のスライダーを左に移動して彩度を下げ、色かぶりが目立たないように補正。ただし、特定のスライダーだけを大幅に移動すると、色のつながりが途切れてトーンジャンプが生じやすくなる。そこで、「ブルー」に隣接している「パープル」スライダーも少し左に移動して、色がつながるようにしておく。スライダーの位置が波型になるように調整すると、画質の劣化が抑えられる。

(3)ヌケのよい背景に見えるようにする

補正した山並みの部分は、少し明るくかすんだような印象。そこで「輝度」タブをクリックして選択し、「ブルー」と「アクア」スライダーを左に移動して暗く補正。暗くなる(=色が濃くなる)ことで、遠方までよく見えるような描写になる。(2)と同じ理由で、「ブルー」に隣接している「パープル」スライダーも調整している。調整が終わったら、「OK」ボタンクリックして「Camera Rawフィルター」を確定。

4、「トーンカーブ」で露出とコントラストを仕上げる

(1)「トーンカーブ」を選択する

複数の補正を重ねると露出が変化するので、最後に明暗とコントラストを整える。「レイヤー」パネル下部の「塗りつぶしまたは新規調整レイヤーを作成」ボタンから「トーンカーブ」を選択。

(2)色濃くヌケのよい色調に補正

よりインパクトを出すために、透明感のある濃い色を目指して調整していく。まず線グラフの左下と右上をクリックしてポイントを作成。左下のポイントを下げてシャドウを暗く(色濃く)して、右上のポイントを上げてハイライトを明るくヌケのよい描写に補正する。好みの仕上がりを探るように、2つのポイントを上下に移動してみよう。全体を見渡して色調に不満がなければ、作業完了。

完成

さらに詳しい解説は、Shuffle by COMMERCIAL PHOTO で連載中の「風景&ネイチャー “映える”レタッチ」(解説・写真:桐生彩希)に掲載されています。サンプルファイルもダウンロードできますので、ぜひ挑戦してみてください!