女性視点のダイバーシティプロジェクト「MASHING UP」に秋田夏実が登壇 #AdobeforAll

2019年11月7〜8日、東京・渋谷のトランクホテルにて、「MASHING UP vol.3」が開催され、8日のセッションにアドビのマーケティング本部 バイスプレジデント 秋田夏実が登壇しました。

MASHING UPとは、「女性目線で考えるダイバーシティ推進」のためのプロジェクトです。国籍やジェンダー、年齢、社会的マイノリティを問わず、多様な人々が強くしなやかに活躍し、その活動が思いもしなかった“化学反応”をもたらしてより良い社会を作っていく、そんな活動を応援する場として、リアルイベントやオンラインメディア「MASHING UP」を展開しています。

秋田が登壇したのは、11月8日15時20分〜に開催されたトークセッション『「女性活躍」はキモチワルイ? —新しい言葉をみつけよう』というもの。女性向けエンパワーメント動画メディア「BLAST」を立ち上げたブラスト 代表取締役社長 石井リナさん、社会学者で東京大学名誉教授、そして認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長を務める上野千鶴子さん、そしてモデレーターのBusiness Insider Japan 統括編集長 浜田敬子さんと共に、社会における女性活躍の実情について、会場に集った聴衆者と共に考え、話し合いました。

(左から)Business Insider Japan 統括編集長 浜田敬子氏、東京大学名誉教授 上野千鶴子氏、ブラスト 代表取締役社長 石井リナ氏、アドビ バイスプレジデント 秋田夏実

「女性活躍」に感じる違和感の正体

今回の「女性活躍はキモチワルイ?」という問題提起について、モデレーターの浜田さんは次のように説明します。

「近年の社会風潮として、『女性活躍』を標榜することはもう時代遅れ、気持ち悪いという論調が出てきました。さまざまな人が活躍できる社会を目指すということで、わざわざ『女性』と銘打つ必要はない、という考えです。そこでこのトークセッションでは、女性活躍の現状と課題について考えていきたいと思います」(浜田さん)

長年ジェンダー研究の第一人者として活躍してきた上野さんは、この問題提起について、「女性活躍という言葉は、気持ち悪いですね」と即答。「女性という言葉を男性に置き換えてみたら違和感がわかる」と上野さんは説明します。浜田さんも、女性活躍という言葉に違和感を持つ1人で、「結局、少子高齢化のなかで労働力が足りなくなったから、政治家が『女性活躍』という程のいい言葉で労働力確保に乗り出した。そこに違和感を感じます」と話します。

一方、石井さんは「そこまで違和感を持っていない」という意見です。現在20代だという石井さんの同級生は、少なくとも学生時代までは、みんなが「完全な男女平等」を信じ、過ごしてきた世代です。その認識が打ち砕かれたのは就職活動時で、「初めて女性ということだけで制限されている会社があることに気が付きました。その後、メディアで発表されているジェンダーギャップ指数を見て、日本が最下位クラスであると知り、愕然とした記憶があります」(石井さん)といいます。そうした若い世代だからこそ、違和感というよりは、「男女平等や女性活躍は、将来的になくなるべき言葉だと思う」という考えです。

秋田はまさに“女性活躍”といわれた時代のなかで、その社会の建前と本音を実感しながら仕事をしてきた世代です。「大学卒業後、日本の大きな企業に総合職として入社しましたが、門前払いされた経験も数え切れないほどあります。そういう目で見ると、いまの世の中はかなり変わったと思いますし、ポジティブに捉えている部分と、まだまだ足りないと思う部分、両方あります」と話します。

日本企業はなぜグローバルな存在になれないのか

嫌悪するほどではないけれど、「何か違う」と思わせる“女性活躍”という言葉。これだけだとあまりに抽象的なので、「女性役員を何人/何%にしよう」とゴール設定を行う企業や組織が増えています。

このクォータ制度については、「女性の社会進出を後押しする」という評価がある反面、「能力がなくても女性というだけで重用されるのか」という指摘もあります。

これについて、上野さんは「クォータ制度は絶対に必要です」と力強く発言します。そもそもこのクォータ制度は女性の社会進出が盛んな北欧で制定されたもので、「女性活躍が当たり前に文化として根付くまでには、やはり強制力で推進する必要があります」(上野さん)という考えです。

クォータ制度の是非については、秋田も「必要だと思います」という立場を表明。続いて「制度だけでなく、現場で具体的にアドバイスをするメンターやロールモデルも整備し、家庭や介護と仕事が両立できる環境を整えることができれば、将来的にクォータ制度自体は不要になるのでは」と提案しました。

議論はその後、制度だけでなく、社会風土として「男性中心の働き方」や「ルール」が蔓延していることにも言及。起業して会社を経営する石井さんも、「名刺を出すと、肩書きで一応評価される反面、スタートアップ業界にもやはり男性中心で情報が回る風土もあり、なかなかそこに入っていくことは難しい」と自らの体験を告白します。

なお、秋田が勤務するアドビのマーケティング本部は男女の比率が50:50の同数で、「仕事の内容が同じなら、国籍も年齢も性別も関係なく給与額も同じなら、昇進機会もまったく違いはありません。これは実際に調査し、数字で立証されたもので、私自身も働きやすいですし、これまで勤務してきた日本企業との違いも感じます」(秋田)と述べました。

上野さんもこの意見に同意し、「企業は二極化が進んでいる。未だに男性中心で変わらない企業と、誰もが同じ条件で活躍できる企業とがはっきりと分かれていて、後者のタイプの方がグローバルで大きな実績をあげている。こうした社会変化に対応しきれない日本の企業は、いずれ巨艦沈没していくでしょう」と警鐘を鳴らしました。

企業文化や環境を変えるために必要なこと

トークセッション終了後は、会場の聴衆から、女性の社会進出についてさまざまな意見が出されました。「企業の管理職になるに当たり、男性はそのプロセスが可視化されているが、女性は可視化されていないので、あまり昇進に関心がない」「企業内で、女性活躍推進担当者に女性が任命されるという違和感がある」という意見や、「日本と北欧にルーツを持ち、複数の言語を話すが、日本人の男性企業人と話していると、『英語を話す外国人』か『日本語を話す外国人風の女の子』という印象を与えるかで対応が違う」という指摘、「いまの若い世代は、男女共に『企業で偉くなる』ことに興味がない」という実情まで、さまざまな意見が出されました。

こうした発言に対し、「企業文化を変えるために、応援してくれる人を見つけ、自分ができる行動を」(秋田)というアドバイスや、「日本の男性は、外国人女性の前だと気を使うが、同じ日本人だとわかった途端に地が出る」(上野さん)という辛口コメント、「昇進に興味がないのなら、逆にチャンスと思って、男性を出しぬこう」(浜田さん)という回答など、活発な意見交換が行われ、会場からの大きな拍手で幕を閉じました。

このトークセッションをきっかけにアドビでの働き方に興味をお持ちになった方は、ぜひアドビの採用情報をご覧ください。