人間と機械の間: HCI(Human-Computer Interaction)を構成する要素 | アドビUX道場 #UXDojo

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エクスペリエンスデザインの基礎知識

今日では、ほとんどの人が強力なコンピュータをポケットの中に持ち、毎日のようにいくつもの画面やデバイスを操作しています。デバイスの中には、スマートウォッチのように小さなものもあれば、スマートスピーカーのようにスクリーンが無いものもあります。その一方では、機械学習やAIが驚くべき進歩を遂げています。そして、他のすべての技術の進化と同様、私たちとAIとの関係も進化しています。そうです、人間とコンピュータの関係は絶えず変化し続けるものなのです。

HCI (human-computer interaction) という学問の分野は、多くの人がパソコンを手にするようになった1980年初頭に生まれました。それ以来、HCIに関する研究は飛躍的な発展を遂げ、より良いインタラクションための知識も増えてきました。この記事では、クリエイティブな作業をより簡単に、より楽しく、より多くの人々が利用しやすいものにするために重要なHCIの定義を確認し、それがどのような要素から構成されているのかを説明します。

HCIとは何か?

HCiは、コンピュータインターフェースのデザインに加え、人とコンピュータのインタラクションに重点を置く学際的な研究です。考慮すべき要因には、ユーザーの能力、認知プロセス、性格、経験、動機、感情が含まれます。

元々はコンピュータを中心とした学問でしたが、モバイルデバイスの普及と技術の多様化(例えば、音声ファーストの体験)が爆発的に進んだことにより、現在ではあらゆる種類の情報技術に関わるデザインが対象となり、コンピュータサイエンス、人間工学、認知科学、心理学が関わる分野になっています。HCIは、UIデザイン、ユーザー中心設計、UXデザインとも重なる部分があります。実際、HCIをこれらのすべての分野に先行するアカデミックな領域とみなすことも可能です。すなわち、UXデザイナーは、取り組んでいる体験を改善し強化するために、HCI分野の研究を利用することができるのです。

HCIの構成要素

HCIは、主に4つの要素から構成されています。それぞれについて簡単に説明します。

ユーザー

「ユーザ」 は、一緒に作業する個人またはユーザのグループを指します。HCIは、彼らがどのように行動するか、テクノロジーとどのように関わるか、ニーズとゴールは何かを分析します。考慮すべき要因には、ユーザーの能力、認知プロセス、性格、経験、動機、感情が含まれます。

画像提供: Insung Yoon

ゴール(またはタスク)

ユーザーがコンピュータを操作するとき、通常、何かの「ゴール」を持っています。特にモバイル環境では、ユーザーのアクティビティを支援するために、ゴールを設定しそこに達するためにタスクを遂行するという、ゴールを中心にデザインされた体験をよく目にします。考慮すべき要因には、ユーザにとってタスクの遂行がどれだけ複雑または容易であるか、その場で必要とされるスキルが含まれます。eコマースであれば、商品をショッピングカートに追加して購入する行為が、タスクの例になるでしょう。

メディア(デバイスやインターフェイス)

もうひとつのHCIにおける重要な要素は「メディア」、すなわち、デバイスやインターフェースです。これにあたるものとして、パソコン、スマートフォン、音声操作できるバーチャルアシスタントなどが挙げられます。考慮すべき要素には、デバイスの入出力、レイアウト、ナビゲーション、色、アイコン、その他のグラフィックス要素が含まれます。

画像提供: Luca Bravo

コンテキスト

「コンテキスト」は、コンピュータシステムが実際に使用される条件の記述です。ユーザーが日常的な状況でどのようにテクノロジーと関わるのかを判断するには、ユーザーテストの実行が重要です。たとえば、外出中に画面に太陽が写り込んでいるモバイルの画面からWebサイトにアクセスしようとする行為は、高速ネットワークに接続されているオフィスでの使用とは大きく異なる体験でしょう。コンテキストを認識できるシステムでは、ユーザーの体験をを改善するためにアプリの動作を変更することがあるかもしれません。

技術の進歩とHCI

HCIは、ユーザ、ユーザーの目標とタスク、メディアとインタフェース、そしてインタラクションが発生するコンテキストを調査します。テクノロジーが発展し、ウェアラブルかインターネットに接続された家電まで、私たちの生活のあらゆる部分に影響を与えるようになるにつれて、HCIの研究を更に進めて改善を継続していくことが非常に重要になっています。

アドビ、Microsoft、Facebookなどの企業による研究は、直感的で使いやすいインターフェイスを作成することを目的にした技術的な革新に、様々な業界で頻繁に使われています。ユーザーインターフェースは今後も変化し続けるでしょう。音声UIはそのほんの一部にすぎません。

私たちは、VR、AR、AI、機械学習におけるエキサイティングな新時代の入り口にいます。人間とコンピュータの結びつきはますます強くなっており、視覚、聴覚、触覚を越えてすべての感覚をカバーするようになるでしょう。

私たちはSFが現実のものとなりつつある時代に生きています。私たちとテクノロジーとの関係は大きく変化しているおり、私たちが明らかに人間的だと思っていた特性を人工的に作り出すことができる可能性はどんどん高まっています。

この記事はMan and Machine: A Guide to Human-Computer Interaction(著者:Oliver Lindberg)の抄訳です