フォトレタッチの極意38:濃密な色調でインパクトのある色彩に仕上げる

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Photoshop フォトレタッチの極意

今回はコントラストを元から調整し、ハイライトとシャドウの色調を整えてインパクトのある風景に仕上げる方法です。ネイチャーシーンだけでなく、スナップやポートレートなどでも使えるので、ワザの1つとして覚えておくといいかもしれません。解説はレタッチャー/ライターの桐生彩希さん。「Shuffle by COMMERCIAL PHOTO」に掲載した内容から抜粋してお届けします。

Before

After(※クリックで拡大)

1、「Camera Rawフィルター」で階調をリセットする

(1)「16bit/チャンネル」に変換する

コントラストを弱めたり強めたりと激しく階調を変化させるので、画質が劣化しにくい「16bit/チャンネル」で作業を行う。「イメージ」メニューの「モード」→「16bit/チャンネル」を選択して16bit化を実行する。

(2)「スマートオブジェクト」に変換する

後から「Camera Rawフィルター」が再調整できるように、「背景」レイヤーを「スマートオブジェクト」化しておく。「レイヤー」パネル右上のメニューボタンをクリックしたら、「スマートオブジェクトに変換」を選択。

(3)「Camera Rawフィルター」を選択する

(2)で作成したレイヤー(レイヤー0)を「レイヤー」パネルで選択し、「フィルター」メニューの「Camera Rawフィルター」を選ぶ。「Camera Rawフィルター」画面が表示される。

(4)ローコントラストに調整する

「コントラスト」スライダーを「-100」に調整。さらに、「ハイライト」と「白レベル」スライダーを「-100」、「シャドウ」と「黒レベル」スライダーを「+100」に設定して、超ローコントラスト(軟調)な状態にする。上手く仕上がらない時は補正量を半減(-50、+50)してみよう。

(5)後を見越して明るい状態にしておく

シャドウがつぶれやすいので、「露光量」スライダーを右に移動して、ヒストグラム山の左端が枠から十分に離れた状態にしておく。この状態で「OK」ボタンをクリック。

2、「カラーバランス」でハイライトを暖色系に偏らせる

(1)「カラーバランス」を選択する

写真の色補正は「Camera Raw」画面の「色温度」が定番だが、ハイライトとシャドウを分けて補正するため「カラーバランス」を使用する。「レイヤー」パネル下部の「塗りつぶしまたは調整レイヤーを新規作成」ボタンから「カラーバランス」を選択。補正の画面が表示されたら、「輝度を保持」のチェックを外しておく。

(2)「ハイライト」を仮補正する

今回のテクニックは、明るい領域を暖色系、暗い領域を寒色系に補正して、色温度の違いによるメリハリを強調するというもの。まずは、「階調」を「ハイライト」に設定して、ハイライトを調整する。この段階では、仮の補正として、「イエロー」スライダーを「-100」、「マゼンタ」スライダーをその半分の「-50」にセット。

3、「カラーバランス」でシャドウを寒色系に偏らせる

(1)「シャドウ」を仮補正する

「階調」を「シャドウ」に設定して、シャドウの色を調整。「ハイライト」の時と同様に、この段階は仮の補正でOK。目安として、「シアン」スライダーを「-50」、「マゼンタ」スライダーをその半分の「-25」にセットしておく。

4、「レベル補正」で黒と白のレベルを設定する

(1)「レベル補正」を選択する

現状は、黒と白が適切に再現されていないので、これを補正。「レイヤー」パネル下部の「塗りつぶしまたは調整レイヤーを新規作成」ボタンから「レベル補正」を選択して補正の画面を表示する。

(2)黒のレベルを設定する

キーボードの「Alt」(Macは「option」)キーを押しながら、入力レベルのシャドウ(▲)スライダーを右に移動して、完全な黒が生じる手前まで調整。移動量が「0」の状態で黒い領域が広範囲に生じているときは、次項(3)を参照。

(3)黒つぶれが生じている時の対応

「レイヤー」パネルの「Camera Rawフィルター」の文字をダブルクリックして補正の画面を表示。「露光量」スライダーを右に移動して明るく補正したら、「OK」ボタンをクリックして確定する。

(4)白のレベルを設定する

キーボードの「Alt」(Macは「option」)キーを押しながら、入力レベルのハイライト(△)スライダーを左に移動して、完全な白が生じる手前まで調整。これで、黒と白が正しく設定された状態になる。移動量が「0」で白とびが広範囲に生じる時は、(3)の要領で「Camera Rawフィルター」を表示して、「露光量」スライダーを左に移動する。

(5)明るさを整える

入力レベルの中間調スライダーを使い、露出を補正する。この段階ではコントラストは適当な状態なので、全体的な明暗がイメージの範囲に収まればOK。

5、「トーンカーブ」で階調を整える

(1)「トーンカーブ」を選択する

コントラストの仕上げは「トーンカーブ」で行う。「レイヤー」パネル下部の「塗りつぶしまたは調整レイヤーを新規作成」ボタンから「トーンカーブ」を選択。

(2)ハイライトの階調を調整する

線グラフの右上と左下をクリックして2つのポイントを作る。シャドウとハイライトのどちらから調整してもよいが、ハイライトから整えると分かりやすい場合が多い。そこで、右上のポイントを上下に移動してハイライトの強さを調整。上に移動するとハイライトが明るくなりコントラストがアップ、下でハイライトに色が乗るようにコントラストがダウンする。作例は上に移動して、明るく透明感のあるハイライトを再現。

(3)シャドウの階調を調整する

左下のポイントを上下に移動してシャドウの強さを調整する。上に移動するとシャドウが明るくなりコントラストがダウン、下でシャドウが引き締まるようにアップする。作例はシャドウの調整は不要だったので、そのままの状態を維持。

(4)中間調の階調を調整する

線グラフの中央をクリックして、中間調を補正するためのポイントを作成。作例はポイントを下に移動して、中間調を暗く引き締めて色に深みを出している。これで、「Camera Rawフィルター」でリセットした階調の再設定が完了。

6、「カラーバランス」の設定を追い込む

(1)「カラーバランス」を再度表示

露出と階調を整えると、色の崩れが明確になる。そこで、②③で調整した「カラーバランス」の設定を追い込み、色調を仕上げていく。「レイヤー」パネルの「カラーバランス」のサムネールをクリックして、「カラーバランス」の補正画面を表示。この操作で表示されないときは、サムネールをダブルクリックする。

(2)「シャドウ」の「マゼンタ」を調整する

色の追い込みは、「マゼンタ」スライダーを中心に調整するのがコツ。まずは、「階調」を「シャドウ」に設定し、「マゼンタ」スライダーを左右に移動して色を整える。作例は左に移動してわずかに強かったシャドウのグリーンを軽減。「シアン」スライダーを右に移動するとシャドウの寒色系が弱まるので、できるだけ右方向への調整は控えたい。

(3)「ハイライト」の「マゼンタ」を調整する

「階調」を「ハイライト」に設定し、「マゼンタ」スライダーを左右に移動して色を整える(作例は不要だったので未調整)。最初の状態で「イエロー」スライダーは最大に設定しているので、ハイライトの暖色系が強いときは、「イエロー」を多少右に移動して抑えてもOK。黒や白のレベルが変化したときは、④で作った「レベル補正」の黒と白も再設定しておく。作例では用いていないが、発色が強過ぎるときは、「彩度」や「自然な彩度」(「調整レイヤー」の「自然な彩度」)で鮮やかさを押さえると効果的。

(4)仕上げの処理の注意点

調整終了時点で16ビット画像の状態になっている。TIFFやPhotoshop(PSD)形式ならこのまま保存してよいが、ほかのソフトで使う写真にする時は、8ビット化して別名保存が必要。その際、レイヤーを統合(「レイヤー」メニューの「画像を統合」)してから、8ビットに変換(「イメージ」メニューの「モード」→「8bit/チャンネル」)すること。8ビットに変換してからレイヤーを統合すると、8ビット編集と同じ状態になってしまう。

Before

After(※クリックで拡大)

さらに詳しい解説は、Shuffle by COMMERCIAL PHOTO で連載中の「風景&ネイチャー “映える”レタッチ」(解説・写真:桐生彩希)に掲載されています。サンプルファイルもダウンロードできますので、ぜひ挑戦してみてください!