【Adobe MAX Japan 2019 教育関係者向けランチセッションレポ―ト】デジタルクリエイティブ基礎講座受講生の声 #アドビ教育
アドビの年に一度のクリエイティブカンファレンスであるAdobe MAX Japanが、2019年12月3日(火)にパシフィコ横浜で開催されました。Adobe MAXといえばクリエイティブ系の勉強や仕事をしている人なら一度はその空気に触れたいと思うクリエイターのための祭典。1日中各所で様々なセッションが開かれ、ブース展示と共に最新の情報に触れることができます。この日、数あるセッションの中で、アドビの教育分野に特化したセッションが開かれました。
晴天に恵まれた横浜みなとみらいエリアで開催
会場内では大小様々なセッションとブース展示で、グラフィックデザイン、ウェブ、映像など幅広いクリエイティブソリューションの情報であふれた
教育関係者向けに開かれたランチセッション。教育関係者が多数集まった
全国の大学で導入が進むアドビの「デジタルクリエイティビティ」基礎講座
アドビでは、これからの社会で必要とされる力を「創造的問題解決能力」と捉え、その力を育むために大学と協力し、「デジタルクリエイティビティ」の基礎講座を開講しています。昨年の筑波大学に続き、今年は千葉大学、北海道大学大学院、山形大学、横浜国立大学で開講しています。
アドビの教育分野について説明するマーケティング本部教育市場部部長の小池晴子氏
筑波大学、北海道大学大学院、千葉大学の授業の様子や導入意図がビデオで紹介された
今回のセッションでは、実際に在籍大学で「デジタルクリエイティブ基礎」の講座を受けた学生が自らの経験をプレゼンテーションしました。
ビジュアル表現の伝達力に気づいた〜北海道大学大学院 細井史さん
北海道大学 大学院文学院日本史学研究室の細井史さん(修士1年生)は、今年度から大学院で開講した「教養深化プログラム」の演習のひとつ「サイエンスリテラシー特別演習」でアドビの「デジタルクリエイティブ基礎」を学びました。細井さんはデザインの基礎知識の講義やアドビのツール群の実習を通して、文字情報とビジュアルによる表現の違いに気づいたそうです。
例えばプレゼンテーション用にスライドを作成して人に何かを伝える時には、文章だけで表現するよりも、ビジュアル表現にキーワードを組み合わせて表現した方が効果的で、わかりやすくなるという気づきを、例を示して説明しました。
ストーリーを、文字だけで表現した例
イラストやセリフを加えて表現した例
プロにビジュアル化してもらった例
北海道大学 大学院文学院日本史学研究室の細井史さん
細井さんは、ビジュアル化することで圧倒的に伝わりやすくなり、大衆的な「わかりやすさ」が生まれることを指摘しつつも、その反面、学術的な「わからなさ」が喪失してしまうことにも言及します。そして、例えば安易な二項対立にしてわかりやすさを求めるのではなく、論理に応じたより適切なビジュアル表現をすることで、大衆的「わかりやすさ」と学術的「わからなさ」のほどよいバランスが取れるのではないかと結びました。
北海道大学大学院でアドビの「デジタルクリエイティブ基礎」を含む「教養深化プログラム」が今年度から始まった背景には、大学院生は自分の専門領域のみに関心が向きがちで、社会で求められる人材像と乖離しがちだという実情がありました。学術的な発表の場であれ、企業で職を得た場合であれ、「人に伝えること」の技術は、常に求められるわけですから、「ビジュアル表現の持つ力」に対する気づきは、大きな力になるでしょう。
「見る側の視点」に気づきコミュニケーション能力が向上〜千葉大学 落合優衣さん
千葉大学 教育学部 小学校教員養成課程教育学選修の落合優衣さん(4年生)は、今年度開講した全学年全学部生が履修可能な「デジタルクリエイティブ基礎」を受講しました。落合さんは、デザインの基礎知識やアドビのツール群の使い方を学び、「見る側の視点」に気づいたそうです。
例えば、落合さんは授業で、広告などのビジュアル表現に画像を使う理由のひとつが、画像の方が人の記憶に残りやすいという「画像優位性効果」によるものだと知りました。すると、それまで意識していなかった通学中の電車内の広告の見え方が変わったと言います。この変化は、広告が「見る側の視点」をさまざまに想定してデザインされていることに気づいたからでしょう。
千葉大学 教育学部 小学校教員養成課程教育学選修の落合優衣さん
最終課題でパンフレットのデザインをした際は、授業で提示された評価表を元にデザインを検討しました。チェック項目を確認しながらデザインすることで「見る側の視点」を意識できるようになり、印刷物で情報を伝えるコミュニケーション能力が上がったと落合さんは感じています。また、こうした経験や知識は、将来デザインの専門家と仕事をする際に、適切な依頼や情報共有をする役に立つのではないかと感じているそうです。
落合さんが、経験ゼロから受講を経て最終課題で取り組んだパンフレットのデザイン
千葉大学がこの「デジタルクリエイティブ基礎」を開講した背景には、「発信型」の能力を身につけた学生を育てたいという考えがあります。発信する力をつけるには、「情報の受け手の視点」への気づきは必須であり、それは自分自身が直接クリエイティブな作業をする仕事につくかどうかに関わらず、大切な資質になるでしょう。
アドビが各大学との協力で新たに始めた「デジタルクリエイティビティ」に関する基礎講座が、大学や大学院で学ぶ学生達の大切な気づきを育んでいることを確認できるセッションとなりました。デザインは専門家だけの領域ではなく、もっとジェネラルな「伝えるための手段」であるという理解が広がることを期待しています。
文/狩野さやか
参考資料
アドビ、「デジタルクリエイティビティ」の基礎講座を全国5大学で開講(2019年5月9日)