ティーンエイジャーをネット中毒から保護するためにUXデザイナーが持つ責任 | アドビUX道場 #UXDojo

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エクスペリエンスデザインの基礎知識

最近のある調査は、ティーンエイジャーの大半がインターネット中毒になりやすいということを発見しました。それを聞いて驚いたりはしないかもしれませんが、問題のある行動パターンは既に現れており、専門家は、テクノロジーに対して最も脆弱なユーザーの健康面に対して、最終的に責任があるのは誰かを探しています。

この件に県連する研究を共同執筆した准教授のレジーナ・サヒエヴァは次のように述べています。「若者のSNS依存の様子が確認できます。誰にとっても興味深く、自分が必要とされているように感じられる場所がソーシャルネットワークです。多くの人がソーシャルネットワークでのコミュニケーションに夢中になり、現実の人間関係を仮想の人間関係に置き換えています。もし自身の中毒に気づいていたとしても、そこから抜け出すのは必ずしも容易ではありません」

この研究は、ロシアの5つの大学の共同研究プロジェクトであり、ティーンエイジャーがインターネット中毒に屈するのを防ぐために必要な手段として、教育機関による心理的および教育的介入を提案しています。

アダム・オルターの著書Irresistibleでは、『テクノロジー』『中毒』そして人をを夢中にさせようとしている『ビジネス』の3者の関係が掘り下げられています。その本の中で、彼はスマートフォンにアクセスできないことで起きる理不尽な恐怖を意味する新しい造語『ノモフォビア』に言及しています。彼の調査では、その症状が最も極端に現れるのはティーンエイジャーです。

彼の調査によると、ティーンエイジャーの40〜50%は、スマートフォンを壊すよりも手の骨を折る方がましだと考えているということです。彼が調査した若者の多くは自らの選択を聞かれたときに、「折れるのはどちらの手ですか?」とか「骨折した手でスマートフォンを使える状況ですか?」などの追加質問を返しました。

今日のティーンエイジャーは、コンピューターに熟練したユーザーよりも、新参者の方が素早く画面を操作できる世界に生まれました。そこでは、あらゆるソーシャルの輪がオンラインの活動を中心に回転しており、多くの企業がこの行動に依存ながら利益を得ています。しかし、つまるところ、若年層から利益を得ることは有益というより有害であり、ユーザーを理解し共感するというUXデザイナーの本質的な責任に背くものではないでしょうか?

ティーンエイジャー向けに意図して中毒性のある体験をデザインするのは倫理的か?

青少年向けのテクノロジーに関するUXを研究するシュリ・ギルツ博士は、この問題を倫理的なトピックであると考えています。

「デザインする対象を知ることは、ユーザー体験をデザインする上で最も基本的なルールです。ただし、ユーザーリサーチャーやUXデザイナーとして持つ共感は、倫理によって導かれ補われなければなりません。この問題は、ソーシャルメディアやビッグデータに関連する最近の出来事の影響で広く議論されるようになりましたが、子供や若者のためのインターフェースをデザインする際には、さらに重要であると考えています」と彼女はメールに書きました。

グルツ博士は、より小さな子供向けのアプリケーションやウェブサイトには法律で定められた要件があるものの、ティーンエイジャー向けにデザインされた体験は同じ基準に縛られないことが多いと説明しました。企業はまた、法律の抜け穴を利用して「一般のユーザー向けです」と宣伝することで、特別な規制を遵守する必要性から逃れています。

「これは、個人情報の収集、プライバシー、オンラインの安全性の点で、ティーンエイジャーが大人として扱われることを意味します。しかし、誰もが気付いているように、彼らの行動は大人の行動とは異なるもので、悪用されやすい可能性があります。例えば、最近の調査によると、多数の10代の若者が、常にオンラインでつながっていなければならない(ソーシャルメディアやゲームに)というプレッシャーのために、十分な睡眠を取ることができていません。その年頃の若者が社会的な関係づくりに没頭するのは目新しいことではなく、悪いことでもありません。しかし、アプリのデザインは、より多くの若者を取り込むために彼らの振る舞いを利用して、彼らに害を与えています」と彼女は言いました。

彼女はスナップチャットが有害だとは言いませんでしたが、それを、大人にとっての主流のUXトレンドを回避しつつ、反抗期の技術好きな若者を取り込むアプリケーションの例として挙げました。

「スナップチャットがティーンの間で大成功を収めたのは、ソーシャルおよびパーソナライズされたコミュニケーションの成果であると同時に、直感的ではないインターフェースのおかげでもあります。スナップチャットは、標準的な視覚情報を用いたサポートの欠けている、UXの基本原則に反したインターフェースをつくることで、ほとんどの大人のユーザーにとっては好ましくない環境を提供しました。それがまさに若者たちを惹きつけた理由です。そこには両親がいないのです!最近、大人もスナップチャットを発見して、参加し、コンテンツをつくるようになりました。これが、多くのティーンが新しい場所を探している理由のひとつなのかもしれません。10代のFacebook利用者が急増し、その後減少しているのもこれと似ています」

UXデザイナーはティーンエイジャーの体験に責任を持つためにどうするべきか?

ニールセン・ノーマン・グループの研究責任者であるラルーカ・ブディウ博士は別の問題を提示しました。

「10代の若者は気が散りやすいものです。彼らは大人に比べて自分の元々の目標を見失いやすく、誘惑的で無関係なウェブの迷路にはまり込む傾向があります。多くの場合、サイトやアプリは効果を高めるために、広告、関連リンク、通知などを通じてユーザーを引き込もうとします。これらの注意を削ぐ要素が良いユーザー体験をもたらすことはめったになく、10代の若者にとっては疑う余地なく有害である場合もあります」と彼女はメールに書きました。

大学は教育的な介入手段に目を向けていますが、ブディウ博士の信念は、UXデザイナーは、潜在的に有害で中毒性を持つ製品を、ティーンエイジャーにもっと役立つものにする役割も持っているというものです。

「デザイナーの一番の責任は、優れたユーザー体験を提供することです。つまり、ユーザーが(10代であろうと大人であろうと)迅速かつ効率的に作業を完了できるようにすることです。子供やティーンエイジャー向けには、使いやすさの基準をさらに高く設定する必要があります。大人と比べると、読解スキルが低かったり、機能の調べ方が洗練されていないユーザーがいるのはあたりまえです」と彼女は言いました。

ティーンエイジャーを支援するため、一般的なデザイン基準に従うことをブディウ博士は推奨しています。

「10代の若者は、テクノロジーやソーシャルメディア中毒の危険性について理解しています。それを上手く管理したいと考えるケースもよくみられます。しかし、仲間から切り離されることを恐れて、そうすることができないのです。彼らが受け取る通知の頻度と種類をカスタマイズできるようにしましょう。彼らが通知を受け取ることを選んだ場合は、最も頻度の高いスケジュールを押し付けたりせず、最小の設定をデフォルトにすべきです」と彼女は記しました。

「最終的に、そして最も重要なことは、10代の若者の目標を理解し、彼らが必要とするものを素早く手に入れる手助けをすることです。彼らに曲がりくねった道を歩ませたり、限りない誘惑にさらしてはなりません」

ギルツ博士の次の言葉は、UXデザイナーはユーザーの代弁者であり、ユーザーらを守ることがその仕事であることを再認識させます。

「UXの専門家としての私たちの責任は、ユーザーの声になることです。デザインプロセスの最中だけではなく、公開後も彼らの権利が守られ、その体験が本当に楽しく倫理的であることを確認しましょう。10代特有の成長過程を考慮に入れることで、最先端のUXを創造する道を開くことができ、同時に彼らの世界をより安全で、より健康的で、より楽しい姿、すなわちあるべき姿にする力になれます」

この記事はWhat Social Responsibility do UX Designers Have When it Comes to Teens and Tech Addiction?(著者:Sheena Lyonnais)の抄訳です