デジタル世代に生まれて #AdobeStock

連載

SNS写真時代を駆け抜けるフォトグラファーの秘訣

XICO(ヒーコ)がオススメする、SNSを中心に活躍しているフォトグラファーから撮影方法や現像テクニックを学んで、Adobe Stockでベストセラー作品を目指してみませんか?日々多くの写真をSNSで目にする中、目を引く写真や印象深い写真には、どういったバックグランドがあるのでしょうか。フォトグラファーのワークフローやマインドを紐といて、売り上げアップに繋げましょう!

今回は、**【デジタルならではの撮影法】**について、日本の風景とポートレートを融合させて美しく切り取る杉本優也さんにご紹介いただきます。

はじめに

こんにちは。度重なる旅行で着実に体重を増やしている杉本優也です。今回、僕の写真編集と考え方、その過程で得られたキャリアの部分などについて執筆させて頂きます。

デジタル世代に生まれて

僕が写真に出会ったのは2015年ごろだったと記憶しています。

それ以前からデジタル一眼レフを持ってはいたのですが、旅行中だけ使ってプリントしては配るみたいな使い方をしていました。当時はレタッチや編集などという概念とは無縁で、ただ撮ってプリントしてアルバムにまとめて友達とリアルの場で共有する。というのが僕のカメラや写真との付き合い方でした。

そんな中、ある写真投稿サイトの大きな展示を見に行った際に、見たこともないような写真の数々に圧倒されるという事件が起きます。

先にも述べましたが当時レタッチなどという単語すら自分の中になかったのでカメラにはこんなことができるのかと衝撃を受けたのを覚えています。

カメラにできない事がある

ある写真投稿サイトの大きな展示で見たような写真を撮りたいと思い、その日から旅行に行く時にだけ握りしめていたようなカメラが、まるで体の一部のようにどこへ行くにも一緒に持ち歩く様になりました。

僕は今まで、野球やサーフィン、スケートボードなどに没頭していたのですが、どの界隈でもプロや上手い人が言うのが「毎日の様に道具に触れたりイメージする事。」だったんですね。なのでカメラも毎日何かしらは撮っていました。それは家の前に不意に現れた猫だったり、売ってしまう車だったり、新しく届いた車だったり。

しかし、どんなにカメラを弄り回しても、あの衝撃を受けた様な写真にならない。と気付くのにそう時間はかかりませんでした。当時はSNSもアカウントはあるけど使わないし、写真友達なんてまだ一人もいないのでなんの知識もなかったのです。ひたすら調べよう!と決意して一歩踏み出したらその瞬間に正解にたどり着きました。

その結果、カメラだけではできない事が大量にあることを知りました。

Lightroom。Photoshop。RAW。との出会い

「この世界にはLightroomやPhotoshopというツールがあって、それを使うと写真が見違えるらしい。それにはJPEGでなくRAWという画像形式で撮ると都合がいいらしい。」

という、当時の僕にとっては目から鱗の様な情報が飛び込んできました。

今となっては当たり前ですし、SNSなどを通してコミュニケーションが格段に取りやすくなった現代においてここにたどり着くのはごく自然な流れかもしれませんが、僕はこの様にしてレタッチという概念にたどり着きました。

発想が形になる

例えばこの写真です。

従来の僕のやりかたであれば、左の写真の様に被写体は暗くなってしまいます。

しかしPhotoshopのクイック選択ツールとトーンカーブで被写体を狙って露出をあげる事ができます。僕はこの技術をデジタルライティングと勝手に呼んでいますが、通常はストロボを使いたいシーンでもPC上で取り戻せる明るさなら撮影時間を短縮できます。それが右の写真になります。

ストロボを購入したり、ライティングの知識がなくても可能なのが強みだと思っています。当然ストロボを使うのに比べれば粗く仕上がってしまう可能性があるので、白い服を着てもらうことでノイズレスに明るさを持ち上げやすいようにしています。

このように完成をイメージしている場合、完成から逆算して撮影に臨む事が可能になります。

黒い服を着ているより立体感を演出しやすいですし、被写体の主役度を確保しやすくなります。

応用できる技術

この技術はLightroomでも円形フィルターやブラシ、段階フィルターを使って再現する事ができます。僕はトーンカーブで色味も整えるのでPhotoshopの方をよく使います。広く風景を交えながら撮るのが僕のスタイルなので、それまではどうしても風景の中で被写体が負けそうになるシーンがあったのですが、この技術を習得してからそういった事はなくなりました。

また、このようにこだわったレタッチをするようになって、仕事が大量に舞い込んでくるようになりました。デジタルライティングのいいところは、写真全体の色調に囚われず被写体の色被りを細かい範囲で調整できる事です。それにより、どのくらい馴染ませるか、どのくらい浮かせるかという細かいコントロールが可能になりました。

僕はフィルムも使いますが、おそらくフィルムで同じことをしようと思ったら、がっつり現地でライティングを組むか、現像時にラボの方に相談して理想のイメージを共有する努力をするとか、そういった事が必要になると思います。

デジタル世代に生まれて、そういった苦労がなく、非常にシンプルな手順で自分のイメージまでの道のりを描いて、そして実現する事ができるのだと思っています。

合成を使って細部まで写真をコントロールする

この撮影場所は、風景カメラマンが早朝から三脚をずらっと並べて待機しています。

そこで僕は人が画角に入る写真を撮るためにあらかじめ現場にいらした方々に、ちょっとだけ画角に被写体を入れさせてくださいとお願いをしました。ありがたい事にご快諾してもらい、いざここで葉っぱを投げて楽しそうな写真を撮ろうと思ったのですが…落ち葉を集めてる時に朝露で葉っぱが濡れてくっ付いてしまい綺麗に舞わなという事態に。

この時、被写体の手でくっ付かないように持てる葉っぱは6枚が限界でした。そこであとでPhotoshopを使って時間を圧縮しようと思いました。具体的には葉っぱを投げてから散るまでに連写して落ちていく様を合成し葉っぱがいっぱい舞ってるようにしました。

最終的にこうなりました。上にあった目立つ枝も消しています。

ここで、僕たちが綺麗に舞うまで繰り返しては、いくら快諾してくれた方々もうんざりするかもしれません。実際この撮影は一発で10秒もかからず終わったと思います。合成を使う事で平和に、そして自由な発想で葉っぱの位置をコントロールできます。

デジタル写真が発達した現代では定番スポットや混雑するスポットでも一瞬の機転で楽しく個性を活かした撮影が可能になります。なんでもかんでも合成に頼るのではなく、目的を持った合成は写真の幅を大きく広げてくれると思います。

ありのままをちゃんと撮る

デジタル世代に写真に出会った僕が写真に対して抱いた感情は「とても自由である。」という感動でした。一方で、なるべく「あるがままを撮ろう。」という気持ちも大切にしたいと思うようになりました。

これらの写真はいずれも撮ったままです。いわゆる撮って出しです。
レタッチを知り写真をコントロールしていく中で、撮影の段階でレタッチでできるからいいやと手を抜かない大切さを感じる事ができました。撮影をしっかりしてるからこそ質のいいデータとなって写真は残ります。撮って出しを好きになれるように撮る事こそがデジタルを最大限楽しむコツなのではないかと思っています。

ぜひみなさん、撮影もレタッチも本気でやってみてください。写真がもっと楽しくなると思います。

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