デジタルコンテンツを活用して写真を大量現像!効率的ワークフロー #AdobeStock

連載

SNS写真時代を駆け抜けるフォトグラファーの秘訣

XICO(ヒーコ)がオススメする、SNSを中心に活躍しているフォトグラファーから撮影方法や現像テクニックを学んで、Adobe Stockでベストセラー作品を目指してみませんか?日々多くの写真をSNSで目にする中、目を引く写真や印象深い写真には、どういったバックグランドがあるのでしょうか。フォトグラファーのワークフローやマインドを紐といて、売り上げアップに繋げましょう!

今回は、**【大量のデータを管理するワークフロー】**について、流し撮りを中心に躍動感のある写真が特徴的な氏原正智さんにご紹介いただきます。

はじめに

こんにちは、フォトグラファーの氏原正智です。私は「流し撮り」という撮影技法を使っています。

流し撮りとは、クルマ、バイクのモータースポーツ、自転車競技などスピード感を演出したいシーンにおいて、シャッター速度を遅くした流し撮りはとても有効な撮影技法です。よく質問される「流し撮り上達の秘訣は?」その答えはずばり、とにかくたくさん撮るということです。

枚数が多い写真を、いかに効率よく処理していくか

流し撮りは成功率の低い撮影技法でもあります。うまくいく写真は、始めて間もない頃ならば100枚に1枚、やがて修練を積むと10枚に1枚くらいではないでしょうか。私も仕事として撮影する場合、主に1/20秒~1/40秒程度のシャッター速度を多様して納品できるものは10枚のうち3枚程度が目安です。良作を確保するには相当の枚数を撮影する必要があるわけです。

私は撮影の依頼を受けた仕事の場合でも、個人で撮影を楽しむ場合でも、一度のレースで2,000枚~3,000枚、多いときでは5,000枚以上撮影することもあります。128GBのCFカードを満タンにすることもしばしば。そこで問題となるのが撮影後のデータ整理と現像。現場でレース終了後に(場合によっては途中にも)JPEGで即時納品を依頼される場合もありますが、そうではない場合は基本的にすべてRAWデータで撮影しています。

そこで、今回はこの大量データを処理するための時間とHDD容量を節約できるAdobe Bridge→Adobe Lightroomという私の写真ワークフローを紹介します。

不要な画像を選別する

RAWデータの現像は全てLightroomで行っていますが、撮影した全ての画像データをLightroomに取り込んでいくとカタログが肥大化し、やがて性能劣化が懸念されます。またHDD容量も逼迫させることになるので、私はまずHDDに取り込んだ画像データをAdobe Bridgeでチェックし、不要な画像を選別し削除するようにしています。

また、同時にレーティング(星0から星5までの間で指定する評価)を行うことでLightroomに取り込んだあとの作業がスムーズになります。

1.CFまたはSDカードからHDDの保存用フォルダに転送
2.Adobe Bridgeで取り込んだフォルダに移動
3.ライブラリモードで1枚ずつ大きく表示
4.明らかな失敗写真はDeleteキーで削除、そうでない場合は**Ctrlキー+数字キー[1]~[5]**でレーティング

レーティングの基準

この作業によって3,000枚の画像データを1,000枚程度に削減します。仕事での撮影の場合は以下のような基準でレーティングしています。

・納品できるクオリティと判断できるものに**[4]**
・これは良作と期待できそうなものに**[5]**
・次点だけど一応保険で残しておきたいものに**[3]**

としています。レーティングの[1]、[2]は納品物以外として管理したい場合に使います。

この作業に要する時間は2~3時間程度なので1枚につき3秒前後でこれらの判断と操作を行っています。Lightroomに取り込む前にこの前処理を行うことで、その後の工程がとても楽になります。また、150GB以上あった画像データが50GB以下と保存用HDDの容量も大きく節約できます。

この前処理が完了すればあとはLightroomに取り込むだけ。元画像数が少なくなれば取り込みと変換にかかる時間も当然少なくなります。

同じ現像パラメータをまとめてレタッチ時間を節約

取り込み・変換まで完了したらライブラリモードで撮影日時順に並び替え。同じ場所・アングルで複数の被写体を撮影していることが多いので、この並び替えによって同じ現像パラメータをまとめて反映できるケースが多くなり、レタッチの時間が大きく節約できます。

まずは一枚レタッチし、その設定を他の写真に同期させる

まず適当な一枚の写真をレタッチ、もしくはオリジナルのユーザプリセットを適用、色温度、露光量、などを微調整。

ここで、ストックフォトでの販売も意識した場合、僕自身の思う商業写真では、まず水平が重視されることも多いため、きっとストックフォトもそういった写真の需要が高いであろうと予想します。そのため、基本的に切り抜きで角度を調整し、被写体か背景のどちらかで垂直・水平を取るようにしているのです。

ただし、全て水平を取った写真は大人しい印象となったりもするため、時には斜め構図でスピード感は迫力を演出したりもします。

レタッチが決まったらShiftキーを押しながら同じシーンでの撮影していた写真までまとめて選択し、同期。

これによって選択した写真に同じ現像パラメータが適用されます。この作業を全ての写真で行い、レーティングでフィルターで★4つ以上を選択。もしこのシーンの撮れ高が物足りない場合は★3つを見直して使えそうなものがあれば★4つに昇格。これでレタッチ作業は完了。最後に★4つ以上を選択してCtrlキー+[A]で全ての写真を選択し、書き出しを行えば納品データの完成です。

作例
カメラ:EOS 5DmarkⅢ
レンズ:EF16-35mmF4L IS Ⅱ USM
シャッター速度:1/30sec
絞り:f/16
iso感度:50

【撮影にあたっての注意点】

ご紹介したような写真のサーキットにおける走行会、レースなどにおいては、レース主催者に撮影許可を得て(もしくは撮影依頼を受けて)撮影を行い、当該車両のオーナーに直接お会いして掲載を承諾頂いています。

公営ギャンブル(競馬、ケイリン、オートレース、ボートなど)については、以前は撮影不可でしたが最近は各開催場に申請することで、撮影許可が得られるケースが多くなりました。

また、ストックフォトの場合は「プロパティリリース(ストック素材としての販売を同意してもらう許諾書)」をもらう場合が多くあるかと思いますので、撮影の前の準備の一つとして考えておくと良いでしょう。くわしくはこちらのAdobe Stockのヘルプページを参考にしてください。

最後に

今回ご紹介したワークフロー、いかがだったでしょうか。

大量に現像する場合というのは、ストックフォトの販売においてもよくあるのではないかなと、考えます。例えば、「何パターンか写真が欲しい、けれど全部一定のレタッチのクオリティに揃えたい」そんな時なんかには、まさにこの方法をおこなえばスムーズにできるのではないでしょうか。

ご紹介した選別方法であれば、たくさんの撮った写真の中で良い写真が埋もれてしまい、見過ごすことも少なくなる思います。

ぜひこのワークフローを活用して、たくさんの撮った写真の中にいる良い瞬間をすくい上げて、仕上げてみてください。時間や容量の節約になり、またクオリティを安定させることにも繋がるかと思います。

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