抽象的な3Dデザインのチュートリアル: 幻想的に浮かぶ立体的な風景をつくる手順

ミュンヘンのIDEOを拠点に活動するキャティ・トレハンは、心を打つ芸術性を持ち、商業的にも成功しているグラフィックデザイナーです。彼女は、明るくてちょっと変わった作品でよく知られており、Adobe Dimensionを使った3Dデザインでも夢のようなファンタジーを形にする方法を見つけ出しました。

「3Dアートは、リアリズムを実現するという点で非常に進歩しており、アートの歴史と同じく、より表現力豊かな方向へと進んでいます。3Dのビジュアルは、人々により本物らしさを感じさせることができます。ですが、さらにその先に行ける可能性もあります。3Dはクリエイターにオリジナルの世界をつくる力を与えてくれます」と、彼女は言いました。

この記事では、キャティが即興でつくった鮮明でカラフルな夢の風景の作成手順を紹介します。完成したプロジェクト全体を見るには、彼女のBehanceページを訪れてください。あなた自身のAdobe Dimensionを使った制作のためのインスピレーションを得ることができるでしょう。

1. オープンマインドで始める

キャティは、始める前に何をつくるべきかを知る必要はないとしながらも、向かう方向を設定して、その意図が何であるかを理解することは役に立つと述べています。

このプロジェクトでは、彼女は幻想的でミニマルな3Dの浮遊する風景というアイデアを選択し、さらに、カラフルで反射する表面を使うことを思いつきました。

最初に彼女が決めたのは、自分自身に対する制約です。「当てもなく作業しない、ただし探求する余地を残す」ようにするためです。

2. カンバスを設定する

キャティが個人的な作品を投稿する場所は大抵Instagramです。それが彼女が通常1500×1500の正方形を採用している理由です。

彼女は、まずカンバスサイズを指定して、シーンが正しいアスペクト比になるようにしました。

そして、これを浮遊する風景にするために、不要な存在であるグランドプレーンをオフにしました。

3. 構成要素

反射は興味深いビジュアル要素です。複雑でリアルなサーフェスで使用すれば、さらに興味深いものになります。キャティはミニマルな風景を求めていたので、基本的な形状でかつ豊富なディテールを持つ素材を探しました。「クリエイティブな目的のために素材を収集するのと同様に、Dimensionのスターターアセットの中身を調べるのは楽しいことでした」と彼女は言いました。

キャティが最初に選んだのは「紐で結んだ包み」でした。複数のコンポーネントの組み合わせからなる箱で、コンポーネントはひとつのフォルダにまとめられています。

「紐を外して、箱をフォルダの外に出して使えますね。箱は単純な立方体ですが、反射を興味深いものにするには十分なディテール(折り曲げや滑らかなエッジ)があります」

1) 箱を複製する

続けて彼女はこう言いました。「この立方体をユニットとして使い、階段を組み立てます。どこかへと導くような、しかしどこにも導いてくれないような階段を、ファンタジーの文脈に即して構築します」。そのために、彼女は要素を複製して倍に増やす操作を繰り返しました。

2) 整列と分布

キャティは8つの包みの複製を選択して、「整列および分布」のアクションをクリックしました。位置揃えコントロールの中央をクリックすると、選択した要素を中心に集められます。

両端のコントロールは、要素を任意の軸の方向に均等に展開します。キャティは、この機能は等間隔の階段をつくるのに最適だと話しています。

そして、8つの包みをグループにして、それに名前を付け、中央に配置します。

次は、階段をコピーして、回転し、移動します。この階段は風景の主要な構成要素として使われます。

「方向を変え、空間内の位置を変更すると、風景全体で同じ構成要素を使用しているにもかかわらず、興味深くしかもミニマルなコンポジションを作成するための十分なバリエーションが得られます」とキャティは言いました。

4. カメラのブックマーク

3Dで作業していると、方向が少しずれてしまい、オブジェクト間の距離を判断するのが難しくなることがあります。作業を容易にするためのキャティのおすすめは、Dimensionのカメラのブックマーク機能の活用です。ブックマーク機能を使うと、特定のカメラ位置(平面図、側面図、鳥瞰図など)を保存しておいて、ブックマークを切り替えてシーン内の視点をすばやく変更することができるようになります。

作業中に、視点を正面や側面に切り替えることができれば、より簡単に要素を構成したり動かすことができるでしょう。

5. 二次的な要素

キャティは複数の階段を組み合わせました。「この時点では少し物足りなく見えるように思いました。階段と同じ形状のグループに含まれる要素を追加する余地があるということです」。これを実行するために、キャティはライブラリからAdobe Stockのモデルを検索しました。そして、幾何学的な曲線を持つアーチは、階段を補完するのに適した建築要素であると判断しました。

「私はアーチのライセンスを取得してシーンに加え(Dimension内で、Adobe StockのモデルをCCライブラリにライセンスすることが可能です)、階段の幅に合うようサイズを変更し、それから景観全体に『アーチ型のゲートウェイ』を配置しました」

6. ライト

キャティのシーンは、シーンを包み込む360度の 「環境光」 に照らされています。

「現実の世界では、オブジェクトが光源で照らされている場合、テーブル、壁、窓などの環境からの反射光にも照らされます。スタータアセットの環境ライトは、まさにそのような役割を果たします。シーン全体が光源となり、制作物がよりリアルに見えるようになります」

ここに太陽光を加えることもできます。キャティもそれを行いました。太陽の高さと向きを変えれば、一日の時間の変化を表現することができます。

7. マテリアルとカラー

キャティはスターターアセットのマテリアルを精査して、銅(スクラッチ)にたどり着きました。このマテリアルは、階段にテクスチャとソフトな反射をもたらします。

次に、キャティは、すべてのアーチにスターターアセットのシルバー光沢マテリアルを適用しました。階段に使われているマテリアルからの反射を銀色のアーチに見てとれます。

さらに、背景色をサンセットピンクに設定します。

背景色が決まったら、階段に様々な色を付けます。「私は直感的に色を選びます。特に、アートワークを使ってつくり上げたい 「感覚」 に近い色を選びます。これは、活気を持って、明るくて、気ままであるということです」

「すべての要素は固有の反射特性があるため、要素の周囲の輪郭だけでなく色も反射して、それによって一部のパーツでは色が混ざり合うこともあります。これは嬉しい偶然です」

これでアートワークが完成しました。次のステップはプレビューです。(注:キャティはDimension 2.3を使用してこのチュートリアルを作成しました。新しいDimension 3.0では、デザインワークスペースの中で照明や反射などの高品質なレンダリング効果をプレビューできるため、このステップは省略できます)

8. ズームと焦点

コンポジションは3Dのオブジェクトです。近づいたり異なる角度からコンポジションを捉えれば、同じプロジェクトからさらに多くのアートワークを作成できます。

このプロジェクトでキャティは、カメラの位置を変えてコンポジションに近い位置にズームし、興味深い反射がつくられた箇所に焦点を合わせました。キャティはこれを新しいブックマークとして追加しました。

(カメラの位置を変更して、「既存のブックマーク」をその位置に更新したい場合は、ブックマークの並びにある更新アイコンをクリックします)

「ズームインしているので、マクロレンズを使っているように感じるのも面白い点です。ビューの等尺性を失わずにこの感覚を作成する方法のひとつは、カメラの「焦点」機能を使用して焦点ポイントを設定し、「ぼかしの量」を調整して周囲をぼかすことです」

9. レンダリングと書き出し

Dimensionは、複数のビューを同時にレンダリングして、魅力的なアートワークをいくつも並行して作成できます。

レンダリング設定 で、書き出す対象のブックマークを選択できます。ファイルの詳細(例:品質、フォーマット、保存場所)を指定するだけで、あとは自分だけの個性的な3Dアートが完成します。

上記の手順で説明したように、Dimensionでは、コンポジション自体を変更することなく、カメラアングルや照明などのデザイン要素をすばやく変更し、同じコンセプトの複数のバリエーションを簡単に作成することができます。また、色やマテリアルなど、デザインの他の側面を変更することで、コンセプトをすばやく練り直すことも簡単です。キャティが同じコンセプトからつくったバリエーションをいくつか紹介しましょう。

この記事はAbstract 3D Design Tutorial: Creating a Floating Isometric Fantasy Landscape with Khyati Trehan(著者:RC Woodmass)の抄訳です