紅葉をドラマチックに仕上げる方法 #AdobeStock

連載

SNS写真時代を駆け抜けるフォトグラファーの秘訣

XICO(ヒーコ)がオススメする、SNSを中心に活躍しているフォトグラファーから撮影方法や現像テクニックを学んで、Adobe Stockでベストセラー作品を目指してみませんか?日々多くの写真をSNSで目にする中、目を引く写真や印象深い写真には、どういったバックグランドがあるのでしょうか。フォトグラファーのワークフローやマインドを紐といて、売り上げアップに繋げましょう!

今回は、**【紅葉をドラマチックに仕上げる方法】**について、ドラマチックな風景写真を日々発信しているうさだだぬきさんにご紹介いただきます。コンテンツの需要は半年前から始まります。今から準備をしてタイムリーにニーズをキャッチしましょう!

はじめに

こんにちは、季節と景色を追いかけてます、うさだだぬきです。

秋の風物詩、紅葉。肌寒さと共に赤に黄色に色付く情景が美しい季節です。寄ってよし、全体を撮ってもよし、太陽に照らされていてもライトアップされていても綺麗で被写体としても優秀な紅葉。

紅葉写真の現像という意味では語り尽くされているかもしれませんが、今回は私なりのSNSで目を引く紅葉の写真というところに焦点を当て、僕が普段行っている現像方法を紹介させて頂きたいと思います。

なぜ紅葉なのか

はじめに、なぜこのタイミングで紅葉なのか。そう思われた方は多いのではないでしょうか。

実は、ストックフォトにおいて、季節もののコンテンツのニーズは半年前から始まるため、春から準備をして、秋の作品を投稿開始するには良いタイミングだそうです。確かに、季節に合わせたビジュアルが欲しいと思った時、その季節になってから写真を用意しようとするともう遅いタイミングとなってしまいます。

そういった人の求めているタイミングを考えることは、SNSで発信していく中でも考えていけると、とても大きなアドバンテージを取ることができるでしょう。

紅葉をドラマチックに見せていく工程

それでは、まずこちらが何も触っていない撮ったままの状態の写真です。

ドラマチックとは劇的という意味ですが、ここでは紅葉の色やライトアップされた部分がぱっと見た瞬間に印象に残るぐらい色鮮やかに強調していく処理を指しています。

まず、写真全体の明るさを整えていきます。

ハイライトとシャドウをコントロールする

最初に、ハイライトとシャドウからいじっていきます。
人間の目は明暗差に対してとても優秀で、比べてカメラが捉えている明るさと暗さは、同時に捉えられる明暗差の範囲がとても狭いです。
例えば太陽が当たっている場所と木陰とを肉眼で見ると両方綺麗に見えていますが、カメラではどちらかに明るさを合わせるとどちらかが白飛びしたり黒つぶれしたりして両方を丁度よく見ることが難しいのです。
なので、その差を埋めるためにハイライトをマイナスに、シャドウをプラスにいじります。

このように

することで、よりドラマチックで目を引くシーンを再現することができます。

同様の発想で白レベルと黒レベルを調整することも効果的です。それぞれの効果範囲が違うため、写真に合わせて調整するスライダーを変える柔軟さを意識しています。このようなシャドウとハイライトのコントロールによって白飛び黒潰れした部分を減らしてあげます。

ただし、あまりハイライトをマイナスに振り過ぎてしまうと、空と紅葉の境目などにフリンジが出てきて汚くなってしまうので注意です。

空と紅葉の境目が汚くなってしまった例

質感を整える

多くの人はSNSをスマートデバイスで見ると思います。手のひらサイズに表示された写真で、「何だこの質感は!」と思わせるために、少しシャープネスを上げておくことがポイントです。

次にコントラスト、テクスチャ、明瞭度ですが、この三つはわずかにプラスに振る程度でやりすぎないようにしましょう。

とくに明瞭度は注意が必要です。
場合によってはハイライトが強調されて紅葉の色が死んでしまうことがありますし、あまりバキバキにしすぎると目に痛い!といったことになりかねません。

明瞭度を上げきったもの

そして、露光量。全体を見ながら露光量のゲージで明るさを整えます。

今回は、昼間の紅葉なので少し明るめにするのがおすすめですが、屋内の窓や部屋から庭園などの紅葉を撮った場合にはほんの少し明るさを抑え気味にすると雰囲気を合わせやすいでしょう。

さて、ここまでの調整が下ごしらえです。

SNSのタイムラインで紅葉を輝かせるために、ここからはいよいよ主役の紅葉の色を調整していきます。
この調整がとても重要で、紅葉の色で仕上がりがガラッと変わります。

色温度を整える

色温度は少し暖色寄りにすると、紅葉の赤や黄色が強調され、また全体を見たときに紅葉が全体に馴染みやすいのでおすすめです。

次に、ぱっと見のインパクトを強めるために必須と言っても過言ではない、色の鮮やかさ。
すなわち彩度を上げていきます。

それには彩度と自然な彩度ではなく、かすみの除去を使います。

なぜ彩度を上げるのに、わざわざかすみの除去を使うのか。

それは、彩度と自然な彩度は写真内の全ての色の鮮やかさを底上げしてしまい、紅葉以外の彩度も上がって写真を全体として見たときに色が汚く見えてしまう部分が出てきてしまうからです。一言でいうと、チープに見えてしまうのです。

なので、かすみの除去を思い切って30〜40ほどプラスの方に上げてしまいます。
これをすることで欲しい部分の色が強調され、彩度を上げたような効果が得られます。
あとは彩度はいじらず、自然な彩度をほんの少しだけ上げておきましょう。

かすみの除去・自然な彩度 使用後

さて、紅葉がより色鮮やかになったら、細かく色を住み分けさせていきます。
というのも、色温度とかすみの除去と自然な彩度を使ってただ紅葉の色を濃くしただけでは、紅葉の色彩が被ってしまって色が見にくいものになってしまいかねません。

そこで、HSL/カラーの色ごとに分けられた色相・彩度・輝度を使って紅葉色域を整え、より見やすいグラデーションに整えてあげましょう。

まず色相で反応する紅葉の色を探っていきます。

紅葉なのでレッド・オレンジ・イエロー・グリーンがメインの色相になります。それぞれのゲージをプラスマイナスに振ってみて、反応する部分を見ます。

紅葉への移り変わりを一枚で強調する

紅葉は、緑→黄色→赤と段階を踏んで色付いていきます。なので、三色が混ざっている時などはこの色の差を色相を使ってそれぞれを強調するとぱっと見でわかりやすくドラマチックで印象的に見えるようにすることが出来ます。

処理前

処理後

あとは、少し鮮やかさが物足りない色部分の彩度を個別に上げ、逆に色が濃すぎる部分は少し下げて調節をし、輝度を使ってハイライトがきつすぎる部分や、逆に暗い色部分を持ち上げて調節していきます。

ここまで仕上げてから撮って出しの状態と比べると、差は歴然です。

処理前

処理後

このように、Lightroom一つで、ドラマチックな一瞬を再現することが出来ます。今回は、SNSのようにタイムラインの動きが早いサービスで、誰かの目に止めてもらうために私が実際に作業している工程をご紹介させていただきました。

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